一
息を吐くように感情を追い出せたら。
呼吸がごく自然な動作であるように、思考の波は留めることはできない。
仮に、できたとして、それは精神の死と等しい。
夢を見ていた。
先を知っているような、何らかの操作性を感じる夢。
自分でストーリー進行しているはずなのに、主導権は自分にない。
脚本も制作秘話も不詳のまま。
ただ、点けっ放しのテレビに映る自分を見ているような奇妙な感覚なのに、そこには感情が存在していた。
登場人物は簡単だ。
でも、自分以外はそれほど重要じゃない。
常にシーンは移り変わっていて、人も定まらないから。
そして、危険が迫ったところで目が覚めた。
自分にも防衛本能があったことに気づく。
いや、本当にこれは夢なのか?
曖昧だが、もしかしたら今、夢の続きを生きてるのかもしれない。
吸うことは、取り込む作業だ。
それが水であっても糧であっても、呼吸の一環であろうと、生存活動において必要な行為には違いない。
では、それが毒だったら?
まさしくぼくらは世界の毒だ。
この比喩に乗せてみたなら、きみたちは、糧。
常に終わらない日常の始まり。
緩やかに穏やかに繰り返される。
それに慣れると、物事が単調に思え、全てに意味を感じなくなる。
それを変えた出来事。
物語はいつも変化から始まる。