新しい掃除機を買おうとしてみる
結論からいうと、新しい掃除機は買えていない。
引っ越しなど軽々しく出来ないので別の方法である。
わたしの部屋にある掃除機は3000円程度の安物。
いつも部屋の隅で行儀よく立っており、使用されることはあまりない。
なぜなら、五月蝿いのだ。重いのだ。コードが邪魔なのだ。
吸引力も非力である。カーペットの隅などには頑張らなければ歯が立たない。
最新の掃除機について調べてみると素晴らしいではないか。
静音抜群。軽量万歳。コードも存在しない。
これは掃除も楽しくなり、部屋が綺麗になり、気分が向上し、今後薔薇色の人生になるだろう。
丁寧に生きることに必要に違いない。
近くの家電量販店に向かってみる。
掃除機コーナーなんて初めてじっくり見てみたよ。そして驚いた。
70000円?
40000円?
吸引力の変わらないただ一つのダイソンの最上位モデルは7万から10万円程度。
軽量万歳Panasonicのスマートな掃除機は4万円程度。
モーターの日立(初めてきいたよ)のかっちょいい掃除機も4万円程度。
財布の中を見てみる。
2万円と小銭が少し。
お金を吸引するの間違いではないだろうか。
先程から店員がちらりちらりとこちらを見てくる。
母の日のプレゼントだと勘違いをしているのだろう。
「コードレスがよろしかったでしょうか」店員が話しかけてきた。
「いま考えてるんで」
「・・・」
コードレスがよろしかったでしょうかって話しかけ方ってなんだよ!他になんかあったろ!
ここらへんにあるの全部コードレスだよ!見てわかんだろ!しかもコードほしい人なんていないだろ!
コードがある掃除機のところぶらぶらしてたら「コードありがよろしかったでしょうか」って話しかけるのか!
みたいなことをつらつら思いながら、わたしはパンフレットを持ち、店員から逃げ出した。
もちろんもっと安いのもある。
しかし、形がよろしくない。ずんぐりとしている。色も好みでない。
一旦諦めて、ゴミ箱を購入しに100円ショップに行く。
そう、ゴミ箱がないのだ。
ゴミ袋をそのまま使用してゴミ箱代わりにしていた。しかし、これはゴミ袋が無いときどんどんゴミが溜まっていく。
あまりいいものは無いのではないかと感じながら探してみると、意外と良いものがあった。
黒い。ただ黒くなく少しマットな材質である。角ばっているが頂点は丸みを帯びていて柔らかい雰囲気のある良いゴミ箱である。
良いものが安く手に入ったとニコニコでレジに向かおうとしたとき、目についた。
コロコロだ。
しかもこれは取っ手を延ばすことができ、立ちながらコロコロすることができる。
革命ではないか。
そもそも7畳程度の部屋に最新式の掃除機が必要なのか?
コロコロと雑巾、ほうきがあり、たまに非力でも掃除機をかければ十分なのではないか?
と考えたのは帰ってからのことだ。
非効率ではあるが、丁寧な気がする。
このコロコロは良い。
這いつくばる必要なくコロコロできる。
コロコロ。
コロコロ。
ビリ!
黒いゴミ箱へ捨てる。
コロコロ。
コロコロ。
ビリ!
マットゴミ箱くんへ捨てる。
最初なのでたくさんのコロコロをした。
コロコロ。
コロコロ。
楽で楽しいので30分くらい隅々までコロコロをした。
コロコロ。
コロコロ。
なるほど。これはこれでなんだか丁寧に生きているような気もしないでもない。