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Extra World Online~眼鏡の力で雑魚剣士は突き進む~  作者: 古河楓
STAGE:01 剣士と眼鏡
17/18

大晦日SS 雪葉ver

「今年もいろいろあったなぁ」


私――福井雪葉は現在、家の大掃除に従事していた。4人家族で家はまあまあ広いので私も自分の部屋以外も掃除しなければならない。今、私はリビングを掃除していた。弟の隆明は外でお父さんと一緒に草むしり、お母さんは2階の掃除をしている。

リビングの窓を拭きながら私は今年を振り返る。受験もあったが、今年一番の思い出と言えばーーあの大会のことだろう。


  〇 〇 〇


時は7月、夏本番。外のセミはうるさくないていて、さらに暑さを感じさせる。そんな中、私はユニフォームを着てグラウンドに立っていた。


女子ソフトボールの全国大会、私たちは県大会の決勝戦まで勝ち進むことができた。これに勝てば全国大会に出場することができる。うちの学校では14年前に一度出たきりだ。


試合前に私たちはベンチ前で円陣を組む。声かけは毎度のごとくキャプテンの先輩がすることになった。


「みんな、今年こそ絶対勝つよ!去年は準決勝までだったし、今年こそ勝って全国大会に行きましょう!」

「「「「おう!!!」」」」


勢いよく踏み込んでみんなで声を出す。ここにいる1年生は私だけ。今大会で出場したことができたのは2回戦の6回の代打から。結果はフォアボールだったけど。


「それじゃあ、スターティングオーダーを発表する」


監督が私たちに集合をかけてスターティングオーダーを発表しようとする。

今日も私はベンチスタートかもしれない。まだヒットは打ったことないし。1年の内野手は起用するのは勇気がいるだろう。


「1番、セカンド福井!」

「え……は、はい!


違った。いきなり呼ばれた。しかも1番でセカンド!?監督は思い切ったな、南江自分で思う。それに自分でも監督が私に期待してくれたのがわかった。とても嬉しかった。


「ゆっきー、頑張ってよ」

「は、はい先輩!頑張ります!」


今までセカンドのポジションを守っていた先輩が声をかけてくれる。本当は悔しいはずなのに涙を浮かべずに笑顔で送り出してれた。


そして、試合が始まる……。


試合は私たちの攻撃から始まった。私は先頭打者。なるべく相手に投げさせてからなんとか塁に出るのが仕事だ。


『1番、セカンド福井さん。セカンド福井さん』


場内アナウンスが私の名前を呼ぶ。思わず「はい!」と返事をしたくなるがそんなことはしない。私はネクストバッターサークルから左打席に向かって歩いていく。私は左利きなので、左打席に立つ。


「よろしくお願いします」


打席の前で審判と相手チームの捕手の方に挨拶をしてから打席に立つ。ベンチの監督からの指示はなし。あえて指示するなら、思いっきり振ってこいということなのだろうか、手でバットを振るようなしぐさをする。

私はそれにうなずいて、いつもしているルーティーンのようなことをして、打席に集中する。


「プレイボール!」


審判のコールで試合が始まる。相手ピッチャーはウインドミルで第一球を投げ込んできた。

その球は結構なスピードでアウトコースに決まる。


「ストラーイク!」


速度にして70キロ前後だろうか。体感速度だと125キロくらいか。アウトコースに来たということは、2つのパターンがありそう。

1つはインコースに同じ球。もう1つは外角に外して外のボールの出し入れをするか。


その2つを頭に入れながら第2球を迎える。

ピッチャーの球は下から出てくるので見えにくい。しかし、ボールはよく見えている。インコースにストレート。私は少しオープンスタンスに変化させてバットを振る。

バットからボールの感触が来る。それを感じながら思いっきりバットを振りぬくが、打球はレフト方向のファールグラウンドに飛んで行ってしまう。


次はなんだろうと、素振りをしながら考える。確か、投球練習で変化球も投げていたはず。2球ストレートだから変化球が来る可能性が高い。そう思って変化球に狙いを絞っただ3級は外へのストレート。結果はボール。


4球目、高めに浮いてボール。カウント2ストライク2ボールの並行カウント。投手有利のカウント。ここは粘ってフルカウントにしたい。だけど甘い球なら見逃さずに思いっきりひっぱってファーストの頭上を越えたライト線狙いでいいだろう。


そして第5球。インコース高めのストレートに私は反応してファールにする。今のは打ってもファールになるかフライにしかならない。


そして第6級は緩いボールがワンバウンドでキャッチャーミットに収まる。ボールだ。

ベンチからも「よく見た!」という声が飛んでくる。

これでフルカウント。ボールになればフォアボール。最初の打者だしフォアボールは出したくないはずだしストレートで勝負してくるだろう。


第7球、読み通りストレートが真ん中低めに入ってくる。私はそのボールを引っ張らずにそのままセンター返ししようとする。


キィンという鈍い音がして、ボールが弾き返される。打球はゴロでピッチャーの足元を抜けてセンター前に。

それを見た私は1塁を回ったところでストップする。こうして、私はこの夏初めてのヒットを打ったのだ。


  〇 〇 〇


1回に私たちは2点を先制、2回にもう1点を取る。相手チームも負けじと4回と7回に1点ずつ奪い返す。

そして、1点ビハインドの9回。こちらの2人目の投手の投げた球は力なくド真ん中へ。

相手打者はそれを見逃さずにフルスイング。ボールはありえないほど飛んでいき、そのままスタンドまで入ってしまう。あと2人というところで飛び出した同点のソロホームランに私たちの気持ちは少し暗くなる。

それが原因したのか次の打者はなんともないファーストゴロだったが、それをはじいてしまい、ランナー1塁。しかもここから相手打線は怖いクリーンナップ。3番は前の打席にもヒットを打っている。


私たちは少し緊張しながらも6-4-3か、4-6-3のゲッツーシフトを取る。私は独断で一二塁間にも対応できるような位置を取る。


そしてその打者への3球目が死球になってしまう。これでランナーは1、2塁。次は4番打者。今大会でホームラン3本、打率は.412、得点圏打率は驚異の5割。プロも注目するという大型打者だ。


でもやることは変わらない。2回目の守備のタイムを使った私たちはもう一度それを確認する。なるべく低めに集めて最低外野フライ。できれば内野フライ。できすぎの進塁打、奇跡のゲッツー。絶対にゲッツーを取りましょうと私は先輩たちの元気づける。


それが効いたのか当主の先輩は調子を取り戻し丁寧に低めに集めるだけではなく、左右を使いこなししっかりとボール球も使って組み立てていく。打者が嫌な内角低めをしっかりついたり、外の出し入れ。あっという間にカウント2ストライク2ボールになる。

ここまで相手はバットを振っていない。甘いボール狙いなのだろうか。それとも、狙い球があるのだろうか?


そして、第5球。アウトコースに若干浮かび上がったボールをスイングしてボールを鋭く打ち返してくる。

打球は少し広い1・2塁間の真ん中を破ろうとしていた。このままだと間に合わないだろう。

私は必死で頭から飛び込んでそれを捕球しようとする。

グローブに丸いものが滑り込んでくる感触があった。捕球できたのだ。でも、このままの体勢じゃ送球なんかできるわけがない。


「雪葉、ちょうだいそれ!」


すると、1塁を守っていた先輩がすぐ近くまで走ってきていた。私はすぐに先輩にグラブトスする。そのまますぐに立ち上がり1塁カバーに向かう。

打球がある程度早く、1塁ランナーの足が最高に遅かったのが幸いして2塁フォースアウト。そのまま1塁に送られてきた球を全力でキャッチする。判定はもちろんセーフ。


とりあえず1つアウトを取れた、これは大きい。


次の5番打者はそのボールを打ち上げてライトフライに。そのまま試合は延長になり……。


  〇 〇 〇


「それで、10回にサヨナラヒット打たれて3対4で負けたんだよねぇ」


その時の悔しさは今も覚えている。泣きたいくらい悔しかった。その時にもらった銀のメダルは自分の部屋にある。それと、引退した先輩からその時の盾ももらっている。2年の先輩方は「それもらうと見た瞬間に練習したくなるし、悔しくなるから」という理由で辞退し、3年の先輩は「見たら練習したくなるし受験勉強できなくなっちゃう」という理由で私にまわってきたのだ。正直、私も見たら悔しくなるし、練習したくなるんですけど。


その思い出の盾を拭きながら私は思う。来年こそ全国大会に行こうと。

ちなみに、葵はこの試合を見に来ており、私がヒットを打った時は周りがドン引きするレベルで喜んでいたという。


葵verもご覧ください 

よいお年を!

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