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時を超えし者  作者: 高遠 真也
第一章(仮)
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第四話 情報

島崎警視に失礼な態度を取ってしまった大空誠一は後悔の中、眠りという深淵に彷徨ったのである。

 翌日、自分が目覚めたのは朝の5時49分だった。それにしても未来のベッドというのは元いた世界よりフカフカで気持ちよくて、こうもすっかり眠りにつけるとはな。そういえば電気は消えたのか。それなら、この快眠が続きそうだ。もう一眠りしたいな、惰眠に狩られようとした時にドアが開いた。ドアから入ってきたのはロボットだった。それは円柱状の物に半球が載っている形だった。


「僕ガ、アナタヲ助ケルコトトナリマシタ。ヨロシクオ願イシマス。」


 なかなか礼儀の良い方だなぁと思った。機会独特のイントネーションはあれど、仲良くなれそうだ。


「助けるってどんなことをするのだ?」

「簡単ニ言エバ、身ノ回リノ世話デス。」

「って、機械が喋っている!?」


 そんな古典的な時間差ツッコミをしたが、ロボットっは笑ってくれなかった。


「申シ遅レマシタ。私ノ名前ハ、アナタニ決メテモライマス。」

「えっと…」


 5分くらい熟慮する。えっと…が反応しなかったのは幸いか。ゲームにおいても主人公の名前を決めるのに1時間かかるクチである。


「良し、君の名前はマサヒロだ。」

「アリガトウ。大空誠一サン。」


 嬉しかったのか、マサヒロは踊るようにクルクル回っている。


「ああ、それと、大空誠一さんなんて他人行儀な呼び方はやめて、呼びやすい名前で良いよ。」


 今の自分にはこのマサヒロしか信用できる相手しかないと思っていたからだ。それ故に、早く親睦を深める必要がある。


「デハ、ソラサン。ト、呼バセテイタダキマス。」

「良い呼び方だ。ありがとう。」

「デハ、朝ゴハンはドウシマスカ?」


 そういや、もうそんな時間だったな。窓から見える外の景色からは街全体が動き始めようとしていた。こんな朝早くから、人が動き始めるのか…この国の人は勤勉だなぁ。そんな事を思いながら朝ごはんをおまかせで頼んだ。


 ちょっと、この国や世界の事を知る必要がある。これまでは拘束されていたせいで調べることができなかった上に、スマートフォンも圏外となっていたのでそれはすぐにでもしなければならないことだった。マサヒロにどんな機能があるのか分からんが良い友人になってくれるであろう。昨日のことから考えると、この国は日本に似ている。そしてジーメイル国…これはあくまで推測だが、そういう。政治体制や法律なども知る必要がある。他には娯楽だ。時間を潰す必要もある。この世界になぜ来たのか分からんが、ここで生きていくしかなさそうだ。帰る方法もないと言ってよさそうだし。そんな事を呟いていると天枷巡査部長が入って来た。何やら重要そうな書類を抱えている。


「こんな朝早くからすみません。」

「いえいえ、お構いなく、あの時助けられた恩がありますので気にしないでください。」

「では、失礼します。」


 そういうと、天枷巡査部長はその重要そうな書類を自分に見せた。


「まず、こちらをご覧ください。こちらにはあなたの基本的なことが書かれております。」


 読むように促したので、じっくりと黙読した。そこには恐るべき情報が載っていたのだ。


『別の並行世界よりの転移者であることが確認された。そして同じ時間軸の場合、未来人でもある。しかし、技術的には過去の文明を持った世界からである。』


 その文章を見ただけで、自分の顔が青ざめていくのがよくわかった。並行世界…未来人…過去の文明…もう卒倒しても良いかな?しかし、今卒倒を起こしては堂々巡りになるので、踏ん張る。


「これはどういうことですか?」

「一つずつ説明させて頂きます。が、この結果を持ってきた機関の者を入れても良いでしょうか?」

「はい、構いませんが。」


 それを聞き扉の向こうに合図を出した。それから数秒して、白衣姿の方が三人入ってきた。えぇ…こんな所で実験とかしないよな?その考えはすぐに杞憂となった。


「私は国家特別技術研究所の佐原と申します。よろしくお願いします。」


 佐原という男はそう名乗り、こちらにお辞儀をした。


「では、まず大空誠一さんの今の状況においてご説明させて頂きます。が、その資料を読んで不明な点があった所から説明してもよろしいでしょうか?」

「ええ、お願いします。では、まず『並行世界よりの転移者』という点からご説明願いたいのですが。』


 この話で少しでも情報を得る必要がある。故に色々と質問をしなければならない。


「承知しました。あなたは並行世界から転移したということにつきましては、こちらの特技研による解析により判明しました。」

「待ってください。特技研が国家特別技術研究所というのはわかりましたが、そんなにすぐに結果が出るものなのですか?」

「簡単な結果ならすぐにでますが詳細な結果についてはしばらく時間がかかるものでして。」

「ということは、解析までにあと一週間くらい必要だということなのか?」


 その言葉を聞いて佐原はニヤリとする。


「詳細な結果ならもう出ていますよ。」


 この世界の技術は恐ろしい。元の世界ではどのような技術を持ってしてもこのようなことは起きない。ここでは見るもの全てが新鮮だ。海外旅行に行く人ってこんな感じなんだろうなぁ。


「ではまず、あなたは並行世界から転移した、それも特殊な事例です。」

「と言うと、他にも転移者がいるのですか?」


 他に転移者がいるなら心強い。そんな希望もすぐに打ち砕かれることになる。


「いえ、転移者はあなたが初めてです。一応理論上では転移は可能ですが、本当に転移者が現れるとは大変驚きです。」

「しかし、なぜ転移したのだ?」

「その理由があちらの世界での死因ですね。」

「死因…だと…」


 自分は必死に海馬に眠る記憶を探し出した。パンドラの箱に入っている希望を見つけるようにして。


「雷…ですか?」

「ええ、その通りです。」

「その影響でこの世界に転移したと?」

「そうなりますね。あと、何か不思議な現象が起きませんでしたか?」


 白髪の50代半ばと見えるその男は優しく、そして諭すように自分に言った。


「そういえば、体から電気が走る時がある…ことでしょうか。」

「なら、話は早い。それは偶然の産物なんだよ。」

「と、仰りますと?」

「端的にいえば君は電気を操る力を持ったんだよ。」

「え?すみませんもう一度お願いします。」

「君は電気を操る力を持ったんだよ。」


 二回聞いても同じことだ。なら三度目で変わることはないだろう。


「だけど、その力は自分の意図しない時に起こるとても厄介なものなんですよ。」

「電気を操る力は持ったがまだ制御はできない…こう理解すべきでしょうか?」

「理解が早くて助かる。」


 電気を操る力を持っても何に使うのかさっぱり見当もつかない。


「では、次に疑問点などないかな?」

「未来人、過去の文明というのを同時説明をお願いします。」


 これまでの情報を合わせるにあたり、未来人と過去の文明は合致する部分がある。


「まずあなたは未来人です。それも時間軸的に見ると。だが、技術的な観点から見るとあなたは過去人となる。」

「…、いまひとつ話がよく分からない。少し噛み砕いて説明してもらうと助かります。」


 自分の見当はおおよそはついているが、これも情報を集めるため。そう信じて放った言葉。そして何やら5センチ四方の機械を取り出した。佐原さんはそれを横のシートらしきものにかざした。その直後、シートはそれに呼応するように始動した。そこからは文字が浮かび上がった。


「では、こちらをご覧ください。この世界をAとし、あなたがいた世界をBと仮定します。」


 何やらその話し方的には数学の証明問題に聞こえてしまう。


「そして宇宙が誕生した時をOとしよう。これからいう数字は架空だと前もって言っておこう。OからAまでは1000離れているのに対して、OからBまでは2000も離れているんだ。」

「それは理解できましたが、なぜそちらの方が技術が進んでいるのですか?」

「技術革新なんて偶然の産物にしかすぎない。技術革新がこちらの方が早かった。そして長い目で見るとこの世界が、そちらの世界よりも進んでいるということだ。」


 自分は愕然とした。元いた世界より高度な文明をもつ世界はないと思っていたからだ。しかし、それと同時に自分の力量でどこまでこの世界に爪痕を残せるのかも知りたくなった。そして、佐原さんは礼をして外に出た。そして天枷さんが暫くはこの部屋で待機してくれということを自分に伝えた。


 黒髪のポニーテールを揺らしながらヒールの音を立ててこの部屋から去っていった。

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