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「ディアちゃんもかわいそうね。家族同士で争わなくちゃいけなかったなんて。家族って、互いに支え合うものだし、みんなのよりどころになるものじゃない」
「力を持つ者は、往々にしてそうなる運命なのじゃ。ワシとて血を見ずにランフォード家を興したわけではないのじゃ」
永遠の命を持つ『稀代の魔術師』スセリ。
凡百の人間とは一線を画す彼女もまた波乱の人生だったに違いない。
そして万能の力を継承し、家を失った俺も、やがてそうなるのだろう。
ローブを身にまとった謎の魔術師ナイトホークのことを思い出す。
奴とはまた戦うことがあるのだろう。
奴が俺に過酷な運命をもたらす者なのかもしれない。
覚悟しなければ。
「おーい。ごはん食べにきたぞー」
そのときだった。幼い少女の声がしたのは。
食堂に現れたのはセヴリーヌだった。
「あら、いらっしゃい。セヴリーヌちゃん」
「腹が減った。ごはんを作ってくれ」
「今、ちょうど作ってるところよ。ねえー、ヴィットリオー。セヴリーヌちゃんが来たからもう一人分追加してねー」
クラリッサさんが厨房に向かって叫んだ。
セヴリーヌが俺たちがいるのに気付く。
「ん? お前ら、生きて帰ってきたのか」
「そうそうくたばらんよ。ワシらは」
「セオソフィーは持ってきたんだろうな」
「ああ。ちゃんとある」
他の席からイスを引っ張ってきて俺たちの席に加わるセヴリーヌ。
「ならとっととスセリの新しい身体を用意して、それをもらわなくちゃな」
「新しい身体を用意するといっても、具体的はどうするんだ?」
「説明するのが面倒だ。明日になればわかる」
「明日になってからのお楽しみなのじゃ」
セヴリーヌもスセリも話すつもりはないようだった。
「今日の料理はなにかなー。楽しみだぞ」
「おなかぺこぺこですー」
「待ちきれんのう」
厨房からは食欲をそそるいいかおりが漂ってきている。
今日はヴィットリオさんの一番得意な料理が食べられる。
セヴリーヌのみならず、俺もプリシラもスセリも期待に胸を膨らませていた。
「クラリッサ。できたから持っていくのを手伝え」
「はいよっ」
ヴィットリオさんに呼ばれてクラリッサさんは厨房に向かった。
「おまたせっ」
「作ったぞ。食べろ」
二人が料理を持ってきた。
「うわーっ。すごいぞこれ!」
セヴリーヌが歓喜の声を出した。
テーブルに並べられたのはハンバーグだった。
甘酸っぱそうなソースのかかった、分厚いぜいたくなハンバーグ。
まだじゅうじゅうと肉の焼ける音がしている。
「パンも焼きたてよ。好きなだけ食べてね」
続けてクラリッサさんは編みカゴいっぱいに丸パンを入れて持ってきた。
セヴリーヌは「やったーっ」と両手を挙げてよろこびを身体いっぱいで表現した。