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ソウマの銃、少女のナイフ

 帰国すると、まずは遺失届けを出した。十一本のペーパー・ナイフと引き換えにそれを置いてきたとは、正直には言えないからだ。俺のガバメントは”破棄武力スポイル”として登録された。

 基地を出ると、最初に目に付いたコンビニに寄り、ペーパーナイフの一本を預けた。明日の朝にはキレイにラッピングされたそれが彼女の手に届くだろう。きっと、彼女は気に入るはずだ。

 どこかで夕飯を食べてから帰ろうかとも思ったが、結局はいつもの一階のファミレスに来てしまった。

 窓際の席に座ると。すぐにグラスビールと小エビのサラダが運ばれてきた。

 アイウエアをかけると、まるで待ち構えていたように、向かいの席にはキサラギが座っていた。

 「お疲れ様でした。どうでした? 今回の現場は?」

 「別に、普通でしたよ。ちょっと暇でしたが」

 「そうですか……。お給料はもう振り込まれていますので、念のため確認しておいて下さい」

 「……なんの用ですか?」

 「……はい。センナミさんのガバメントが”破棄武力スポイル”されたようで、どうしたものかと……」

 「なくしちゃったんです。気がついたらありませんでした。もしかしたら盗まれたのかもしれません」ソウマは嘘をついた。

 「残念でしたね。買ったばかりなのに」

 「まあ、しかたありません。自分の不注意です。……それに、試射してみたんですが、あれはあまり……」

 「お気に召しませんでしたか」

 「なんというか……まあ、そう。気に入らなかった。そうかもしれません……。また、新しいのを買いたいのですが」

 「そう思って、窺いました。では!」

 そう言うと景色が渦巻く。見慣れたファミレスの景色が円を描いて歪んでいく。そして、またあの白い部屋になる。

 テーブルの上には、ガバメントタイプが数十丁並べられている。

 「あれ? 在庫増えました?」

 「はい。センナミさんの為に……」

 ソウマはその中の一丁を手に取る。もちろん重みはない。

 「もしかして……、これ?」

 「はい。本物のガバメントです。”コルト・ガバメントM1911”ですよ」

 ソウマは目を見開いた。

 「いくらするんですか?」

 「本日のセンナミさんの手取りの、百倍でしょうかね」

 「すげーな。こんなもん、誰が買うんでしょう」

 「お金持ちの、骨董収集家ですね」

 「で、こん中で、二番目に安いのは?」

 ソウマはオリジナルのガバメントを元の場所に置きながら聞いた。キサラギは右の眉毛を持ち上げニヤリと笑う。

 「そう言うと思ってました。この、相馬工業製です」

 キサラギが指差したのは、シルバーの銃だった。

 ソウマはそれを手に取る。銃身には”SOUMA”と刻印されている。

 「なんだか、ご自分の名前が刻印されてるみたいじゃありません?」キサラギが細い目を更に細めながらニヤリと笑う。

 「もしかして、これも俺のために?」

 「ええ。取り寄せました」

 「……せっかくだから、これにしますよ」

 「では、またよろしくお願いします」

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