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始まり  作者: 天翔 凪咲
2/2

 

 これはただの紙切れのようであっても、載ったインクの染みの羅列(られつ)が重要だ。


 一族が探し求めていた()わば秘宝を示した地図。

 本物はただひとつで、羅列の(いづ)れかに隠されている。


 それは珠玉の源泉。


 (かす)れた直線は、ただひとつを残してすべてを消した。

 残った最後の名前。


 やっとここまで来た。


 久しぶりに踏んだというのに、故郷の地は何の感慨をも生まなかった。

 恐らく、彼女を手に入れた時に格別の物となることだろう。



 ビル上を吹く夜の風が心地良い。


 隣には苦渋を快楽へと変える悪魔。

 たとえ毒であったとしても、人にとって甘美であることには違いない。


 賭けを反故(ほご)にする気なのか、先に見つけたぼくを差し置いて自分の物にしたいと言い出した。


 それほどまでに彼女は素晴らしい。


 感覚を研ぎ澄ませれば自ずとわかる優雅な芳香は、深まりゆく夜の空気の清々(すがすが)しさのような清澄(せいちょう)感に、気品がありながら妖艶ともいえる魅惑的な(かぐわ)しさ。


 その矛盾が生む調和が、ぼくらを一瞬で虜にしてしまった。


 どんなに上に厚く重ねても、肌の下を流れゆくその香りを隠すことなどできない。



 なのに、それを乱す背後の邪魔な存在。

 闇から這い出たばかりの鼠の、目立ちすぎる空色の視線が(うるさ)い。

 追い払おうと動けば姿を隠した。


 そのままおとなしく地を這っていてくれれば良いのだが……。





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