#006 眼鏡のお披露目 前半!
誰か教えて!どうしてこうなった!!
メガネ装備を手に入れた翌朝。私はご機嫌だった。初のダンジョン単騎攻略だったというのもあるし、メガネ装備を手に入れたっていうのもある。
それに、雪葉に早く自慢したいというのもあった。
「行ってきまーす!」
いつもより5分ほど早く家を出た私は、駅へと向かう。雪葉とはいつも一緒に登校していて、駅の改札で待ち合わせている。ただし、7時22分発の特急までに現れなかったらそのまま一人で行くことになる。
家を出て、角を曲がり、緩やかな上り坂を上り、大通りに出たら、そこを一直線。そうしたら、すぐに駅に着く。
時刻は7時12分。いつも17分に着くから、今日は早い。再開発区域である駅の西側から風が吹いてくる。夏は涼しいけど、今みたいな秋になってくるとそれは寒いの一言に尽きる。
秋の間だけでいいから風が吹かないようにならないかなぁ…。
「あ、ごめん。待たせた…?めっずらしー、葵が私より前に駅についているなんて…」
「えへへ、たまたまだよ~」
そんなことを思っていたら、商店街の方から雪葉が現れる。私の「たまたま」という言葉を聞いて雪葉は「だしょうな~」と返事をする。遅れることが多いのは私だから、「だしょうな~」なんだと思う。
私たちは早速改札をくぐり、ホームに昇っていく。左側の階段から電車に乗ると、市内の学校に行くことになる。
ホームに上がると、一本前の普通がホームを出ていくところだった。4両の電車は徐々に加速していくと、ホームから見えなくなった。
それを見送った私と雪葉はいつもの6号車3番ドアの前に行く。たまに…たま~に、7本に1本の確率で2つドアが来るけど…。その時はかなり混む。
「そういえば、昨日はちゃんとダンジョン攻略できたの?」
思い出したように、雪葉が昨日の戦果を聞いてくる。それを聞いた私は心の中で「待ってました!」とガッツポーズをして、昨日の成果を語りだし始める。
「それで、1階のスライムに苦戦してね~…」
「ああ…あの分裂するスライム…っか。あれは運営のいたずらみたいなものだよ…。範囲攻撃を持つアーチャーとか、火属性魔法が使える魔法使いにとってみたらなんでもないところだけどね」
『まもなく2番線に特急が8両編成でーー』
私が次の重要なところを話そうと思った時に待っていた電車がホームに入ってくるというアナウンスが。
「お、来た来た。今日はー、えーと、3つドアだね」
ホームから若干身を乗り出した雪葉が車種を見て、判別する。私も見てみると、それは確かに3つドアのシルバーの電車だった。沿線に住んでいて、ここ最近はほぼ毎日使っているから、いやでもどれがどの電車かなんて覚えてしまう。
それに乗車して、つり革を掴みながら、続きを話す。
「それで、休憩終わりにしようと思って、進もうとしたら、スイッチがあって…、それを押しちゃったらどこかわからない通路に落っこちちゃってさ…」
「え…?」
「それで、気づいたらボス部屋の前で…。ボスは何回も何回も回復してきたけど、持久戦に持ち込んで勝ったよ~」
「かい…」
「レアドロップもしたし!強いメガネだよ~!」
「メガネ…」
私の一連の話を聞いていた雪葉が、なにやらボケーとしている。どうしたんだろう。
「え…どこかおかしかった…?」
「全部だよ、全部!!」
雪葉は素早くスマホを取り出すと、これまた見事なタップ能力を発揮し、1分もかからずにEWOの攻略サイトの、ダンジョンドロップ品一覧を出して、押し付けてくる。
それを見ると、大盾、剣にダガー、魔法の杖も落ちることがわかる。
…しかし、そこには肝心の眼鏡シリーズがない。
「どうして…?」
「それに、ボスは回復なんかしないよ?HPロスがあるけど、強力な攻撃をするクマだったはず…。ちなみに、葵が戦ったのはどういう敵だったの…?」
「…メガネザル」
「うん、明らかにおかしいね」
私との応答に戸惑った雪葉…もといゆっきーモードの雪葉は顎に手を当てて、何かを考えるポーズをとる。雪葉の昔っからの癖だ。
『まもなくーー、JR線、市営地下鉄はお乗り換えですーー』
「雪葉、降りるよ」
結局、降りる駅まで一言も話さないで、固まっていた雪葉を突っついて準備をするように促す。運が悪いと、降りれない場合があるのだ。そうなると、確定で遅刻。
「うん…じゃあさ、帰ったら葵が行ったっていうところに案内してよ」
「もちろん!レベル上げにもなるし、私の眼鏡があればすぐ終わるし!」
雪葉は「どんなところなの、そこ」とつぶやきながらかばんを手に取る。それと同時にドアが開く。今日も人はいっぱい。いつもの電車乗降時決戦が始まる…。
〇 〇 〇
放課後、部活がない雪葉と一緒に一目散に帰宅して、集合時間に合わせてEWOにログインする。
先にログインした私は、集合場所にしている、噴水広場の前でゆっきーを待つ。
待つこと1分弱。ゆっきーがこちらに向かってかけて来るのがわかった。それとなく手を振って居場所を知らせて、一緒に歩き出す。
「ほ…本当に眼鏡だ…。かわいい…」
「べ、別に似合わないよ!むしろゆっきーの方が…」
そんなことを言い合いながら私たちは森の方に向かっていく。
その森の中で、私たちは奇妙なものを見た。白衣を着た一団が、何かを取り囲んでいるのだ。
「ねえ、ゆっきー…あれ…」
「うん、私も気になる。見ていこっか…」
ゆっきーも好奇心にひかれたらしく、ゆっきーも草むらに身をひそめる。
「課長、やっとですね!」
「課長じゃない、ぶ・ちょ・う!!」
「え、でも研究費ケチるから課長でいいんじゃ…」
「貧乏性じゃない!!部長だ、ぶ・ちょ・う!!」
「でも、この前発注書に課長って…」
「ええい、うるさい!とりあえずさっさと我々が開発したこの“ロボット君1号”を起動させるぞ!」
あ、なんだろう、このやり取り見ているの楽しい、面白い。ゆっきーも身をよじらせながら声を出さないように笑っている。でも、あの部長とか課長って呼ばれてる人、どっかで見たことがあるような…。
そんなことを考えていると、突然、辺りが騒然となる。
「た、大変です部長!エンジンオーバーヒート!」
「制御回線が焼き切れた!?」
「え…ちょ…遠隔操作装置が故障した…」
どうやら、起動させたロボット君1号が暴走しているらしい。私は、白衣の一団に囲まれているロボット君1号が真っ赤になっているのを見た。そして、それはひび割れていき…。
次の瞬間、爆発した。
「どわあああああー!」
「「「ぶちょぉぉぉぉぉぉ!」」」
ロボット君1号の爆発に巻き込まれた部長は、そのまま吹っ飛ばされていき。白衣の一団はそれを追っかけて消えてしまった。
その場に取り残された私と雪葉は、口を揃えて。
「「何だったのこれ…」」
と呟いていた。
ご観覧ありがとうございました。どうしてこうなったと思っていただけたら作者の勝ちです。
そう思っていただけたなら、ご感想でもなんでもいいので「どうしてこうなった!!}と叫んでみてください。私が聞きたいです、はい。
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