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魔王の料理番


寝てたようだ、魔王の策略にはまりまるで即堕ち二コマのような醜態を晒してしまったが。俺はもう魔王なんかに負けない!

テンプレのようなセリフを吐きつつここは何の部屋だろうかと考える。天蓋付きのベットなんて初めて見たぞ俺。





「お、起きたか、もう少しなら寝てても良いぞ」




うおっ、びっくりした。最初ほど驚きはしないものの魔王の顔は少しトラウマ気味のようだ。ロリロリしいがこんなんでも俺の両腕を吹き飛ばすほどの力を持っているからな。




「いえ、もう大丈夫です。すいません寝てしまって」




「よい、それよりもよく寝られたかの?」




「はい、かつてないほどに」




「それは良かった」




凄い優しい笑顔、まるで母親のようだ。何だこの人いきなり豹変して...最初の馬鹿っぽい感じはどこいった?あれぐらいが一番扱いやすかったんだけど。




「それじゃあ改めてこの王宮を案内したいんじゃが、ええかの?」




「あ、はい。ありがとうございます」




そう言うと俺の手を取り、廊下に出る。物凄く長くて広い。鬼ごっこが出来そうだ、楽しそう。





「ここはお主の部屋じゃ、好きに使え」





鍵を渡される、えっマジですか。あんな広い部屋が個人で使えるの!?どんだけホワイト企業なの...?





「なんで、という顔をしているな」





「え、まあそうですね」




「この王宮は部屋数が凄まじく多い、じゃが住む人間はほぼいなくての、皆自分の家から職場に来ておるのじゃ、じゃからめちゃくちゃ部屋があまっとる。妾もここに住んどるんじゃが、わりと寂しくてのう、妾の部屋に近い大部屋をスバルに与えたという訳じゃ」




「な、なるほど」




魔王が寂しいなんて笑えないな…使用人よびだしゃいいのに...ていうか俺の名前呼んだかこの人、教えてないのに。




「あの...何で名前を...」




「ん?魔法で見たからじゃが?」




「あぁ...なるほど...」





何勝手に見てんだこのクソアマ!やっぱ信用なんねーよ!信用しかけてたよ!あぶねえ!

魔法か...やっぱりこの世界には魔法があるということが明確になったな。多分俺の両腕を吹き飛ばしたのも魔法だろう。あと、会話で出てきたあの『魔力』っていうのがおそらく関係してくるのだろうな。




「俺、実は魔法使えないんですけど…」




「それは...抵抗できないように教えられなかったんじゃな?」




あぁ...そういえば俺はアイツら二人の奴隷の可哀想な魔族って設定だったな。




「えぇ...何一つ主人に抵抗できるような技術は教えられませんでした…」




「畜生共め...!」




魔王が怒りによって何か変なオーラを発し始める。やめて、冷や汗止まらないから。




「あ!でもその代わり料理や家事など色々雑事はできます!」




「それは...頼もしいな、なにぶん武闘派な奴らが多いからの、助かる」




少し同情的な目で見てくるが我慢だ。そして一人暮らしで培った自炊&家事スキルは無駄じゃなかった…純粋に嬉しいな。





「魔法は妾が教えよう、覚えておけば自衛ができるからな!」




「はい!ありがとうございます!」




安全圏の料理場で働き、お金を貯めつつ暇なときは魔法を教わる。なかなか悪くないんじゃないか?復讐するために実力はつけといた方が良いだろう、向こうも勇者っぽく鍛錬とかしてくるだろうしな。





「では料理場に案内するぞ」





てくてくと魔王が歩いていく、普通にしてれば角が生えただけの可愛い幼女なのになぁ…






料理場に着いた、おおむね現代のキッチンと変わらないようだ。ただ、火を使うコンロがガスではないことがひと目でわかる。あれはなんだ?石のようなものを電池のようにはめ込んでいるが...






「あっ魔王様!お疲れ様であります!」





「おう、貴様もな」





「もったいないお言葉であります!」




女の子の声だ、そう思い声のする方を見ると、

ウサギだった。それは紛うことなきウサギの耳だった。可愛い。どうやらこの世界にはしっかりと獣人がいるようだ。感動だな。




「今日は新入りを紹介するぞ!」




「新入り...で、ありますか?」




「スバル、自己紹介じゃ」




「あっ、どうも!スバルといいます!これからここで働かせていただきます、どうかよろしくお願いします!」




「え、この人めちゃくちゃ高位の魔族でありますよ!?角が立派で目が赤くて白い髪でありますよ!?こんなところで働かせていいのですか!?」




「そんなの妾も一緒じゃ、ええからしっかり指導してやれ」




「」




言葉も出ないといった様子のウサギさん(仮名)、そこまで言うほどの魔族なんだろうか?まあ高位なことに越したことはないだろう。




「ま、まあいいであります、ですが!ここで働くからにはしっかりと真面目に働いてもらうでありますからな!」





「は、はい!頑張ります!あの、ところでお名前は...」





「あぁ、そういえばまだだったであります!拙者の名前はモミジと申します!よろしくであります!」




「はい!よろしくお願いします!」




ええやん、ええやん!ウサギ耳ええやん!突発的に関西弁が出てしまったが、癒し枠の登場なのだ、ご容赦ください。話し方は少し特徴があるが、ナイスバディに黒髪ロングにウサギ耳!最高だ!あっ、名前といえば




「あの、魔王様」





「なんじゃ?」





「魔王様の名前って…」





「あ、そういえば言ってなかったかのう、妾の名前はルシファーじゃ、男っぽい名前じゃが妾は気に入っておるぞ」





「か、かっこいい名前ですね…」





る、ルシファーじゃねえか!現代日本で手垢がつきまくるほど創作に使われてるあの方じゃねえか!そりゃ強いわ!





「まだ料理人はおるが一応トップはこやつじゃ、しっかり指示を聞くんじゃぞ?」




「えらくまともありますね、魔王様」




「な、何がじゃ?」





「いえ、いつもはつまみ食い常習犯としてベルさんに注意されてるというのに」




「わ〜!!やめろ〜!!」




やっぱりこいつ猫被ってやがった!めちゃくちゃ厳格な感じを演出してた!まあ最初の出会いのときからわりと馬鹿っぽいとは思ってたけど。




「まあいい傾向であります、戦いのときは人が変わったかの如く厳格になるというのにいつもは」





「この話はやめじゃ!顔合わせは終わったからの!妾は政務に戻る!スバルはモミジに説明を受けておけ、何かあったら呼ぶのじゃぞ?」





「は、はい!」





「それじゃあの」




そう言って去っていく魔王、残される俺達。まあとりあえずモミジさんに話を聞こう。





「まずは道具の使い方からですかね」





「あっ、はい!」





こちらでも道具はほとんど同じだった、あのコンロもすぐになれるだろう。魔石というものを使って魔法の力を使っているらしい。便利だなぁ。




「手際いいでありますな、何かやってたので?」





「ええ、奴隷だったので」




設定大事だからね、外堀もしっかり管理しとくタイプなんだよ俺。





「それは...すまないことを聞いたであります」





「別に気にしなくてもいいですよ、ただ少しだけ不安ですね、今幸せになり過ぎててまた最悪に落ちないか」




「だ、大丈夫であります!この厨房を共にするものは皆仲間!拙者の目が黒いうちは誰にも手出しさせません!」




「モミジさん...ありがとうございます」





「ふふん!」




あ〜可愛い〜、耳ぴょんぴょんしてる〜。癒しだな、魔王が強すぎる存在だっただけにすごく癒される。




「とりあえず明日の下準備だけするであります」




「はい!」




スープや色々な野菜を切ったりなど現代日本でも日常的にしていたことをする。楽しいなぁ。




「今日はこれが終わったらもう帰っていいであります、明日の朝にまたここに集まって貰って皆の朝ごはんを作るであります、拙者以外の料理人も居るでありますが、とりあえず明日は拙者のそばでどんな仕事か見てて欲しいであります」



「わかりました!」



そう言われ、全ての下準備を終え、部屋に戻る。何やら机の上にメモが置いてある、なになに?




『今日は疲れておるようだから魔法の授業は明日以降にしよう、身体を壊さぬようしっかり睡眠をとるのじゃぞ!』





文見ただけで誰か分かるな、まあ心配してくれてるようだ。こんなこと言われたのはいつ以来だろうか。

母親にはよく言われてた記憶がある、朧気な記憶の中に姉と一緒になって注意されてる自分が映る。

少しだけ心が温かくなった気がした。

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