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時を超えし者  作者: 高遠 真也
第一章(仮)
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第十二話 捜索

星原さんに正体がバレてしまった誠一。

この後には何が待ち受けているのだろうか。

 その場は静寂に包まれていた。いや、支配されていたと言ったら適切か。


「あ…恋人さんだったのか…これは失礼した…」


 今浜大臣は察したのか表に出た。決してそのような関係ではないと言おうとしたがそれはもう遅かった。気まずい雰囲気がその場に漂う。というより、さっきの質問の時からいたということは既に知っていたということだと思っていたが。こんな不測の事態にどう対応しろというのか。星原さんは膝が崩れ落ちていて、声をすすり上げて泣いている。声をかけたかったが躊躇した。今の自分に声をかける権利はないと思ったからだ。


「誠一くん…」


 俯いたままでも必死に声を絞り出そうとしている。ああ、こうなったのは自分の責任なのか?自問するが答えは見つからない。自分はあの時星原さんを守ることができた。それだけの事実で充分ではないのか?関係ないことまで頭に浮かんでは泡沫のように消えてゆく。


「誠一くん…全て…私に話して…」


 もう聞いていられないほどな悲痛な叫びであった。近未来特有の匂いと混ざって、それは五感に直接訴えることとなった。こうなった以上話すしかない。仮に自分の未来が修羅になろうとも誠実に全て話すしかないと思った。天枷さん達の許可は?そんなことは今は言っていられない。


「自分は…さっき星原さんが言ったように転生者です。それもかなり複雑で。」


 自分は星原さんの色々な質問に全て愚直にそして偽りのない答えを出してきた。そして、答えを一つ言う度に涙をその瞳孔から露のように落としていった。全ての質問に答えた後は星原さんはこう切り出した。


「私のこの感情をどこにぶつけたらいいの?教えて!」


 その殺気立った目にジロリと見られながら恐喝のように食ってかかってくるばかりの勢いで来た星原さんに自分はどうすることもできなかった。部屋から出ていく星原さんを引きとめようとしたが、こう自分に吐き捨てた。


「もう私に関わらないで!」


 そういった直後に出ていった。この瞬間自分には懸念すべきことが浮かび上がった。しかし、その中でも一番懸念すべきことは星原さんが大空誠一、つまるところ自分が転生者だと周りに言うこと。言ったら大抵の人は嘘だと思うだろう。しかし、変わり者というのはどの時代、どの世界でもいるらしく、この世界のネット住民が騒ぎ立てるはずだ。そこからの物語は考えたくもない。すぐに追いたいところだが定期検診に来た医者に止められてしまった。


 その定期検診が終わったのは星原さんが部屋を出て十分が過ぎた頃だった。幸いなことに杉並さんと黒田さんが自分が出ようとした時にことの経緯を話して探してもらうことにした。三人はそれぞれ三方に別れた。


 自分は走った、駆けた。街並みは光のように後方に流れていき足を車輪のように動かした。これ以上遠いところへ星原さんが行かないように懸命に追った。行くあてなど、どこにもないというのに。大空誠一という男はそれ程までに愚直であった。何が彼をそこまで駆り立てるのか。それは誰にも分からない。天高くから降り注いでいた日差しは傾き、遂には太陽が地平線に入ろうとするまでになっていた。


「この街のことについては何も知らない。そんな自分に星原さんを見つけることなんて…」


 臨海部の工業地帯に着いた自分は星原さんを探すことを諦めようとしていた。星原さんの家がどこなのかすら知らないのになんで探していたんだろう。自分の行為に虚しさを感じていた。そんなことを感じていると三人組の不良と目があった。まずいと思ったが動けなかった。なぜなら目の前には彼らが倒したと思われる不良が十人位おねんねしていたからだ。


「お前!こいつらの仲間なんか!」


 負けん気な声で木刀をこちらに向けて来た。


「いや、通りすがりの通行人だ。」


 決して弱みを見せないように、そして高圧ではない態度で臨んだ。臨戦態勢に入ったが相手は予想外の行動に出た。近くにあった木刀をこちらに滑らして来たのである。


「俺は周防定道だ、この辺りのグループのトップだ。グループの名をヴァンクールという。」


 そう男は名乗った。まずい連中に目をつけられたな。しかも自分には剣術の腕すらない。防戦一方であろう。しかし、勝たねばここから離れることはできない。そんな雰囲気が漂っていた。


「自分は大空誠一。いざ尋常に勝負!」


 見よう見まねでなんとかやってみた。取り巻き含めた三人を相手にすると思ったが、周防は一対一での勝負を選んだ。騎士道精神のある男で助かった。


「では、参る!」


 その一言で勝負は始まった。周防は10メートルほどあった距離を一気に詰めて来て突いてきた。反射神経を総動員しギリギリの所で躱す。その直後周防は後ろに下がり、天の構えをとった。そして振り下ろす。それをなんとか防ごうとするが力負けしそうになる。それを見たのか周防は己の腕力に物を言わせ押し込んできた。その力に圧倒され後ろによろけてしまう。その瞬間を見逃すほどの男ではないと思った。その予感は的中し、正眼の構えから喉に突くのが見えてしまった。諦めようとした時、突如自分の持っていた木刀に電気が纏った。例の力である。


「大空誠一!どうした!大丈夫か!」


 それを見かねたのか周防は木刀を傍に置いて駆け寄ってきてくれた。


「ああ、問題ない、この勝負は…」

「引き分けだ。それにしてもなんだ…」


 そう、周防は問いかけてきた。そのやりとりがあったのは辺りが闇夜に覆われている時のことであった。

ヴァンクールという不良グループのトップである周防定道と相対した誠一。

彼との勝負は引き分けに終わったが後に大きな展開を生むことになるのか。

そして、星原さんは何処へ。

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