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夏のホラー

玩具に成りに

作者: 桜鼠

このお話は桜鼠(小6)の初作品です。

ながるが代理投稿しています。私が手を入れたのは文頭の一時空けとルビ振りのみ。他には一切の手を加えておりません。

ご了承のうえ、楽しんでいただければ幸いです。m(__)m

「なぁ、こんな噂、知ってるか?」


 休み時間、クラスの人気者がそう切り出す。

 すると皆が「なになにー?」と、人気者の所に集まる。

 私も行きたい。が、私にはそこに行く気力は無い。というか席を立つのがめんどい。

 なので、私はその話を盗み聞きすることにした。


「廃園した、裏野ドリームランドってあるだろ?そこの噂なんだが…」


 ドリームランドといえば、色んな噂がある。子供がいなくなる、とか、拷問部屋がある、だとか。とにかく、有名心霊スポットなのだ。私は行ったことがないが、怖いらしい。


「あそこのメリーゴーラウンドがな夜、勝手に廻ってるらしい。

その明かりが灯っているのは、すげー綺麗らしいから皆で行ってみないか?」


 言葉に皆の反応はさすが人気者なのか、「行く!」と言うような反応ばかりである。

 ただ、一部には否定的な意見もあるようだ。


───メリーゴーラウンドって行かない方が良いよな


───なんてったってあのメリーゴーラウンドは───


───こ───お────からね

  




「…れ…れい…みーれーい!」


「…なに?緋頼(ひより)


 今、私に話しかけてきたのは、緋頼。唯一の親友である。


「水麗はドリームランド行かないの?」


「怖そうだし、行かない」


「えー?行こうよぉ。皆で花火するらしいよー?」


「でも」


「ぶーぶー!」


「………わかった。行くよ。」


 そう私が言うと、緋頼は、やった!と喜んだ。大人数ならばきっとそんなに怖くないだろうし、緋頼はこういう時は無理矢理でも連れて行く。


 そういえば、メリーゴーラウンドってなぜ行かない方が良いのだろうか。

 ま、いっか。考えてもたぶん良くわからない、で終わるだろう。



 その日の夜、時計、着火ライターそれと、去年使わずに放っておいた花火を鞄に入れ、コッソリと家を出た。









「あ、来た来た!遅いよ水麗!水麗が一番最後だよ?」


「ごめん。」


 集合場所は午後一時のドリームランドの門の前。実はそこに来るのも、とても怖かったのは私の秘密である。


「じゃ!全員来たことだし、中に入るか。」


 取り仕切るのはやはり、クラスの人気者さんのようである。

 人気者さんの手には沢山の花火があり、私、持ってこなくてもよかったかなぁ…と、思うぐらいである。


 ドリームランドの門は、スプレーか何かで書かれたと思われるところどころに書かれた落書き、セロハンテープだと思われる跡、汚れている看板…etcで怖さを倍増させていた。なのに…


「水麗ー?早くー」


 なぜそんなに躊躇無く潜れるのだろうか?私には意味がわからない。


「……今行くー」


 こんなに怖いのならば、愛用している猫のぬいぐるみでも持ってくればよかっただろうか…









 メリーゴーラウンドは意外と門から近くにあり、きっと昼間だと門からメリーゴーラウンドが見えるだろう。


 だが


「廻らない」


 三袋花火を開けても、メリーゴーラウンドは廻らなかった。

 やっぱり、嘘の噂か…と、思い始めたとき、急に陽気な音楽がかかった。


 ん?と視線を上げるとメリーゴーラウンドが夜の空に煌めく星のような、様々な色の電球が光り輝いていた。


「うわぁ、綺麗…ここまで来るのは少し怖いけど、来てよかったね、緋頼。」


 私は緋頼の返事を待つ。が、いつまで経っても返事がないので、さっきまで緋頼がいた方向を向く。


「緋頼?」


 そこには緋頼はいなかった。


 クラスメイトも、いなかった。


「…みんな?…どこ?」


 見渡してもあるのはどこまでも続く暗闇とメリーゴーラウンドだけ。


 と、思っていたいたら、ぼんやりとなにか青いものがこちらに向かっていた。


「人?かな」


 ぼんやりとしたものは青い服をきた男の子のようである。


「お姉さん、だあれ?」


 男の子は多分、八歳位で整った顔立ちをしていた。


「え?…水麗…だよ。」


「俺はね、正貴(しょうき)っていうの!」


「えー、と、正貴くんは何でここにいるの?」


 私がそう言うと、正貴くんなにかを思い出した顔をして、正貴くんの目には涙がどんどんたまっていく。


「…………の」


 正貴くんは涙をぽとり、と落とした。


「おかあさんがいないの…」


 正貴くんはまたぽとり、と涙を落とす。


 子供が泣いている。ただ、それだけなのに、それだけのはずなのに、何か違和感があった。


「お母さんとここに来たの?」


 そう、私が言うと正貴くんはうん、と返事をした。


「お母さんとはぐれちゃったの?」


「ひっく…うん…」


 こんな廃園した遊園地、しかもこの辺では有名な心霊スポットに子供を連れてくるなんて絶対におかしい。しかも今は真夜中だ。

 仕方ない。正貴くんをお母さんの所に送り届けなければ。


「正貴くん?」


「…ひっく……なに?」


「母さん、一緒に捜そっか。私も、皆とはぐれちゃったんだ。」


 そう言うと、泣いていた正貴くんの顔がぱあぁぁぁと、明るくなっていく。

 やはり、何か違和感を感じる。どこにもおかしな点は無いはずなのに。


「ありがと!お姉さん!」


「どういたしまして。はぐれないように手、繋ごっか。」


「うん!」


 手を繋ぐと、私達は歩み始めた。


「お姉さん、皆って誰?」


「クラスメイトだよ。私と会う前とか、見なかった?」


「ううん。皆って、帰っちゃったんじゃない?」


「それはない、と思う。」


 他の人は知らないが、緋頼はそんなことをする奴ではない。


「そうかなぁ。俺、かくれんぼで忘れ去られた時あったよ。」


 が、そういう話しをされると少し、自信がなくなる。

 たしかに、私に気付けば置いてけぼりにすることはないと思うが、緋頼もたまにおっちょこちょいな所があるので絶対、とは言えないかもしれない。


「た、多分無いよ!それよりさ、お母さんってどんな人?」


「とっても優しいんだよ!でも…でも…」


「でも?」


「ううん!なんでもない!それから、見た目はね!ちょっと怖いけど、びじんなんだ!」


「そうなんだ。じゃあ、正貴くんはお母さんに似たんだね。」


「そうだといいなぁ。」


 正貴くんはふにゃりと笑った。

 お母さん、どんな人だろう。

 廃園した遊園地に子供と来るって、何があったのだろうか。まあ、聞かないと分からない。


「お母さんと、何でここに来たの?」


「遊びにきたの。このメリーゴーラウンドで!」


 正貴くんが指を何も無いところに指した。いや、何も無かったところと言うべきか。

 指した所にはメリーゴーラウンドがあった。


 私と正貴くんは話している間、歩いていたはずである。

 しかし、そこにはメリーゴーラウンドがある。

 つまり、正貴くん、もしくは違う何かが居てそれが原因か、それともこれは夢か。


 夢、だったらいいのだが腕をつねっても痛い。


 怖い。もし、もしも、正貴くんが原因なら…正貴くんは、きっと…


「しょ、正貴くんはさ、」


 声が、震える。


「幽霊なの?」


 正貴くんじゃないのに賭けたい。


 が、そんな希望は打ち砕かれる。


「うん!」


 正貴くんは無邪気な笑顔で答える。


 私は怖くなって、そこから逃げ出した。




 走る、走る。

 でも、どこまで走っても、何にも見えてこなかった。

 こんなことなら、懐中電灯持ってくればよかった。

 皆で行くから、と油断しなければ…

 はぐれることを、予想してれば…

 しかし、後悔先に立たず。もう、手遅れなのだ。



 ───くすくすくすくすくす


 どこかで子供の声がする。


 ───馬鹿だなぁ──くすくす


 どこかで、子供()の声がする。


 ───逃げれるはずないのにね──くすくす





 突然、何かが腕を掴む。


「捕まーえた!」


 掴んでいたのは正貴くんだった。


「今日はたくさんおもちゃが来たね!」


「これで当分は遊べるな!」


 後ろを見ると、たくさんの子供達がいた。


「どうやって遊ぼうか。」


「少しずつ切り落としていって、最後切り落とせなかった人が罰ゲームってのは?」


「解剖しようよ!」


「解剖も良いけれど、わたし、切り落とす方がいい!」


 子供達は笑っていた。


 赤いナイフを持ちながら───









「あーあ、だから行かない方が良いって、言ったのに。」


 ドリームランドの門の前、少年が一人立っている。


 ───子供達のおもちゃにされるから、ってね


 少年は、不敵な笑みを浮かべた。









 メリーゴーラウンドが勝手に廻っていることがあるらしいよ。


 誰も乗ってないのに。


 明かりが灯っているのはとても綺麗らしいんだけど、ね。


 一度行ったらもう帰って来れないんだって──


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