しごと
時々変な映像が脳裏を駆け巡る。その瞬間脳がシャットダウンしたように動かなくなる。簡単に言えばフリーズに近い現象なのだろう。どうしてだろうか、懐かしいような気がするのだが、思い出せない。まるで記憶そのものにかぎがかかっているみたいだ。思い出してはいけない、思い出したら戻れなくなると、複数の自分が纏わり付きながら囁いてくる。その中で異様な風貌を漂わせる、自分がいた。
「初めまして、ガイア」
「……君は?」
「僕もガイアさ。同じ名前だよ」
「……」
認めたくない現実が私の精神を喰らっていく。逃げようとしても自分の微笑みから逃れない事を知るのだ。何と答えていいのか、言葉にしていいのか分からない。唯一の方法として何も話さない選択肢しか残されていないのだ。実際は話さないではなくて話せないのだけどね。
「逃げても無駄だよ。ガイア。貴方は僕達を吸収して、僕達を作り上げたのだから。凄いね、これだけの魂を喰らって、自分の分身に変換するなんて、誰にも出来ないよ、こんな芸当」
あはは、と愉快そうに笑う自分は私の知らない、知るよしもない情報を少しずつ言葉としてプレゼントしてくる。正直、欲しくないプレゼントだ。こんなもの、もらっても、私には何も出来ない。取り込んだ?喰らった?自分が何を言っているのか分からない。
「ふうん。理解出来ずに無意識にしてたんだ。やばいね、じゃあ『次の作業』も分かってないって事か」
(仕事とは何だのだ?何が言いたい?)
「まぁまぁ、いいよ。自分が教育してホンモノにしてあげるよ」
理解しがたいことばかり一人で話して、完結させる『もう一人の自分』自分が言うには『割れた鏡』の数により、死した魂を取り込んでいると説明をしてきた。そして自分の栄養素として分身のように操る事が出来るらしい。軽く説明を聞いただけでは、この状況がどうなっているのか分からない。パニックを起こしているのかもしれない。そんな私に追い打ちをかけるように、呟くのは優しい言葉でもあり、救いの言葉でもあったのだ。
「そんなに深く考えなくていいよ、難しく考えると生きた人間はパンクしやすいから。気を付けて。そうだなー、簡単に言うとガイア、貴方は『潮来』と同じような事が出来る、特殊な存在なんだよ?」
淡々と話す自分の言葉から耳を離せない、私がいる……。