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15-2

 プリシラがテーブルの上に飛び乗る。


「さえぎろ」


 ナイトホークが暗い声でつぶやく。


「ていやーっ!」


 ナイトホークの頭を狙ってロッドを振り下ろすプリシラ。

 ところが彼の前に半透明の魔法障壁が出現し、プリシラの攻撃は跳ね返された。


「巻き起これ」


 再びナイトホークが唱える。

 その瞬間、彼を風上に激しい突風が走り、プリシラを木の葉のごとく吹き飛ばした。

 プリシラは壁に激突し、ぐったりと床に倒れた。


「プリシラ!」

「プリシラさん!」


 倒れたプリシラに駆け寄ろうとした――そのとき、俺とプリシラの間を阻むように無数の黒い刃が床から飛び出してきた。

 ナイトホークのほうを振り向くと、ナイトホークは俺たちに向かって手をかざしていた。

 ナイトホークの魔法か……。

 背中と後頭部を強く打ちつけたせいで、プリシラは気絶している。


「放つ!」


 スセリが光の弾を放つ。

 しかし、それもナイトホークが腕を横に払うだけで打ち消されてしまった。


「闇の刃よ」


 ナイトホークが呪文を唱える。

 その呪文によって黒い刃が空中に出現し、プリシラめがけて飛んでいった。

 黒い刃はプリシラの喉元で制止した。

 ナイトホークの後ろでクロノスが不愉快に笑う。


「指先一本でも動かしてみろ。その半獣のガキを殺すぞ。ハハハハッ」


 そして食堂の扉に向かって合図する。


「出てこい! こいつらを捕らえろ!」


 食堂の扉が開かれ、多数の兵士がなだれ込んでくる。


「ディア! 兵士たちを止めてくれ!」

「……無駄です。おそらくこの者たちはクロノスが雇った傭兵です」

「そのとおりさ」


 万事休すか……。

 プリシラを人質にとられた俺たちは、なすすべなくクロノスの傭兵に拘束された。



 それから俺たちは屋敷の地下へと連れてこられ、牢屋に放り込まれた。

 セオソフィーとフィロソフィー。それに『オーレオール』までクロノスに奪われてしまった。

 『オーレオール』が俺の手から離れたことにより、スセリの実体は消滅し、魂となって『オーレオール』の中へと戻ってしまった。


 鉄格子越しに立っているクロノスとナイトホーク。


「無様だねえ。クローディア姉さん」

「殺さずに捕らえるとは、あなたにも情があったなんて驚きです」


 そうディアが皮肉を言う。

 だが、完全に優位に立っているクロノスには全く通じていない。

 姉のくやしがる姿を心底楽しんでいた。


「勘違いしないでほしいね。姉さんはこのあとしっかり殺してあげるよ。姉さん派と父上派の人間への見せしめとして公開処刑するのさ。頂点に君臨するのはこの僕だ! ハッハッハッハッハーッ!」


 二つの宝珠を持ったクロノスの高笑いが牢屋に響いた。

 本当に悪趣味な笑いかただ。


「夢みたいだよ。憎くて憎くてたまらなかった姉さんをこの手で殺すことができるだなんて! 父上の寵愛を独り占めした罰が下されるときが来たんだ」

「クロノス」


 クロノスのそばでずっと黙ったままだったナイトホークが口を開く。


「約束どおり、ランフォード家の魔書は私のものだ」

「ああ、わかってるよ」


 その価値を理解していないのか、クロノスは『オーレオール』をあっさりとナイトホークに投げてよこした。

 ナイトホークは黙って『オーレオール』を受け取ると、ローブの中へとしまった。

 おそらくナイトホークは知っているのだろう。『オーレオール』が万能の力を授ける魔書であると。


「処刑は明日の朝、行う。それまで悔いの残らないよう、仲間と存分に語らうことだね」

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― 新着の感想 ―
[一言] 勝つ気満々だったんだろうけど家宝2個を敵の前までおいそれと持ってきたのは……まぁバカだな 隠しておけばいいものを
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