第6話 娘婿さんは、誠実な青年でした
「お待ち下さい!!」
いきなり蹴破られたドアから大声で初めて見る男が叫んだ。随分と美青年だが、初めて見る。
「誰だ、貴様は?」
「御初にお目にかかります。私、このエルドラージの隣地の領主を努めておりますロヴァルと申します。エドワード殿の事は、義父上でありますアルベルト辺境伯から聞き及んでおります。とりあえず、その剣を降ろしていただけませんか?」
「なるほど。貴方が、仮にアルベルト様の娘婿殿だとする。ただ、それとこれとは関係ないでしょう?この者は、私を侮辱した平民。他領の領主であられる、ロヴァル殿と関係はないでしょう?」
「確かに関係はないですが、貴方の秘書官の方に貴方を止めるように頼まれましてな。」
「スーランに?」
「以前にも同じようなことがあったと聞きます。貴方は、この街を救いに来られた方だ。そんな方を無闇に人殺しにするわけにはいかないのです。彼にもそのように言われましてね。」
「では、この者は、どうするのです?ただでは、済まされませんよ。どうせ、この者が、海賊を雇って、商船を襲わせているのでしょう?」
「な…何を根拠にそんな!?」
「たかが、領主代理ごときが、どうして辺境伯と同じ大きさの屋敷を構えられるのだ?相当な資金がなければできないであろう?となれば、答えは一つ。海賊の親玉がこいつってことだ。」
「なるほど…。まぁ、とにかくこの者は、我らが処断致します。」
「本当ですか?私に嘘はつけませんよ?」
「心配ご無用。私も査問官を前にして、嘘は申しません。この者の余罪、海賊とのつながりを特定した後、全ての罪を街の住民に伝えたあとで、磔にいたします。」
「まぁ、それならば構いませんが。私も陛下からの依頼に集中したいですので、このようなことが無いようにお願いいたします。」
俺は、そういうと、次は造船所へ向かった。面倒事には巻き込まれたが、無闇矢鱈に娘婿さんに会いに行かずに住んだのだから、まぁ、良しとしよう。それに、変な期待もされていないようだし、随分と誠実な青年のようだった。