勇者と三人目の魔王の話だけど
これは勇者と魔王のものがたり。
あるところにとても強い勇者がおりました。
勇者は怒っていました。なぜかというと、永遠の魔王がその圧倒的な力で、世界を滅茶苦茶にしてしまったためです。
永遠の魔王はあらゆるものの時を停滞させて、停止した世界を作り出そうとしました。しかしそれを許す勇者ではありませんでした。
「魔王!」
「よもや停止した時の中を動くとは。貴様が勇者か」
勇者は止められた時間をものともせず、永遠の魔王のもとへ辿り着きました。
「魔王、俺はお前を許さない。皆が平等に持つ、時間を奪い取るお前は!」
勇者はここに居ない仲間たちを思って、悔しさに涙を流しました。しかし、冒険で鍛えられた勇者にスキはなく、剣の切っ先に乱れはありませんでした。
「ならば貴様も我が力の前に身を委ねればよいだろう。このように、抗うことが愚かなのだ」
「ふざけるな! お前の身勝手な都合で、どれだけの嘆きが、悲しみが生まれたと思っているんだ! ただ平和に生きていたいという、当たり前の願いすらも踏み躙るなんて、俺は許さないぞ魔王!」
停止の波に飲まれて静止した民衆。抵抗力を持っていても徐々に停止の波に抗えず、負いてきた仲間。託された思いを胸に、勇者は魔王に迫ります。
しかし、永遠の魔王は感情のない顔を崩しません。
「生きることは奪うこと。奪うことは争うこと。争うことは悲しいことだ。なにもかもが止まった世界には争いも悲しみもない。これをもって、平和は成ったのだ」
「全ての人々の自由を奪い、時間を止め、彼等がどんなに望んでも明日が来ない世界のなにが平和だ!」
「くだらぬ感情論よ。未来を望まない者にとって先に進むことは地獄でしかない。なにかを積み重ねることが必ずしも良いことであるとは限らないのだ」
「黙れ魔王! どんな理由があっても、他者を害するお前たちは悪だ!」
「なるほど、私は悪だろう。だが貴様にそれを口にする資格はない。気に食わぬというだけの理由で、暴力のみを振るい他者を虐げる貴様にはな」
「今すぐに皆の時を返せ! 返す気がないのならば、斬る!」
「断る。これが俺の望みだ。自分だけが正義と思うな、勇者」
「俺には守りたい世界がある!」
「そうか」
永遠の魔王が力を開放します。
永遠の魔王の力が際限なく高まりました。なんと、永遠の魔王の真の力は、時間の流れを逆行することができ、何度でもいまをやり直せるというものだったのです。
「俺にもだ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
なんやかんやあって更なる"力"に目覚めた勇者は、永遠の魔王を滅ぼしました。どれだけ時を操っても、時間を超越して追いすがる勇者によって斬って捨てられました。
世界の平和は、守られました。
つづく。