表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時を超えし者  作者: 高遠 真也
第一章(仮)
11/28

第十話 強盗

星原さんに誘われた誠一は一緒に外出することになった。しかし、その外出先の店のガラスが割れてしまう。何が起こったのか?

「強盗だ!死にたくねぇ奴は手を挙げろォ!」


 そう叫ばれ瞬時に手を挙げる。全くいく先々で事件に会うとは災難だな。手を挙げながら強盗の人数を確認する。強盗は…四人か。短機関銃持ちが二人、散弾銃持ちが一人、拳銃持ちが一人か。映画か何かの撮影であってほしいがそんな警告はなかった。なぜ銀行ではなくカフェで強盗を?こんな重武装で強盗?色々な疑問が出てきたが今は考える時間すらない。


「誠一君、どうしましょう…」


 星原さんも手を挙げていた。


「今はじっと堪えましょう。」


 周りを見て見ると杉並さんと黒田さんも手を挙げていた。流石に二人と四人では分が悪いのか大人しく従っている。その上こっちは丸腰、相手は銀行強盗並みの重武装をしている。


「要求はなんですか?」


 店長らしき人が怯えながらもそう聞いた。


「憲政党の今浜忠道をさっさと連れてこい!そしてシャッターを下ろせ!」


 憲政党…今浜忠道…頭に電気が流れた。憲政党とはこのジーメイル国における与党であり、今浜はその政党では幹事長、内閣においては法務大臣を務めているのである。つまるところ政治的な事件である可能性が非常に高い。あまり調べていないのでこの男についての評判は知らないが、政党に対する評判は上々だと聞いている。


「は!はい!すぐに!!」


 店長らしき人は慌てて二階に上がっていった。その直後に店員がシャッターを下ろした。今浜個人が狙いなのか政党が狙いなのかは様子を見ない限り分からん。だが、ここまで用意周到なら店員にも化けている奴が一人や二人いてもおかしくはあるまい。一刻も早く事態が好転することを願うしかない。


「つ!連れてきました!!」


 店長の後ろから出てきた人は自分より低めの175センチ位の背丈の持ち主だった。幹事長なのであるからそれに伴って風貌やオーラもある。そして、根岸色のスーツを纏っている。


「要求はなんだ。」


 50前後に見られる今浜はそう切り出した。


「今すぐ刑務所にいる仲間を解放しろ!」


 うっそだろ…これってテロじゃないかぁ。元いた国でも5.60年前はこんなことやっていたんだなぁ。そう心の中では現状に呆れ、そして戦慄していたが表情には決して出さなかった。そして、今浜は目を閉じた。


「なんとか言えよ、今浜!」


 そうリーダー格の男は叫び、持っている短機関銃を十発ほど今浜の後ろにある壁に向かって打った。それでも微動だにしない今浜。テロリストのリーダー格は気性が荒いのかそばにいる女性を人質に取った。なんとあろうことか星原さんが人質となってしまった。


「今浜…この女の命が惜しければ直ぐに返事をしろ。そしてぇ!!逃走用のヘリを直ぐに用意しろ!分かったなアア!!!」


 この店が崩壊せんばかりの大声をだし今浜に食らいついた。当の今浜はやっと目を見開いた。


「もし、今この五分私にくれるというなら閣議決定を緊急で開こう。そして、いい返事を出せるように粉骨砕身の努力をしよう。」


 そう重い声を出した。


「ほう?五分ならくれてやろう。」


 テロリストのリーダー格はそう言い承諾した。それを聞いて今浜は上に戻った。上でテレビカメラで閣議決定をしているのだろう。この場合は超法規的措置になる。だが国家がテロに屈するのか?この国は特産品だけでなくテロも輸出するのか?そうブラックジョークを心の中で呟く。星原さんは今にも泣きそうな感じだ。今の自分に彼女を救う力があるのか?答えは否だ。


 その場は静寂に包まれていた。だがいつの時代どこの場所でも嵐のあとには凪があるというものだ。この静寂は後の天地雷鳴へと変わってしまうのだろうか。それは分からない。


「五分たったぞ!今浜はまだか!」


 リーダー格の男は苛立っていた。店長が察したのか男に許可をもらい二階へと駆け上がった。そして店長が今浜を連れて来て二階から降りて来た。


「遅い!」


 そう言い放ち、今浜の左膝に鉛色の弾丸を一発放った。今浜は左膝を抑え崩れ落ちた。リーダー格の男は今浜の後頭部を踏みつけた。


「貴様が遅いのが悪いんだな。もうここでジ・エン」

「超法規的措置により解放と決まった!」


 そう声を絞るように今浜は声を上げて、リーダー格の男が引き金を引くのを抑えた。そして男はメンバーに武器を降ろすように言った。


「もう一度言う!解放と決まった!」


 そう今浜が言い放った瞬間シャッターが壊され銃撃戦が始まった。なんで銃撃戦が始まるんだ!おかしいだろ!そう思いながら物陰に隠れた。どうやら特殊部隊が突入したようだ。私服状態の杉並さんと黒田さんも応戦している。でも見ている限り一般市民に対する流れ弾はない。なぜだ。これほどの銃撃戦で一般市民に被害が及ばないのは隊員の不断の鍛錬による賜物なのか、はたまた偶然なのか。前者だと思いたい。


 僅か一分でテロリストの四人は射殺となった。こちらの被害者は隊員に軽傷者が二名出たが、一般市民には見たところないようだ。犯罪者を現場で射殺とは実に痛快だな。元いた国では被害者がいくら出ても「対話!対話!」と言うほどの対話厨しか上の方にはいなかったからな。


 現場は救急隊や治安維持隊が駆けつけて来て現場は騒然としたが今は落ち着いている。しかし、すぐに異変に気がついた。星原さんが視界に入らなかったのだ。店内を少しばかり歩くと星原さんの後ろ姿を見つけた。星原さんの後ろの店員が挙動不審だが、今は見つかったことに安心を感じた。店員はゴソゴソしている。そう思うも星原さんに近づく。後ろの店員は胸の内ポケットから物体を出す。その物体とは拳銃であった。それが拳銃であると判断するまでに時間がかかってしまった。このままでは星原さんは。無情にも店員が拳銃を構えた。


「星原さん!伏せて!!」


 そう言いながら星原さんを横から覆うように飛び込んだ。その瞬間乾いた銃声が聞こえた。

非情にも店員に成りすましたテロリストは弾丸を放った。その弾道状にいたのはどちらなのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ