2、くだらなくても人によっては許せないこともある。
「はぁ~、まさか話し合いが必要なのが敵ではなく、味方の方だったなんて…。」
「で、あるな。」
はぁ~、空が高くて蒼い…。
時間がゆっくりだ…近くにあくせく動く人がいない所為かな?時間の流れがゆっくりに感じる…。
空気も違う。いや、空気じゃなくて匂い?これは自然の匂いかな?
木と草と線香の香り…風に揺れる若葉の音。
そして何処からともなく聞こえる…喘ぎ声…。
喘ぎ声⁉あまり長居するべき場所ではないのかもしれません。
「…母上に会いに行きます。」
「で、あるか。」
「で、あります。それまでこの戦を待ってもらえますか?」
「………なんとかしてみよう。栞が私をお姉ちゃんと呼んでくれたからな♪逸る者は斬ってしまおおう。」
いや、ちょっと待て!味方を斬るって…その辺は私の知ってる信長っぽい…のかな?
「流石に斬るのはどうかと…。」
「そうか?栞は優しいな♪」
そういって、また抱き寄せられて頭を撫でられます…。
低反発…⁉枕に良いかも…こっちの枕硬いし…。
そんなアホなことを考えてたら私は胡蝶義姉の目を見て、命の危険を感じて心臓辺りがギュッっと縮んだ気がします。
慌てて凜お姉ちゃんから離れます。胡蝶義姉さん怖いです!
「は、母上はどちらに?」
「なにを言っている?末森ではないのか?」
あ、当然のことなんですね…誤魔化さないと。
「よくご存じで…篝。」
「栞ちゃん…馬乗れなくなってるのに末森城までどうやって行く気なの?」
「あっ……馬車?」
「馬車?馬に引かせるのか♪面白そうだな♪」
あれ?馬車ってこの時代にないの?
「牛車で行く?それとも神輿にする?」
篝はそう提案してきたけど、牛車?なんかおじゃるって言ってそうな人が乗ってそうなイメージです。
神輿は…お祭りの神輿のイメージで、あれだと乗ってる私はなんか晒し者っぽいイメージになるんですけど…。
まあ、どちらも馬と比べれば遅そうなイメージです。
「時間が惜しいからな~。」
「それなら良いものが有る。犬!」
お寺の中から少女がが現れました。
篝が武器に手をかけたままだったのには気付いてましたが、兵を伏せてたんでしょうね。
「アレを持て。」
「…。」
「どうした?」
「アレって何?」
「「「………。」」」
当然と言えば当然です。アレで分かるのはきっとテレパシストです。
「妹の前で恰好がつかんではないか!アレだアレ…負傷者を運ぶのに便利そうで前購入したやつだ。」
「ん。畏まり。」
「凜お姉ちゃん、あの子は?」
「ん?………いや、お姉ちゃんは栞のこと信じてたんだぞ?でも古の婆のやつがな?…分かるだろ?」
「いえ、そちらではありません。犬ちゃんのことです。」
「ん?知ってるだろ?前田利家。まだ正式ではないが、幼名から取って犬の名を与えようと思ってる。」
うん。後半は全然意味不明だけど、さっきの子が前田利家だってことは分かった。
前田利家…利家×慶次のやつがあったけど…展開が唐突過ぎてあまり好きじゃなかったんだよね…。
ただエロければ良いってものじゃないんです!そこに至る経緯も重要なんです!
………私個人としてはですけどね。
犬ちゃんが持って来てくれたのはあれです。
よくお母さんが赤ちゃんを抱っこしてるときに使ってるやつです。
馬に縛り括られるよりはマシかな?と思ってたんですけどね…。
末森城に到着するまで晒し者状態で恥ずかしかったです。
しかも馬の振動で変に食い込んで痛かったんで、途中で泣きが入って結局馬に縛られましたけどね。
末森城に到着してすぐ、私の母親で花ちゃんこと土田御前と会えることになりました。
案内された一室の襖が開けれて、土田御前を初めて見た印象は凜お姉ちゃんに雰囲気が似てる。です。
同族嫌悪とかで嫌ってるんなら、どんなに言葉を並べてもどうしようもないかも知れません。
人の感情ほど厄介で面倒なものはありません。
「よく来ましたね。して、何用ですか?凜を倒した報告ですか?」
「いえ…母上にお尋ねしたいことがありまして…。」
「は・は・う・え…。」
あれ?何か不味った?
「2人の時は花ちゃんって呼んでって言ったでしょ!」
「………。」
ああ、凜お姉ちゃんに似てる………変な所が。
「何故、凜お姉ちゃんを嫌ってるんですか?身内で争えば他国に隙を―――」
「お姉ちゃん?アレをお姉ちゃんと呼ぶのですか!」
おう、めっちゃ怒ってる。
「アレをお姉ちゃんと呼ぶなんって…私のことも花お姉ちゃんと呼びなさい!」
「………へ?いやいやいや、花ちゃんは私の母上ですよ?流石にお姉ちゃんは…。」
「なんと…。」
なんでしょうこの世界…この世の終わりのような絶望した顔をされましたよ?
確かにコウノトリが運んでくるなら親って自覚も半分くらいなのかもしれませんね…。
「それでは花姐様でどうですか?」
「し、仕方ありませんね。それで今後そのように呼ぶように♪」
うん。似た物親子だ、尻尾がぶんぶん振られてるような幻想が見える…コウノトリが運んでくるなら血の繋がりってどうなってるんだろ?
「それで花姐様?何故凜お姉ちゃんを嫌ってるのでっすか?」
「…ねが…。」
「はぃ?」
「あの子の胸が私より大きいのが許せないんです!」
おふ、そんな理由ですか。
「貴女だけなんです。」
「はぃ?」
そう呟いた花姉様はガバッと着ていた着物をはだけさせて、胸を露にします。
その行為は例え同じ女性でもちょっと引きます。
それでもEはありそうな胸、張りもまだ健在。
でもあれです。乳は重力に魅かれてる。ってやつです。
少し垂れて始めてます。
「え~っと…結構なお手前で?」
「ありがとう♪でも、あの子の胸見ましたか?」
「はい。大きかったです。」
「そうです!それが許せないのです!あなたも見たでしょ!何ですかあのサラシは!今にも零れそうな胸!何あれ!自慢?自慢してるの⁉」
ガバッと立ち上がり、花姉様は怒りを露にすると一緒に胸も揺れてます。
ああ…あれはね…上手くサラシ撒いてたけど、あの大きさだと却って大きさを主張してるようにも見えます。
胸が窮屈そうでした…だから私を抱き寄せた程度でサラシが外れるんです。
私はこの栞の体になる前がBでしたから…決してAではありません!
Dか、それに近いCはあるこの胸は正直嬉しいです。
「それに歳の所為か…段々と垂れて来ました…。」
やっぱりそちらも気にしてましたか。
「花姐様。1つ予防の体操を教えます。」
「予防?予防できるのですか⁉」
「あくまで予防です。」
「構いません!」
喰いつきが半端ないです。
ということで、垂れ乳予防のストレッチを花姐様に教えてあげました。
クーパー靭帯に負荷がかからない運動ってやつです。
え?Bだった私が何でそんなこと知ってるかって?
………大きい人の悩みをネットで見て、ざまあとか思って自分を慰めてたなんてことはありませんよ?
ええ、そんな事実はありません!
それとブラを作ることにしました。ノーブラではダメです。いろんな意味で…。
ストレッチを一通り教えてしばらく…
「栞の願いです。戦は止めましょう。」
「ありがとうございます。」
澄ました顔で花姐様はそんなこと言ってますけど、胸の大きさとかいう理由で付き合って命を散らす人の身にもなって欲しいです。
「ですが…。」
「何か?」
「丸と紅が何と言うか…。」
「誰です?」
話の内容から丸と紅というのが人なんだろうってことは分かります。
「林秀貞・林美作守の二人ですよ。あれらも凜の胸に不満を抱いてこちらについた者達ですからね…。」
何なのこの世界…花姐様と同じ理由の人がまだ居るなんて…。
兎に角会って話してみないとどうにもなりません。
花姐様との話を終えて篝に聞いてみると、昨日の軍議に参加していてまだあそこに逗留してるとのことだったんで丁度良かったです。帰ったら会うことにしましょう。
こちらがくだらないと思うことでも、当人には大切なことで、それで怒ってる人っていますよね?
その場合は取扱注意ですから気を付けてくださいね。