第十五話 盟友
「じゃあ、俺もそろそろ動き出すか。」
そう周防は立ち上がり、メンバーに矢継ぎ早に指示を飛ばす。解析班と思われるメンバー数人が次々にインターネットで検索やら解析やらしていた。その使っている機械というのがよくある秘密結社の研究所においてあるやつそっくりなのである。大変興味深い代物なので近づいて触りたいのだが今はぐっとこらえる。暫くして解析班の方から声が聞こえた。
「なんだ!」
「星原瑞樹さんの場所が判明しました!」
「よし!良くやったァ!場所はどこだ!」
とりあえず場所が判明したのは良かった。しかし、周防の呼びかけに応じないのはなぜか?と思ったが解析班は口を開いた。
「周防さん…奴らのとこです。」
その一言で、場が凍りついた。奴らというのが悪魔であるかのように。
「周防さん、奴らとは一体なんでしょうか?」
「奴らとはな…コントリーティオだ。ヴァンクールと敵対関係だ。」
コントリーティオとは、ヴァンクールと敵対関係であるが故に度々小競り合いを起こしているらしい。ヴァンクールが義理と人情溢れるグループならば、コントリーティオは己の欲望のままに為すグループだ。
「というと、一体何が起こるんだ?」
「大きな衝突が起こるだろう。奴らが監禁しているならばここは義で助ける必要がある!」
その一言で周りから声が上がった。人によってはもう勝った雰囲気でいる。河越夜戦みたいだな。敵対勢力に殴り込みに行くのはそんなに楽しいことだろうか。あまりことを大きくせずに救出できたらいいのだが。そんなことを思っていたら入り口から治安維持隊の車両がきた。そこから降りてきたのは天枷さんだった。
「協力できるように手配してきた。」
周りから歓声が上がった。よし、これでいつでも行ける。そして数秒後に周防が言葉を発した。
「よし!三十分後に作戦会議を始める!それまで昼飯食っとけよ!」
作戦会議…いい響きだ。自分はその言葉に酔いしれていた。星原さんを助けることがやっとできるのだ。できることなら作戦立案に関わりたいが、部外者の口出しは良くないというのは古来より言い伝えれているからなぁ。そんなことを考えると天枷さんが近づいてきた。耳を貸してという合図を出したので耳を近づける。
「星原さんをこちらでも救出できるけど、そうするとヴァンクールと組んだということが示しにつかないということから、治安維持隊はこのことには手を出さない。」
この発言に驚いた。さっき協力できるように手配したということは嘘になる。こんなことが周防に知られた時には…目も当てられない。
「ヴァンクールの知らないところで救出されたとかはできないんですか?」
「実はこのグループにスパイが混ざっているらしいのよ。」
「つまり、この救出に直接関わってしまうことになるからできない…ということで良いんですか?」
「そうなるね。」
非常にまずいことになった。そのスパイが自分が転成者である事をコントリーティオに知られたら、今度は今回のように上手い事いく保証はない。最も、このヴァンクールに漏れてしまっている以上どうしようもないのだが。しかし、このままでは救出作戦が漏れてしまう。ならどうすれば良い?そのスパイを拘束すれば良いのか?だが、不良グループのスパイなど大人のそれとは勝手が違う。法では縛れない。漏れたまま作戦を進めるのか?
「おっと、そんな暗い顔してどうした?」
周防が自分と天枷さんの首を腕で絡めてきた。自分と天枷さんは身長差が約二十センチあるので中々上手いことはいかないが。
「誠一、お前ナンパしているのか?彼女さんがいるのに罪な男だなぁ。」
「ナンパじゃないです!それと彼女なんていませんから!」
笑いながら周防はそう絡んできた。からかっているんだろうが、なぜか不快感はなかった。それはそれで良いが振り向くと周防が天枷さんにビンタされていた。それでも一人で笑っていた。面倒だったので別の所に移動した。するとそこには昼食中の男女メンバーがいた。なので周防のことについて聞いてみる。
「ひとつ聞いても良いか?」
「大空さん!なんですか!」
うっそだろ…俺ってそんなに有名人なのか?それについては周防が認めた男だからという理由があるそうだ。
「周防さんっていつもあんな感じなのか?」
「いつもあんな感じっす。だけど、このグループみんなに優しいっす。」
「アタシとこいつは双子なんだけどね、路頭に迷っていた時助けられてさぁ、それ以来ソンケイしているワケ。」
そう言うと双子は下を向いた。
「なんか…変なことを聞いてすまない…」
気まずい雰囲気になりかけたので取り繕う。
「やっぱり大空さんって周防さんのいっていた通りですね。」
「本当にバカみたいに誠実。」
二人はそう言葉を落として微笑んだ。場が落ち着いたので良しとする。なんだかんだで良い人なんだなぁ。後ろを見てみるとメンバーに優しく接している周防が見えた。どうやら看板に偽りはないようだ。
「大空さん、また後で!」
挨拶を交わし別の場所に移動する。しばらく辺りを歩いていると三十分が経ったようなので元の場所に足早に行く。
「よし!三十分経ったな!これより作戦会議を始める!」
それに呼応するように周りから声が上がった。
省略した部分が多いと思いますがそこは脳内補完お願いしますm(__)m