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第一話 入学式

ピピピッピピピッ

「…んっ…んん…」

部屋の中に目覚ましの音が鳴り響き、目を覚ます。これ以上この音を聞くと憂鬱な気持ちになってしまうので、目覚ましを止めて起き上がる。本当は二度目の眠りにつきたいところだが、今日はそうもいかない。愛しい自室から泣き泣き出て、下の階に降りて行く。

「おはよぅ…母さん」

「おはよ!朝ご飯もうできてるから、早く食べて準備しなさい!入学式遅れるわよ!」

そう、なんと今日は高校の入学式なのだ。昨日までは異様な程に緊張していたが、何故か今は冷静でいられる。人はこんな短時間で成長出来るものなのか…。

「怜菜!なにボッーとしてんの、早く食べちゃいな!」

「わかってる、わかってる」

母さんの催促に適当に返事を返し、朝食をとり始める。

箸を進めながら、点けてあったテレビのニュースを見る。ニュースでは今日の早朝にあったという銀行強盗事件に関して取り上げられている…。

しかし、私はそれに対して『こんな事があったのか』、という感想よりも先に、強盗が押し入ったらしい銀行を見て驚く。

「…!。ねぇ、母さん。ここって…」

そこは私が住む景香町のすぐ隣町である寧風町の、よく見知った銀行だった。

母さんは正装に着替えながら、不安そうな顔をする。

「まだ犯人捕まって無いんでしょ?。心配ねぇ…」

次にテレビに映されたのは銀行強盗が起きた時に防犯カメラに録画されていた映像だった。職員らしき人に、バッグの中へ金を入れさせているマスクを被った犯人は、掌から電気のようなものを出して職員の人を脅していた。

「能力者…」

最近、なんとなく能力犯罪が増えてきたような気はしたけども、こんな身近で起きるなんて…。そこまで見たところでチャンネルを変え、食事を再開する。

大切な入学式の朝はそんな、少し気落ちした状態でスタートした。












現在学校の正門前である。

門の横には《入学式》『ご入学おめでとうございます!』と、書かれた紙がデカデカと貼ってあり、同年代であろう女子達が続々と門を通っている。私もそれらの列に続き、母さんと一緒に校庭の端を歩いて校舎へと向かって行く。

母さんは『やっぱり凄い大きい学校ね〜』などと呑気な事を言っているが、私は内心ガチガチに緊張していた。朝の冷静さは、単純に寝起きだったのが理由だというのを考えると凄まじく情けなくなる。やはり人は、あの短時間では成長出来ないらしい…。

そもそも私自身、あまりここへの入学には乗り気では無い。いや、確かにJKデビュー、新たな友人、新たな環境。確かにそれらは魅力的かもしれない…。が!、私が入学するこの「明松女子高等学校かがりじょしこうとうがっこう」はとても特殊な学校なのだ。何が特殊なのかと言うと、この学校、日本で一番規模が大きい「能力者女子学校」であり、それ故に沢山の「能力者」が集まる。能力者で無い私は、そんな人達が沢山いる場所で馴染めるのかが心配なのである。

そも、なんで能力者じゃないこの私「上里 怜菜(うえざとれいな)」がここに入学する事になったのか、その理由は約1年前まで遡る。

何があったかと言うと、中3に上がった際の体力検査で、部活に入っていた訳でも運動が特別得意だった訳でもない私が、その殆どの項目で常人離れした記録を出したのである。いきなりの異常な変化に私自身戸惑い、すぐに病院で検査してもらった結果、能力覚醒の兆しがある事が判明したのだ。

その後は能力者学校に入学する事を決め、『それならば『明松女子高等学校』が良いだろう』との事で現在に至る。

今までの事を振り返ってる間に体育館に着き、私は大量に並んでいるパイプ椅子の一つに座らされた。周りにも沢山の女子が座っており、緊張した表情の娘、隣の人と既に打ち解けている娘等、様々な人達がいる。ふと、隣の列の奥の席を見ると三人組のギャルっぽい女子が、周りの女子達に「アンタって能力者?」などと聞き回っている。

(普通に考えたらこの学校に入学する娘は皆能力者でしょ……、私みたいなのものいるけど。)

訳の分からない三人組の行動に疑問を持ちつつも、すぐに私は目を逸らす。見つめてるのがバレたらああいうタイプは何をしてくるか分からない。

冷静になって体育館内を見てみる。しかしまぁ、学校説明会に来たから分かってはいたけど、やっぱりこの学校の大きさは異常だと思う。「日本で最大規模の能力者女子学校」とは言けど、能力者学校とか関係無く、日本で一番大きい学校だろう。ていうか正直、世界で見ても上位の方に入るんじゃないのかとさえ思う。確か去年の生徒の数が900人近かったけ?それ程の人数がいたにも関わらず、まだ教室が多く余ってたというのだから恐ろしい。まあ、能力者の数が今後さらに増えてく可能性が高いっていうから、この馬鹿みたいな大きさも理にはかなってるのだろうけど。そんな事を考えていれば、先生らしき人がステージ下に設置されいるマイクの前に立ち、入学式開始を知らせる。

ざわついていた体育館の中は静かになり、そこから来賓の紹介等が始まる。正直この時間ほど退屈な物も無いだろう。個人的には、立ちながら聞く校長の話以上にきついものがある。

「それでは次に『理事長のお言葉』

明松 仙里(かがりせんり)理事長、お願いします。」

来賓紹介が終わると、次は理事長の言葉だ。司会の先生の言葉に応じるように、女性がステージに上がる。

明松 仙里(かがりせんり)理事長先生。能力等に全く持って関わりがなかった頃の私ですら、名前だけは知っていた程の人だ。先代理事長である父親からその座を引き継ぎ、親の七光、と言ったような周りの言葉をその天才的な学校経営手腕で黙らせたとかなんとか。

パンフレットやテレビでは見た事があったけれども、学校説明会の時には大事な予定が入ってしまったとかで、生で見るのはこれが初めてになる。

それにしても……

(綺麗な人だなぁ…)

地毛であろう茶髪を腰まで伸ばし、少しだけ開いた薄目はまるで菩薩のようだ。パンフレットとかで見た時から思ってはいたけど、生で見るとオーラが段違いだ。

仙里理事長は保護者、生徒、来賓に頭を下げると話をし始める。

「皆さん高校入学おめでとうございます。今日は天気も良く、暖かな陽気に満ちていて、素晴らしい入学日和です。

新しい環境に身を置くというのは、いつだって大きな不安がつきものです。特にここ、明松女子高等学校は日本最大の能力者学校という事から沢山の能力者の生徒が集まります。このような環境は現在日本には殆ど存在せず、皆さんは全く未知の世界へと飛び込むこととなるでしょう。しかし、それは逆に自分と似たような良き理解者を見つけるには、最高の環境になると私は信じています。保護者の皆様につきましては、今まで大切に育てた娘様を預かる身として、我々教師一同、誠心誠意付き合っていく所存です。」

理事長はそう言ってニコリと微笑むと、一礼をしてステージから降りた。

いやぁ…なんか…アレだね、凄い癒された。最後の微笑みで一週間は元気にやっていけそうだ。

理事長が席に着くと司会の先生が口を開く。

「理事長ありがとうございました。

次は『在校生代表の挨拶』。目別 瞳さん、お願いします」

「はい」

そう言われて前に出たのは眼帯を着けた左目に、紅色の右目を持つ綺麗な黒髪の少女だった。

息を呑む。去年の終わり辺りのニュースを少しでも見たのなら、誰だって知っている。あの人は…明松女子高校の新生徒会長、目別 瞳(めわかれひとみ)さんだ…!。

前述した通り、全体生徒数がとても多いこの学校は、第3学年の人数も必然的に多くなる。そんな沢山の能力者の中から次期生徒会長を決める選挙は連日ニュースにもなり、能力者がいなかった私の中学校でもしばらく話題に上がっていた。そしてその選挙を勝ち抜き、新生徒会長になったのがあの目別 瞳さんである。

前に出た瞳さんは、深呼吸をしたかと思うと口を開いた。

「皆さん、ご入学おめでとうございます。

生徒会長の目別 瞳です。

えぇ…、唐突ではありますが、新入生の皆さんは私が眼帯をしている理由を知らない人も多いと思います。…簡潔に言うと、これは私の能力が原因なのです。私の能力は『生物のエネルギーや、血液の流れを見ることのできる紅色の右目』の力と『相手の考えを見通せてしまう青の左目』の力の、二つがあります。」

「嘘でしょ…」「初めて見た…」「『二つ持ち』かよ…」

体育館内が騒つく。

《二つ持ち》。二つ以上の能力を持つ人間は非常に珍しいとされ、世間ではそう呼ばれる。

まあ、確認された中だと最大は、《六つ持ち》だったらしいけども…。

だとしても凄い事だ。でもなんで今、能力の話を…

「自分の心を見られて、平気な人が居るわけありません。大切な親友はいましたが、小学校、中学校では私の能力を怖がる人は多く、孤独を味わう事も多かったです。私自身、人の心を見るのに恐怖を感じるようになり、今ではこの眼帯を着けて過ごしています」

悲しそうに右目を歪め、眼帯の縁をなぞりながら彼女はそう言う。

その姿に、私は何とも言えない気持ちになる。確かに能力を持つ人と、無能力者の人とでは違うところが多いし、そこからくる問題だってある。この話の出来事が正にそう。私の周りでは、身内が能力者だったりした友達もいたからそういった、『能力者は怖い』、という風潮はなかったけど…。

まあ、今朝の銀行強盗みたいに能力を悪事に使う人間が増えてきているのも理由の一つではあるし、古来から人という物が自分達とは違う相手に対して恐怖を抱く生き物というのもある。

それ以外にも理由はあると思うけど、難しい話だ。

瞳さんは新入生を安心させる様に言葉を続ける。

「皆さんの中にも、能力を持つが故に同じような経験をした人が居るのでは無いでしょうか?。でも、安心してください。理事長が言っていたように、ここは皆さんの理解者を見つけるにはとても良い環境だと私も思います。先生達も全力でサポートしてくれますし、何かあった時は私達、高学年に遠慮なく相談してください。皆さんが良き学校生活を送れる様、心から祈っています。」

そう言葉を終えると、所々で拍手の音が鳴り始める。

この学校に訳あって入学する能力者の人にとって、これ程救いになる言葉もないだろう。能力者では無いけども、そう感じさせられる安心感があった。

私も拍手をしようと手を合わせる。

すると、『待った』といった風に、話はまだ終わってないと言うかの様に、瞳さんが掌を前に向け…

「もう終わる風に言ってしまってすいません。紛らわしかったですね。でも、まだ話があるんです」

にこやかな顔でそう言った。次の瞬間、その表情は冷たい物に豹変する。するとどうだろう、背筋を冷たいものがつたり、一瞬にして大量の冷や汗が吹き出して来たではないか。この場にいる新入生の大半が、私と同じ様な状態になっているのが見なくても分かった。それ程までに空気が重い。とても数秒前、前にいる彼女の祝福の言葉に感動し、拍手をしようとしていた雰囲気では無い。

(何よ…これ…圧…?)

その冷たい表情を崩さぬまま、瞳さんは話を再開する。

「ここまでは、私個人としての祝福の言葉です。ここから私が皆さんに話す事は、生徒会長としての言葉だという事を理解して頂けると嬉しいです。

まず、全世界の能力者学校で、新入生が入る時期に能力無覚醒者の生徒を狙ったカツアゲ、暴行等の件数が多くなるというのは皆さんご存知だと思います」

(この…話ね…)

緊張は解けぬまま、内心納得する。確かに触れとくべき事ではあるだろう。特に、能力者が多く集まるこの学校なら。

無能力者を狙った軽犯罪。それらの犯罪を起こす能力者は、意外にも学生等の若い世代に多いと言う。

そして、そういった犯罪の大体が無能力者を軽視、見下した考えを持って行われるとされる。

能力者である一部の若者が持つこの小さな考えがもし、広がり、大きくなるような事があればそれはある種の『選民思想』に繋がる可能性があり、今後向かい合わなくてはいけない世界的な課題とされている。

『強大な力に恐怖する者がいる限り、その力を利用しようとする者が絶対に現れないとは言えない』

どこかの哲学者の、そんな言葉を思い出した。

「我が校でも、今の時期は毎年のようにこの問題が浮上します。先生達や、私達生徒会も出来るだけそのような事が起きないように努めてはいますが、完全に無くすにはやはり難しいというのが現状であり、この問題を撲滅するには皆さんの協力が必要不可欠であると私は考えています。

明松高校は生徒の意思を最大限尊重してくれますし、それはこの学校の教育理念が『自由』である、というところから理解して頂けると思いますが『自由』と『無法』は全く持って違う物。皆さんが自らの『力』の誘惑に負けんとする心が、この問題を解決する為の大きな一手となる事を期待しています」

『これで私の話は終わりです』そう言うと瞳さんは一礼をし、ステージから降りて行った。

場の緊張した空気が一気に解ける。私も大きな溜息を一回だけ吐く。それでも、なんとも言えない気持ちが消える事は無く、結局入学式が終わるまでただただ私はボーッとしていた。








式が終わり、保護者席に座っていた母さんと合流して正門を出る。するとそこには、よく見慣れた顔があった。

「おはよう怜菜!。でもって、入学おめでとう!」

「伝子さん!、来てくれたんだ!!」

この人が良さそうな女の人は、私が住む景香町にある桜舞商店街で花屋を営んでいる、遺枕 伝子(いまくらでんこ)さん。母さんがまだ小学生の時にこの街に引っ越してきたらしく、その時から花屋を開いているらしい。それなら最低でも50代はいってそうだけども、そうは思えない程若々しいし、20代って言われても納得してしまうレベルだ。能力者では無いらしいけど本当は不老の能力でも持ってるんじゃないかと、内心疑っている。

「伝子姉さん、来てくれてありがとうございます」

「何言ってんのよ!赤ちゃんの頃から成長を見てきたこの子が高校生になるってんなら、入学式には来ないと!。こういう思い出は買えるもんじゃないし」

花好きだった母さんは、伝子さんの花屋が開店した時から通い詰めていたらしく、そこからお互い仲良くなったらしい。その頃から伝子さんの事を『伝子姉さん』と呼んでいるようで、その様子はまるで実の姉妹の様だ。

私自身もまだ幼かった頃、母さんに用事ができてしまった時とかは伝子さんに預けられる事が多く、考えようによっては私のもう一人の母親と言ってしまっても過言ではない。それぐらいにはお世話になっている人だ。

「この後、一緒に昼食でもどうだい?。なんか奢るけど?」

「え!?いや、悪いわよ姉さん!」

「遠慮なんてしないでよ!、この子の入学祝いだ!。怜菜も、なんか旨いもん食べたいよな!?」

伝子さんからそう聞かれ、頭を超高速で縦に振る。人からのこういった誘いには出来るだけ乗りたいけど、普段なら遠慮をしてしまう。でも、伝子さん相手だとそこまで気を張らなくて良いから楽だ。

「あぁ…、本当にありがとうございます…姉さん」

「ありがとう!伝子さん!!」

母さんと一緒に礼を言うと、『良いってことよ』と伝子さんは歯を見せて笑う。

(じゃあ、行くとしますか…アレ?)

なんとなくポケットの中に手を入れて、家の鍵がないことに気づく。多分…椅子に座った時に落ちたんだろう。

「母さん、伝子さん、家鍵落としたっぽいからちょっと探してくる!先行ってて!」

「あら、大丈夫?母さんも手伝うけど…」

「大丈夫!大体何処に落としたかは検討ついてるから!見つけたら連絡する!!」

そう言って私は校舎の方へ戻っていった…










「いやぁ…でも、あのちっちゃかった怜菜がもう高校生ねぇ。時の流れって早いもんね…。

飛鳥、アンタもそう思うでしょう?」

怜菜が校舎へ走って行くのを見て、伝子は感慨深そうにそう言い、話を怜菜の母… 上里 飛鳥(うえざとあすか)に振る。

「そうねぇ、しかも高校生になったどころか能力者学校に入学するだなんて、数年前は想像つかなかったわ…」

「…あぁ…そうだねぇ………


…でも…運命ってのはホントにあるんだと、そう…思うよ…」

「…姉さん…?」

伝子が小さく呟き、少し黄昏た風になる。

それに対して飛鳥が反応を示すと、ハッとして、伝子の様子は元に戻った。

「…!!…じゃあ、行こうか…!。先に行って怜菜が来るまでに色々と注文しておいた方がいいだろう?」

「(変だと思ったけど…気のせいね…)…そうね、じゃあ…先に行きましょうか!」

気を取り直した二人は何処の店が良いかを話しながら、学校を離れた。









体育館に戻ってくると、かなり多く入学生や保護者がまだ残っおり、記念写真などを撮っていた。私は自分が座っていた席の場所まで来て、その床を見る。長年使い、慣れ親しんだ鍵がそこには落ちていた。

(やっぱりあった…!)

予想が的中した事で時間を掛けずに落とし物を見つけられ、私はかなり上機嫌で鍵を拾い上げる。落とし物って、自分の予想から全く外れた場所から見つかることが多いから、こうやってすぐ見つけられると嬉しいよね…。

そして鍵も見つかり『さて、母さん達と合流するとしますか』と思ったところで、背後から『ねぇ』と声をかけられる。なんだと思って後ろを振り向くと、そこには式が始まる前、周りの席の子に能力者か否かを聞いていたギャル三人組が立っていた。

(さっき見てたの…バレてた…???)

表情では平然さを保っていても、内心ビビリにビビる。

「聞きたいんだけどさ、アンタって能力者?」

するとさっきしていたのと同じ質問を、私にもしてきたではないか。でもよかった…この調子だと、さっき見ていたのはバレてないようだ…。

ならこの訳の分からない質問に答えて、さっさとオサラバしてしまえばいい。別にギャルギャルしいのが嫌いな訳じゃないけど…この三人は、なんか嫌な感じがする。

「能力者では無いです。私この後用事があるんで失礼しますね」

「ちょっと待ちなさいよ」

笑顔でそう言い、この場を離れようとする。途端に三人のうちの一人に腕を掴まれた。

驚き、三人を見ると何故か盛り上がっているようで、『やっぱいたじゃん!』とか『探した甲斐があったわ!』だとか言っている。

「いやぁー、私達探してたんだよねぇ…む・の・う・りょ・く・しゃ・の・娘♡。」

悪い顔をしたギャルから出てくるその言葉を聞いて、脳裏にとある事が思い浮かんできた…

(『能力を持たない人を狙った軽犯罪』…まさか!

まずいまずいまずい!これ答え間違えた!?。能力者だって今すぐに言った方が良い!?。いやでも、バレたら後が怖いし…。)

私は必死になってどうすれば良いかを考えに考える。すると頭の中に、一つの名案が浮かんできた。

(そういえばよく考えたら…、今はまだ人が結構残ってる。叫べばなんとかなるかも!)

そう思い、助けを呼ぼうとする。

…でも声が出ない。いくら力を込めても、だ。

身体の異変に困惑する私の耳元で、ギャルの一人が心底楽しそうに囁いてきた。

「…私の『能力』で、

声出せないようにしちゃった♪。騒がずについて来てくれたら、予定より酷い様にはしないよ…」

…最悪だ。でも、相手がそう言うのなら今はそうするしかない。入学式の日にこんな事が起きるなんて

私ぐらいしかいないのでは…?

私は声が出せない状態で静かに頷くと、三人に囲まれて、どこかに連れて行かれた……。















(あいつら、やっぱりそういった連中(・・・・・・・)だったのねぇ…)

式の開始前に変な事をしていた三人組、なんかやな予感がするな、と思って見ていたら一人の女の子を取り囲んでどっかに連れて行った。

(にしても、生徒会長からあんなに圧を掛けられていたのに…、懲りないもんだねぇ)

面倒ではあるけど、連れて行かれたあの娘を放っておく訳にも行かない。

私はスマホを取り出してカメラを開くと、静かに四人を尾行し始めた。

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