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時を超えし者  作者: 高遠 真也
第一章(仮)
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第二話 危機

前話で治安維持隊と遭遇した大空誠一、果たしてここに生きていく道はあるのだろうか

 気がついたら自分は署の応接室のソファに座っていた。それは大衆が持てるような代物でない素材を使っているであろうことが推測された。目の前には紅茶が八分位入っているティーカップが出された。


「君はこの国じゃないところから来た。それは確かなのか?」


 30代のエリートらしき人に尋問される。


「え、なんか自分の置かれた状況が分からなくて、自分が生きているのか、死んでいるのかすらよく分からないんですよ。」

「質問には的確な答えを言って欲しいが、村松巡査から聞いた通りだとすると、そう回答をするのも仕方のないことだろう。」


 その男はため息をつく。


「申し遅れたが私は島崎玲司という。階級は警視だ。」


 開いた口が塞がらなかった。いきなり警視の人来るの?え?もっと巡査部長とかさ、そこら辺の人じゃないの?頭がショートしそうになった。それを見かねたのか島崎警視から声をかけられた。


「何か身分証なんかないのか?」

「学生証ならあります。」

「なら話は早い。それをこちらの検索にかけてみる。」

「ありがとうございます。一つ聞いてもよろしいですか?」

「ん?何かな?」

「自分はどのような身分…処遇なんでしょうか?」

「それはだな…今の所重要人物だ。それも世界を揺るがす。」


 重要人物…世界を揺るがす…もう自分帰ってもいいかな?でも、帰る場所なんてあるのかな…あんな不良にまた絡まれるのがオチだろうし。お腹に穴が開きそうなくらい痛い…そんなことを考えていたが、一つの優越感にも浸っていた。ついに17年の人生を歩んで来た自分に千載一遇の好機が訪れたのだ。我慢の上に我慢を重ねてきた甲斐があったというものだ。でもそんな重要人物だったら暗殺されるんだろうなぁ。そんなことを考えているうちに、これは死後行われる儀式でドッキリがその中の一つのにあるのだろうと。


「すみません、もう一つ聞いてもよろしいですか?」

「なんだい?」

「村松巡査ってどちらにいます?」

「そんなことを聞いてどうするんだい?」

「何も話してないと思うのに先ほど…」


 名前が出てこなかったが首にかけられた名札を見て名前を思い出した。


「島崎警視が村松巡査がどうのこうのと言っていたので少し気になったので。」

「村松巡査と話していないのか?」

「記憶にないです。」

「あんな状態じゃ無理もないかぁ、村松巡査、ちょっとこっちにきて」


 島崎警視が手で招くと同時に村松巡査がこっちにきた。見た感じ彼は好青年といった感じだろう。俺と違ってモテるんだろうなぁ。


「島崎警視、只今来ました。」

「うむ、ちょっと大空さんに車内でのことを伝えてくれないか?」

「はい、只今。」


 そういうと彼は警察手帳を出して読み上げた。


「15時28分に任意同行に応じる。15時34分に車が空を飛んでいると発する。15時36分より急に泣き出す。」

「うむ、ありがとう。つまり、大空さんあなたは急に泣き出したんですよ。」


 え?警察…治安維持隊の追撃ってこんな感じなの?拍子抜けだ。いや、俺はあくまで重要人物だ、追撃はまずないと見ていいだろう。そもそも、こちらからお願いしたことだから大丈夫だろう。


「えっと、それだけですか?」

「それだけではない、自分は死人だ。とかも言ってる」


 あ…これはどうしようもない。精神異常者として隔離されるな。それならまだいい、この国の法律次第では人体実験の材料にされるのではないのか?だとしたら俺はどうすれば良い…先ほどまで思っていた構造が全て崩れ落ちるのが分かってきた。そして、引導を渡すように島崎警視からこう言われた。


「そうだ、重要人物だと言ったな?あの件は嘘だ」


 周りが暗くなった、いや、視界から色が飛んだと言った方が正確なのだろうか。しかし、まんまと嵌められた。自分の頭の回転が遅かったせいなのか自分を責める。


「え?じゃあ自分はどうなるんですか!?」

「それをあなたが知る必要はない」


 冷たい手錠が手を拘束しようとする。その時あの感覚が湧き上がってきた。電気が体に纏ったのである。


「な!なんだ!これは!!」


 突然のことに島崎警視は尻餅をつく。


「早くこいつを検挙しろ!」


 もうダメだな。これは偶然なのか力なのか、それを知る術は俺にはない。


「待ってください!」


 後ろの方で女性の声をした。振り向くと何やら資料を持っていた。


「なぜ待つ必要がある!公務執行妨害だろ!」

「その人は本当に重要人物です!」


 その瞬間場が凍りつくのが分かった。こんな状況においてそんな爆弾を投下する方もする方である。


「これを見てください!」

「なんだこの資料は。」


 そう、島崎警視が言ってから数秒が経つ。


「なんだ…これは…」


 島崎警視が膝から崩れ落ちた。そして自分の前に来て土下座したのだ。


「大空誠一さん!誠に申し訳ございませんでした!!」

「えっと、これはどういう状況なのですか?それと顔を上げて頂かないとこちらが困ります…」

「こちらの資料をご覧ください…」


 資料を手が震えている島崎警視から受け取る。こうも人は態度が変わるのかぁ。なんだかなぁ。警視ともあろうお方がこんなんでこの国の治安は大丈夫なのだろうか?手元の資料を読み進めていくと驚きの事実が書かれてあった。


「大空誠一は未来人であり異世界人であることが確認された。」


 え?おいおいおい、嘘だろそんなことがあってたまるかよ。仮にだぞ、自分が未来人だとしてこの周りの方が技術が進んでいるのはどういうことなんだ!?俺が過去人ならまだ話は分かる。それがよりによって未来人だと!


「あの、これはどういうことなんでしょうか?」

「それについては私から話します。」


 先ほど資料を持っていた方だ。


「始めに、私は天枷琴音、巡査部長。」


 20代後半に見えるその女性は続いてこう話す。


「大空誠一さん。これから話すことはとても重要なことです。」


 そりゃ、さっき逮捕されそうになったもん。生きるか野垂れ死ぬかの選択をしろと言われるかもしれない。


「大空誠一さん、あなたはどこから来たの?そして、どの世界軸から?」


 もうダメだ、視界が暗転し自分はその場に倒れこんだ。

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