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時を超えし者  作者: 高遠 真也
第一章(仮)
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第二十五話 応対

みなさん、二週間ぶりです。

遅れて申し訳ございませんでした(;_;)

 その声は決して怒っている時に発するようなモノではないが、あまりの威圧感に萎縮してしまう。それに気がついたのか信濃大佐はこちらに近づいてくる。それでも微動だにとしない自分、いや動けなかった。


「上林中尉に何か言われたのか?」


 息を吸う。それと同時に周りの空気の匂いも感じた。


「実はですね…」


 自分のこれまでにあったことをできる限り信濃大佐に伝えた。その間は神妙な顔をして長い話を聞いてくれた。


「なるほど。ワンホールショットを会得したいのか。」


 自分は無言で頷く。


「確かにアレは練習だ。だが、それと同時に才能も必要だ。」


 信濃大佐も上林中尉と同じく練習は必要という考えを持っていた。しかし、異なる点があった。才能、それが信濃大佐がワンホールショットする際に求められることであった。確かにいくら練習しても不得手であれば必ずどこかで伸び悩む。それは万物すべてにおいて言えることである。信濃大佐はそういうことを言いたいのであろう。


 意識的に射撃場に置かれた一四式拳銃に目を移す。自分にとってこの拳銃は自分の身を守るための物であるが、いつしかそれは形骸化し、単に発砲したいという本音を隠す建前となっていた。事実、上林中尉に「練習だ。」と言われた時もそんなことを考えていた。一四式拳銃が黒く光ったのはそんな時だ。


「幸いにも、大空には才能がどちらかといえばある方に属する。これから練習したら並の兵士と同等の戦力にはなる。そういうことだ、今から練習するか?」

「ありがたいお言葉ですが流石に疲れてきたので今日はこれにて失礼します。」


 自分はそのように応答すると玄人はだしの回れ右をして扉の向こう側へと足を進める。しかし、扉が開いた途端に信濃大佐に呼び止められた。自分の一四式拳銃と、それをしまうホルスターを渡された。無論外出時に使うことを想定しているのでショルダーホルスターである。予備のマガジンも貰おうと思ったが、それは自衛の手段を越えるためにできないということで断念した。そもそも、このような素人に拳銃を所持させること自体おかしいと言えばおかしいことなのであるから、拳銃を所持できるだけ御の字ということである。決して外部の人には見せるなということであった。天枷さんや佐原さん、杉並さんに黒田さんなどには構わないが誰が盗み見ているかも分からないので、みだりに見せてはならないようにしようと決意する。


 ようやく話が終わったので今度こそ扉の向こう側へと歩いていった。廊下を突き進んで左に曲がると天枷さんが壁にもたれかかっていた。自分の存在に気づいたのであろうか、天枷さんの視線は自然と此方を覗いた。自分から見える景色からはどんな表情かは分からないがやや俯いているのははっきりとわかった。近寄ってみると何か言いたそうな感じであったがそれは上林中尉のように読み取ることができなかった。ゆっくりであったが此方に向かってきた。病人のようにゆっくりであったが希望を失わないように歩く姿であった。


「どうだった?訓練は?」

「いくら正常な男子校生と言えども体に応えますね。」


 そう語りながら自分の右肩を触った。その時に右手の景色が視界に入ったのか吸い込まれるように眺めていた。自分が拠点とする街を遠く眺めるのも悪くはない。寧ろ外からしか見ることのできない素晴らしい光景なので、噛み締めてじっと見つめる。ヘッドライトの河が空に流れては、街の活気は衰えることを知らない。この世界の優美なる儚さに触れたような気がした。この世界にも月と似た衛星はあるらしく、言うなれば月光に照らされているから、この世界の縮図とも取れるこの街に儚さがあるのだろう。


 自分はこのような一種の神秘的な物を感じ取ると同時に悩んでいたのだ。それは、このような状況で男女がいるということは必ず何かしらのアプローチを自分がしなければならない。だが、それのやり方が分からない以上様子を見るしかない。月はそれを見守るかのように二人を優しく照らし出していた。


「月が綺麗ですね…」


 ん?今自分の発言って…あ。思った事をすぐに言ってしまう悪い癖が出てしまったことに、気付いた時にはもう遅かった。いつの時代からこの言葉が告白の代名詞となったのであろうか。いつも冷静な天枷さんの透き通る顔を見たが、ほんの少しばかり朱色に染まっているのが月に照らされて浮かび上がっていた。どうにかこの状況を切り抜けられないか考えてみた。


「えっと、そろそろ暗くなってきましたし、署に戻っても構いませんか?」


 安全な言葉を選んだつもりだが、天枷さんは未だに顔がほんのり赤みがかっていた。だが、こちらをしっかりと見て頷いてくれた。エレベーターを使って降りている間、そこには妙な空気が張り詰めた。それは親潮と黒潮のように互いの思惑が交錯して生まれた空気であった。互いに無言で外の景色を眺めていたのだ。


 エレベーターを降りた後、天枷さんがこう聞いてきた。


「そういえば、星原さんは今日見ていないけど何かあった?」


 星原さんという単語が出てきたことに対して肩が僅かながら飛び跳ねた。今日の朝も同じような事を聞いた。


「あ…いえ、何もありません。」

「あら、そう。」


 あら、そうがアラサーに聞こえたのはおいておこう。車へと足を進める。車に乗り込み終わり、シートベルトをつけながら聞いた。


「天枷さん、これからどうしますか?」

「決まってるでしょ?署に戻るのよ。」


 そう答えたと同時に天枷さんは手動変速機を左手で操り始めた。助手席から見る天枷さんの横顔は走り屋そのものであった。電気自動車であるのにMT車であるのは珍しいのでじっと見つめていた。

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