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現場であってGAME でない  作者: pupurin
1/1

RPG

一話目楽しんで頂けたら幸いです!

右手でドアを叩き、返事を待たず遠慮なく中に入る。


「あれ?いない。出掛けたのか?」


まあ、たいした用事でもないし後でいっか…と見回しあることに気付く。


「付けっぱのままだし…」


弟の部屋にはなぜか羨ましいことにテレビがある。(いつか叩き壊すことを夢見ている)

その画面には、ゲームのメニュー表示のまま付けっぱなしになっていた。


あれ?これって


「昔遊んでたゲームだ。懐かしい…」


最近はゲーム自体やっていないが小学生の時は、夢中になってしたゲーム。よく有りがちなRPG(ロールプレイングゲーム)だが主人公(ゆうしゃ)が強くなって幾度に熱を入れて遊んだ。その頃は家に一台しかテレビがなかったので弟と血で血を争い(は言い過ぎか)、奪いあった。


「ふーん、またやり始めたのか。でも付けっぱにしてどこに行ったんだか」


たぶん、お菓子でもつまみたくなってコンビニにでも行ったんだろう。さて、弟が居なければ今日の家の掃除当番を代わってもらえない。ここに居ても仕方ないとドアノブに手をかけた瞬間!


テレビから光りが溢れ、視界が真っ白になった。



「…ッ眩しい。ついに壊れたか!」


淡い期待を抱きつつ、ゆっくりと目を開ける。


「へっ?」


私の目の前には弟のごちゃごちゃした部屋はなく、広大な森が広がっていた。


―――――――――――――――



歩いても歩いても、木、花、木、花ばかりで人も動物も見つからない。



「どこにいるんだ…」


せわしなく首を降りながら、私はある人達を探す。


それは勇者一行。


ここに着いてまず考えたことは、『ゲームの世界に入り込んだ』ということだ。まぁ、それか夢であるという可能性もあるけど、無意識に寝るなんて特技は持っていない。


では、これからどうするか。普通は勇者と共に冒険するのが大多数の意見なのかもしれないが、私は



裏側を見てみたい、と思った。


このゲームをプレイしていて、倒された敵はどこに行ったのか?勇者はなぜしゃべらないのか?そんな疑問をいつも抱えていたのだ。


だったらこの際、白黒つけておきたい。だが、何も見つからない。

本当に夢を見ているのかもしれないと思い始めた…


「おーい、監督。飯食べて良いッスか?」


「いや、撮影いつ始まるか決まって無いからもう少し待ってくれ。」


「もう、腹がなっちまいまスよ。」


「大丈夫だ。編集で消しておくから。」


「でもこれからドラゴンと戦うんスよね?長丁場っスよね?」


近くで声がした。急いで駆け寄ると、そこには人、人、人、そしてカメラが所狭しと並んでいた。


「なに…これ、映画…?」


―――――――――――――――



取り敢えず私は近くの人に話しかけてみた。


「あの、今何してるんですか?」


「何って、撮影しているんだよ。あっ‼あとお疲れさん。はい、これ弁当ね。」


男のスタッフさんが笑顔で幕の内弁当を差し出す。って幕の内!?ドラゴンの肉とか、巨大魚の刺身とかじゃなくて?


「幕の内?」


思わずこぼれ出た言葉に


「ん?あっ幕の内だけじゃなくてのり弁もあるよ‼」


とスタッフさんはにっこり微笑んだ。


「そうじゃなくて、ドラゴンの肉とかは無いんですか?」


私は思い切って質問をぶつけてみた。


すると、スタッフさんは少し声を出して笑った。


「いやいや、そんなのいるわけないじゃないか!でもドラゴンの肉食べてみたいな。」


えっ?でも


「さっきドラゴンと戦うって言ってましたよ?」


「あれ、知らないのかい?……あっ、もしかして新人さんか!だったら知らないね。見てたら分かるよ、丁度撮影も再開するようだし。」


そして、走って向こう側に行ってしまった。


―――――――――――――――



取り敢えず、私は幕の内弁当を食べることにした。お米と焼き鮭、卵焼きなどボリューム満点だ。だが、もろに日本人好みだ…。


それにしてもこれでは勇者と共に冒険は出来ないな。幻滅する人が続出しそうだ。




しばらく弁当を頬張っていると、


「では!!5秒前、4、3、2、1、はいっ!」


撮影が始まった。


「おのれ!ドラゴンめ、もう町を荒らすのを止めるんだ‼」


多分、あの人は弓使いか?射撃率が上がると、一発でモンスターを倒してくれるから頼りになったよな。で、でもさ…


「そうよ‼ここで仕留めて見せる‼」


あっ!魔法使いだ。パーティー唯一の女の子で愛着もあったし、回復系の魔法よく使ってたな。って、勇者一行の目の前…


「許すまじでござんす!」


格闘家だ。素手でモンスターと戦う勇気と言い、あの筋肉モリモリどうやって鍛えたんだろうと思っていたけど、なるほど着ぐるみだったのね。よく見ると背中のチャック丸見えで違和感がある。というかあれってどう見ても…


「·············グウ」


勇者、無言!なんで? にしてもお腹の音の方が気になる。

じゃなくて勇者一行の目の前、あれは絶対……………



人だよね?



「ウォー‼」


どこからともなく、恐らくスピーカーからドラゴンの咆哮が虚しく響き渡る。


そしてよーく見るとドラゴン役の人間?から少し離れた所に何かを持って、めくっている人がいる。


「覚悟しろ!」


と弓使い。あれ?チラッとめくっている人の方を見た?


「逃さないわ!」


睨みを利かせ、魔法使いが叫ぶ。あっあの人、言い終わったと同時にめくった。


「拳でねじ伏せるでやんす!」


格闘家もろに今見たね?


「·········グウ」


…………………。


もしかしてあれはカンペなのか?あそにいたら映りそうだが…。

でもそれ以前に少しくらいセリフ、覚えましょう。


―――――――――――――――



そして

戦いの火蓋は切られたようだが…


「はっ‼」


「それっ!」


「おりゃー‼」


「……グウ」


弓使いは弦を引っ張り、ドラゴン?のいる方へと向け弦だけを放った。弓矢は?


魔法使いは呪文を唱え、


「雷よ‼」


ゴロゴロと音だけが響く。魔方陣も雷もナシかい!


格闘家はドラゴン?に勢いよく近づき、大きく拳を振り上げ…空振りした?今の攻撃したことになるのか?


勇者も手前で剣を降り下ろした。相変わらずお腹が減っているようだ。


それにしてもこれはどう言うことだろう?

このままではとてもあのゲームと同じであるとは言い切れない。


これは監督か詳しい人に聞いてみるしかない。


人の間をスルスルと通り抜け、どこかと探す。


「…いた。」


監督は小さい画面を食い入るように見ていた。周りではパソコンで作業している人もいる。


さっき弁当をくれたスタッフさんが監督の横にたち、同じように画面を見つめていた。


「はいっ!今ドラゴンの吐く炎の音!」


鋭く声をあげる監督。


と同時に


「ゴーー」


迫力満点の音が響く。


私は思い切って、さっきのスタッフさんに話しかけた。


「すみません、一体これはどういうことなんですか?」


「あっ‼さっきの新人さん。見ての通りだよ。」


「見ての通り?」


思わず顔がしかめっ面になる。


「あぁ、この画面を見てごらん?」


しかめっ面のまま画面を覗きこむ。


「へっ!?」


そこにはドラゴンと対峙している勇者一行の姿があった。


―――――――――――――――



「これはもしかして…」


私の驚いた顔を見てにっこりと


「CGだよ。」


と爽やかに答えてくれた。


CGですか…CG…


「ほら今、魔法使いの水魔法の発動だ!」


魔法使いを中心に魔方陣が写し出される。そしてドラゴンに水が襲いかかる。

でも、ドラゴン役の人間はぼーと立っていて一滴も濡れた様子がない。


この様子では弓矢も打撃も剣撃も加工されるんだろうな。






「おい、HPあと100だ。伝えてくれ。」


監督が無線で誰かと話している。


するとカンペの人がめくって何かを書き込み、勇者一行の方へ向けたのが見えた。


なるほど、HPもカンペが伝えていたのか。

どんどん自分がこの世界に順応し始めたのに気付かず、私は感心していた。


「ちなみにこの人達が効果音とか編集を担当しているよ。」


スタッフさんがパソコンで作業している人達を指し示す。


そっと覗いてみると、


「あっ‼いつものゲーム画面だ。」


ドラゴンのHP、勇者一行のHP、そしてそれぞれの技名、セリフの枠、よく知っている戦闘時の画面が写し出されていた。


ふと、一つの疑問が浮かんだ。


「すみません、この動いている矢印はあなたが動かしているんですか?」


「んっ?あぁこれはプレイヤーが動かしている。」


パソコンの画面を見てカタカナとキーボードを打ちながら、だるそうに年配の男性スタッフが答えた。


「!?」


私が質問したのは、技名やアイテムを選択する時に表示される矢印だ。この矢印を動かして使う技、アイテムを決定する。

その仕組みがこの世界ではどうなっているのかと思ったが…


「ここがゲームの世界だと分かっているんですか?」


思わず声が上ずる。


「んっ?まぁ当たり前だ。」


淡々と答えが返ってきた。


「……リセットされたらあなたたちは…?」


口からポロっと言葉が出てきた。リセットされたらこの人達は今までの出来事を覚えているのだろうか?


「んっ?そりゃ決まってる。キレイサッパリ、リセットだろ。」


だるそうな声が返ってきた。

そして

ふと手を止め、こちらを見つめる。


「……嬢ちゃんそう悲しい顔するな。リセットされても俺らはまた同じように仕事するだけだ。 んっ?こいつ大技ばかり使いやがる‼面倒だな。」


年配スタッフはまた忙しそうに(イライラしながら)パソコンと向き合った。


意外だ。リセットされることに悲しみを感じ無いないとは。私としては複雑だな。



「よし!倒したな‼セーブの間に移動だ‼」


監督が無線に向かって叫ぶ。


考え事をしているうちにいつの間にかドラゴンを倒したようだ。

辺りが慌ただしくなる。


「監督もう限界ッスよ!食べて良いっスよね?」


勇者役の人がこっちに走りながら監督に抗議した。


「移動の時間短いから駄目だ。」


「もうダメっス~!」


目に涙をため勇者(に見えない)は嘆いた。


そんな勇者にそっと近づき、


「卵焼きくらいなら移動しながらでも食べれるのでどうぞ。」


これ以上、鳴かれてはきっと編集も大変だし私も耐えきれない。

弁当箱のまま差し出す。


「ありがとっス~!………うっま~!」


取った残像も見えず、卵焼きは勇者のお腹の中へと消えた。


「ほんと、あなた神様っスよ‼」


うん、エサも与えたことだしあの質問をしよう。

最大の疑問それは、




「なぜ勇者はセリフ無しなんですか?」


勇者役の彼は唐突な問いに目が点になったが、次第に笑いに変わった。


「なぜって、セリフが覚えられないからっスよ!」


当たり前というようにケラケラと笑い飛ばす。


私の顔はひきつった。


「覚えられない?でもカンペがありますよね?」


首をかしげ勇者は


「そうなんスけどね…でも監督が頼むからカンペの通りに読んでくれって言って、何回かしてるうちにセリフ無しでいいって…どうしてなんスかね?」


全く分からないんスよ。みたいな感じで言っているが、その~ス、スよねという語尾がセリフに出ていた可能性がある。確かにモンスターに向かって勇者が「倒してやるっス!」というのは(格闘家を除いて)カッコがつかない。

というかリセットされる度に監督はこの勇者に振り回されないといけないのか…ドンマイだ。


―――――――――――――――


そうこうしている内に準備が整ったようだ。(ゲームの外と中ではやはり時間の流れが違う)


「では!!5秒前、4、3、2、1、はいっ!」


監督の掛け声と共に勇者一行が歩き出す。どうやらこのシーンは目的地に向かう途中の道中らしい。


「次五メートル、モンスター配置!」


監督の指示で五メートル先にモンスター(人)が待ち構える。


勇者一行は止まり、バトルが始まる…


「しっしまった!」


パソコンを操作するスタッフが何か慌てている。


「どうしたんだ?」


監督が声の方へと向かう。


「合成ミスしました…。」


監督はスタッフの画面を見てあちゃーという顔になった。


「これは…だが、もう修正は出来んな。仕方ないこのまま行こう。」


監督の一声で現場に静寂が戻った。


しかし、どんなミスしたんだ?気になってチラッと覗きこむ。


「これは!?」


今勇者一行と戦っているのはゴブリンだがこれは…


「幸運のレアゴブリンだ。」


このゴブリン、他のゴブリンと違って色が違う。服も顔も身体も全部、黄色なのだ。製作者によるとこれは


バグらしい。


本当にごくごくたまに起きるバグで、見ると幸運になるというジンクスが出来たほどだ。


バグ=ゲームの世界のミスか!誰も知らない裏事情ゲットだ。


私の胸はひさびさにウキウキしていた。


―――――――――――――――



無事にレアゴブリン(ミスゴブリン)を倒し、ついに魔王の城に着いたのだが…


「これは本物かい。」


少しがっかりした。


私達の目の前には大きなお城がそびえ立っていた。かなり豪華だ。でも、


ここまできたらCGにするべきでしょ‼



当時CGにショックしていた私はどうやら消えてしまったようだ。




「しかしよく造ったな。」


よく見ようと城に近づいたのだが…


「へっ?凹凸がない!?」


そこにあるのはスクリーンのような巨大な壁だったのだ‼


驚いて振り返ると次は強烈な光に襲われた。


「!?」


「そこに居ると目やられるよ‼」


まばらな笑いが起きる。


「おいおい新人、お前面白いな。分かってて近づいたのか?」


パーマの男性スタッフがカシカシ頭をかきながら、話しかけてきた。


「いえ、分からないです。」


何がおかしいか分からず、顔をしかめながら言葉を返す。しかしもしかしたらこれは、


「まだ教えてもらってないのか!プロジェクションマッピングだよ。」


ハハ、最新鋭か。案外ここ(ゲームの中)が発祥なのかもしれない。


「このゲームはスクロールだからな、この技法を使っても意外にばれない!楽だしな。」


ふぅ~んって、だったら最初から


「全部プロジェクションマッピングで撮りましょうよ。」


ってなるよな?


「そうだよな‼だけど監督は建物のCG面倒だし、自然のリアリティーも必要だって言って聞かないんだ。まったく…」


私の顔は今盛大にひきつっている。




だったら監督よ、せめてお城はちゃんと造ろう。




まぁしかしこの方法だったらお城の中も写し出せて、魔王との戦いに臨場感が出て良いのかもしれないな。


と思った瞬間!視界が真っ白になった。


「なに…またプロジェクションマッピングか?」


ゆっくりと私は目を開けた。


しかしそこはRPG の世界でもなく弟の部屋でもなく、リビングだった。私の後ろにはこの家で一番大きいテレビがある。


場所がどうであれ、帰って来たようだ。


一息ついていると2階から「よっしゃー!」という声が聞こえた。


そして気がつくと脚が動いていた。


―――――――――――――――


ノックせずドアを開ける。


「ちょっ、姉ちゃんノックくらいしてよ。でもいいや、見てよ‼このゲーム覚えてる?奥の棚からさぁ、たまたま見つけたからやったんだけどやっぱり面白かったわ。レアゴブリンも見れたし。俺幸せになれちゃうぜ。」


ニヒヒヒと笑う弟に目もくれず私はテレビの画面を見た。

『クリアおめでとう‼』と一言表示されている。

そして、無造作に放り出されたパッケージを拾った。


『魔王を倒して世界を救え!革新的なスクロールに加え、圧倒的な映像に驚け!!』


じっとパッケージを見つめていると、


「これ確かに当時にしては映像綺麗だったよな。まぁスクロールってのがなぁ。そう言えばこのゲームの製作者、リアリティを求めて色んな所にこだわっているらしいけど、俺にはサッパリ分からないや。」


つらつらと自慢そうに弟はしゃべる。


でも私には分かる、そのこだわり。誰も知らない裏事情。


「姉ちゃん、その笑顔気味わりいよ。」


「そうか?じゃあ今日の掃除当番代わってね。」


私は笑みを深め、


「あと、そのゲームも貸して。」

読んで頂きありがとうございました‼

次回お楽しみに!

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