冒険者と出会ってみる
はぁ、森の異変調査か……だりーな。
こんなもん俺たちに依頼しなくても良いんじゃねーかな?はぁ、本当メンドクサイ。
「なぁ?何か変わったことは?」
御者台から馬車の中に居る仲間の女へ声を掛ける。
「まだ何もないぞ?さっき聞いてから数分と経っていないのに、なにかあるわけ無いだろう。」
「はいはい、そうだな、すまんかったな。」
ああ、メンドクサイ……
「おい!」
あいつから声を掛けてくるなんて珍しいな。
「あ?なんだ?」
俺は生返事気味に声を返す
「血の匂いだ、魔物と…人の血の臭い……急げ!誰が襲われてるぞ!」
あぁ!?マジかよ!
「飛ばすぞ!舌噛むんじゃねぇぞ!」
「ああ、心配ない!さっさと行け!このまま真っ直ぐだ!」
俺は更に速く進むべく鞭を打つ。
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「いって!」
俺は頭への突然の衝撃で目が覚める。
あー?何だこの天井……つーか動いてる?
「よぉ、ようやく目が覚めたか兄ちゃん」
声がした方を見ると見知らぬ男が此方に向かって座っている。
「あー、なんだ…そうそう、肩の傷は大丈夫か?」
肩の傷…そう言えば俺、ウルフに襲われて気を失って……死んだんじゃないのか?いや、ここに居るってことは生きてるのか。
とりあえず肩の傷を見てみるか……。
「あれ?確かここ…思いっきり喰い千切られてたよな。」
左肩を見ると傷もなく服すら破れていない
「よしよし、効いたか。たけーポーション使った甲斐があったな。」
男がうんうんと首を縦に振る
「ポーション?もしかして…何か大切なものを?」
「いんや?まぁ少し値は張るヤツだが、人命に比べれば安いもんだ。」
「ありがとうございます。お返しはどうすれば…」
「お返し?んなもんいらねぇよ、こう見えてもなかなか稼いでるからな」
「人望は全く稼げてないがな」
と、男と話して居ると奥から声が聞こえる、女性の声だ。
「はいはい、そーだな。……そういや名前、言ってなかったな。俺は冒険者のセレス フレンツェ、であっちが「ヴァルシュ ファーティア」だそうだ。」
ほぅ、冒険者ですか、そうですか。やっぱり異世界には冒険者は付き物ですか。
「ああ、どうも、俺は上峰 聡良です。」
「カミミネ…聞き慣れない名前だな、それにその服装といい、お前…転移者か?」
ああ、服装?…そういえばあんまり気にしてなかったけど、何故か学ラン着てるんだよな。なんで学ランチョイスなのかこれがわからない。
というか転移者って、俺以外にもあっちの世界の人間が居るのか。
「厳密にいえば転移者とは少し違うんですが…まぁそんなものですね。」
「やっぱりか、でもなんであんなところに…」
セレスと話していると奥からまた声が聞こえる。
「おい、いつまで私に御者をさせるつもりだ、さっさと代われ」
「はいはい、しゃーねーな」
セレスは無愛想に返事をしながら声のした方へ向かう。
そして一人の女性が、ファーティアが入れ替わりで此方にやって来る。
んー?なーんか頭に生えてるような…あれ、耳?ケモミミ?oh、マジでケモミミじゃん。ファンタジーじゃん。
「ん?どうした?私の顔になにか…いや、頭……これか?」
と、自分の耳を指差す。
あ?気付かれちゃいました?
「ああ、すみません。俺にとってはなかなか…いえ、かなり珍しい物でして。不快にさせてしまったのなら申し訳ありません。」
「別に怒ってはいないぞ、ただ…その…あれだ、あまり見られるのには慣れていなくてな。その、恥ずかしいんだ。」
「ああ、そうなんですか。すみません。」
…というか、ケモミミのインパクトが強すぎてスルーしてたが、腕もなかなかケモいんだな。モフモフで、時たま見えるにくきうが柔らかそうだ。尻尾もうにょうにょ動いてるし…。
「確か、転移者…なんだな。さっきから珍しそうに私の事を見ているが、お前の世界には私みたいな者は居ないのか?」
「…居ると言えば居るんですが、偽物?理想?フィクション?そんな感じですね。」
「偽物?フィクション?…んー、さっぱりわからんな。そう言えばお前が倒れていた場所のウルフ、あれはお前がやったのか?」
「ウルフですか、俺じゃ無いですね。そのときは多分気絶していたはずなので。」
「そうか、なら何か知らないか?」
「うー、たしか、気を失う前に女の子の声が聞こえましたね。オートマティズムがうんたらかんたらって。」
「女の子?……このメイスに見覚えはあるか?」
ファーティアが奥から見覚えのある血に濡れたメイスを取り出す。
「あー、それは俺のですね。」
「お前のなのか、ならこいつは返しておこう。」
そう言うとファーティアは俺にメイスを渡す。
そして渡した後、何か、考え込むように下を向く。
「本当に何も知らないんだな?」
最後に、念を押すように俺に問う。
「はい、最初にも言ったように俺は気を失っていたので。」
俺は正直に答える。
そして聞くことが無くなったのか、ファーティアがブツブツと何かを呟いていると、御者からセレスの声が聞こえる。
「おい、街が見えてきたぞ。さっさと準備しておけよ。」
どうやらもうすぐ街に着くらしい。