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17-6

 それから俺とプリシラ、スセリは食堂で朝食を食べた。

 今日のヴィットリオさんの料理はベーコンエッグだった。

 一見してただのベーコンエッグなのに、食べてみると驚くほどおいしかった。明らかに普通のベーコンエッグと違っていた。

 もしかしてベーコンエッグって、ただ焼くだけじゃないのか……?


「ヴィットリオさん、どうやったらこんなにおいしいベーコンエッグを焼けるんですか? わたし、知りたいですっ」

「秘密だ」


 プリシラが秘密を探ろうとするも、すげない返事をされてしまった。


「このベーコンのカリカリ具合ととろーり半熟の黄身の組み合わせが……。いえ、それともまさか白身が……なんとかして秘密を明かしてアッシュさまのために……」


 皿の上のベーコンエッグとにらめっこしながらプリシラは謎を解こうとつぶやいていた。


 ベーコンエッグだけでなく、パンもおいしい。

 やはり焼きたては格別だ。

 しかも今日のパンにはクルミが練り込まれている。

 バターをたっぷり塗って口に入れると、もちもちとしたパンの食感とクルミの歯ごたえがたまらなかった。


 俺たち三人はついつい満腹になるまでおかわりしてしまった。


「た、食べすぎた……」

「おなかが重くて歩けないですー」

「なさけないのう。まあ、ワシもなのじゃが」

「朝からよく食べる奴らだ」

「ヴィットリオさんの料理がおいしいからですよ」

「ところで、もう一人の小娘はまだ寝てるのか」


 そういえば、今朝からずっとセヴリーヌの姿を見ていない。

 一応、食事の前に彼女を起こしにいったのだが、何度ノックしても彼女の部屋から返事はなかったのだ。

 そのうち起きてくるだろう、と先に食堂へ行って、今に至る。


「あやつは夜更かしして昼頃に起きるからの」

「仕方ない。もう一度起こしにいってくる」

「なら、これを使え」


 ヴィットリオさんが俺にフライパンとおたまを渡してきた。

 なるほど。これならさすがに目を覚ますだろう。


 俺は食堂を出て、セヴリーヌが寝ている部屋の前まで行く。


「セヴリーヌ。起きろー」


 ……。

 ……。

 ……。


 やはり返事は無い。

 ということはやはり、ヴィットリオさんにもらった最終兵器を使うほかない。


「起きろー!」


 ガンガンガンガン!

 俺はフライパンをおたまで叩いて騒音を鳴らした。

 頭が痛くなるような音が廊下に響く。


「あー、うっさい! 起きてるぞ」


 扉が開き、セヴリーヌが出てきた。

 俺の前に現れた彼女はだぼだぼの上着を一枚着ているだけ。下半身は白い下着がわずかに見えている。

 その唯一着ている服と言える上着も、片方が肩からずり落ちている。

 クラリッサさんに借りた服なのだろうか。大きさがまるで合っていない。

 ほとんど裸だな……。

 そして長い髪の毛は寝ぐせでそこら中が跳ね、ひどいありさまになっていた。


「ふわぁー」


 大きなあくびをする。

 服の袖で寝ぼけまなこをこする。

 すさまじく眠そうだ。

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