#011 持久戦!
初めて迷路のような隠しダンジョンを見つけてから4日。私たちはとうとう最深部までやってきた。
ここまでの下に行く階段はすべてわかりにくいところに隠蔽されていた。例えば分岐点の正面じゃなくてその下とか、行き止まりの横の壁の中とか。もうとりあえず「わからないところに隠しておけばいっか。いいよね?」みたいな隠し方だった。
当然、雪葉はとても怒っている。確かにここまで悪意があるとムカつくのはわかるけど、それでも最深部にこれたという達成感が私の中にはあった。
「それじゃあ、ボス戦いこっか……最近は特に機嫌が悪いから思いっきり暴れさせてもらうよ……!」
「あはは、そうだね。でもここまで来るの大変だったし、またこのトラップ地獄潜り抜けたくないから慎重に、確実に倒そう?」
「う、うん……そうだね。とりあえず【メガレクター】とかの攻撃はアオに任せるよ」
私たちは門の前で作戦を確認する。既に決めていたことだが、確認という意味ではここでやって正解だろう。
「それじゃ……行くよ」
私はそのまま前に立ってドアを開ける。不意打ちに備えるために【メガレクター】を使えるようにして、盾を構える。
盾を構えたまま部屋に入り、辺りを見回す。ボス部屋は岩場のような地形をしていた。この岩に関係する生物をかたどったボスなのだろうか。
私たちは辺りに警戒しながら部屋の内部に足を踏み入れていく。ゆっきーは岩の上に昇ったり下りたりして高低差を確認しているようだ。AGIが高めなゆっきーは、その俊足を生かして敵を攪乱させることができるのだ。
私たちが岩場の中心部に来た瞬間、部屋全体に縦揺れが起きる。震度で言ったら3くらいの揺れに、私たちはボスが現れることを察知する。
地中から口のようなものが現れ、ついで胴体が、甲羅が地面に這いずりでしてくる。今回のボスは亀だ。しかし、ただの亀ではない。甲羅がなにかの鉱石でできているかのような輝きを放っているのだ。
「来たね……!この大迷宮のヌシ!」
「ゆっきー、やるよ!」
「アオ、しっかりね!」
私たちはお互い声を掛け合ってから、タイミングを合わせて攻撃を開始する。私は右から剣で切りつけ、ゆっきーは反対側から矢を射る。
しかし、亀の皮膚はうろこがあるのかと疑うくらいに硬く、刃を1mmも通さなかった。HPバーも動いているように思えない。
「硬い……なにこいつ。VIT特化なのかな?」
「でも攻撃力ありそうだね、顔怖いし」
「とりあえずスキル使って可能な限り攻撃をしてみよう」
ゆっきーの提案に乗った私は、【スラッシュ】をはじめとした各種スキルで攻撃してみるが、一向にバーが動く気配がない。甲羅も攻撃してみたが、火花が出るだけだった。私のSTRじゃ、この亀のVITに届かないのかもしれない。
「ゆっきーはどう?」
「こっちも無理!あとは【ギガチャージショット】でダメージ通るかどうかだよ」
「う~ん……痺れるのはあんまり嫌だけど、それでダメージが通る可能性があるんだったら、やってみよ」
「わかった。じゃあ亀の近くから退避して!」
私は尻尾を鞭のようにして攻撃してきた亀の一撃を避けて、すぐさま近くの岩の陰に隠れる。
「じゃあ行くよ!【ギガチャージショット】!」
「ウッ……」
ゆっきーのスキルの宣言とともに体中に電流が流れるような感覚がした。私はそのまま意識を失いかけ……。
「【ヒール】!」
雪葉がすぐに【ヒール】で回復してくれたので行動可能!少しだけ体の感覚を確かめて、ゆっきーの下に行く。
「どう?ダメージ通った?」
「うん、2割くらい削れたけど……。【ギガチャージショット】はクールタイムが30分あるんだよねぇ……だから、次撃てるまで耐久しなきゃいけない」
「じゃあ、そうしよっか。ゆっきーが時間あればだけど」
「うん。今日はもう宿題も終わらせてるから時間あるよ?」
「それじゃあ、持久戦で行こっか!」
そう決めた私たちは、軽く攻撃を仕掛けながらも無難に30分間耐久をする。
「ゆっきー、30分経ったよ!」
「わかった!【ギガチャージショット】!【ヒール】!」
「しび……ふぅ……」
今度は脚から腰のあたりまで電流が流れた感触がしたところで麻痺が【ヒール】によって治された。いっそのこと、人を麻痺にしないスキルにしてほしい。
今ので亀の残りHPは6割になった。すると、亀は地団駄を踏むような行為をする。と思えば、辺りが地割れを起こし始める。
「うわわっ!」
「おっとと……そう来たか」
私は慌てて地割れから逃れ、ゆっきーは軽やかなバックステップで避けていく。今のでお互い無傷だが、合流できなくなってしまった。
それから30分間。小規模な地割ればかりを起こす亀の攻撃を避けて時間を稼ぐ。地割れの二次被害で若干視界が悪くなっているが、ゆっきーと、私の眼鏡には関係のないことだ。
「ゆっきー、次お願い!」
「わかった!【ギガチャージショット】、【ヒール】!」
4回目ともなれば麻痺になるのなど慣れっこで、抵抗するだけ無駄なので身構えずにリラックスしていたら、感覚を味わう前に【ヒール】がかけられた。
「アオ、残り4割だよ!」
「そうだねゆっきー!このままいけば倒せるよ!」
私たちはお互いに声を掛け合って、再び身構える。
そして、再び亀の行動パターンが変化した。今度は、私に顔の正面を向けると、そこから青白い光をともし始める。これは……ビーム!
「一気に決めるよ!」
ビームとかの光系統の攻撃は、私にとって大好物!私はすぐに【メガレクター】を準備する。
その青白い光が私に向かって発射された。こちらに向かってくる青白い光の奔流を前に、私は逃げるそぶりもせずに、このスキルを使う。
「【メガレクター】!」
ご観覧ありがとうございました。
次回更新は明日の午後を予定しております。