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親子の現状

短くて申し訳ないです・・・

「お前は村に帰れ」

 閻魔大王は、関係無い事に首をつっ込むなと、顎をしゃくって扉に目をやる。

 けど、気になるじゃないか。

「あの子はどうなるんだ」

「娯楽や恋人に夢中になっている者を呼び寄せ、その中から選ぶ」

 閻魔大王はめんどくさそうに応える。

「嫌々なんて、可哀そうだ」

 なお食い下がる俺の言葉に、閻魔大王は大きくため息を吐いた。

「だが、お前は嫁の守護霊だ、他人の守護など出来ぬぞ。何事にも出来る事と出来ぬ事がある。分かれ」

 それぐらい分かってる。

 俺は悔しくて拳を握りしめた。

 清流に促され、俺は渋々白い部屋に移動する。そして円の描かれた中央に立った。

「さすがはお前の息子だな、男共を撃退しているぞ」

 突然の言葉に、俺は理解出来なかった。

 俺の息子? 敬太が? 男を撃退って、どう言う意味だ?

「それはどう言う意味ですか?」

「嫁も息子も無事だ。もう暫くは静養に専念しろ」

 おーい。もしもし? 俺の話、聞いてます?

 俺の質問はまるっと無視されて「じゃあな」の言葉の後に、穴に落とされた。


 瞼を開くと春の野に立っていた。俺は清流と共に歩きだす。でも、今度は五歩も進まない内に、賑やかな通りに着いてしまった。

「魂が癒えていると言う事ですよ」

 瞠目して佇んでいる俺に清流は優しく微笑んだ。

「清流さん」と呼ぶと「呼び捨てで構いません」と言われる。

「じゃあ、清流。えっと、清流も美和子達の情報は知っているのか?」

「はい」

「じゃあ、教えてくれるか? 言える範囲でいいから」


「奥様の守護は、以前守護されていた方がなされております」

 え? あの弱々しい人が!? 大丈夫か?

「川崎様が守護されている間、ここで魂を癒していたので大丈夫だと思います。たぶん」

 俺の心を読んだ清流が応えた。

 たぶん。かよ!


「敬太が男たちを撃退してるって言うのは?」

「息子さんが空中に向かって「パパ」と呼びかける姿が不気味すぎて、近寄って来なくなったのです」

「それって、男だけじゃなくて皆に避けられてるって事じゃないのか」

「ぶっちゃけると、気味が悪いと避けられてますね」

 清流は淡々と事実だけを伝える。

 家族を守りたかったのに、俺のせいで村八分にされるなんて、これじゃ本末転倒じゃないか!

 俺は頭を抱えた。

「なんとか、ならないかな」

「人の噂も七十五日と言いますし、その内に忘れるんじゃないですか? たぶん」

 他人事だと思って!

「まあ、あれですよ。大丈夫ですよ。きっと」

 俺の視線が痛かったのか、今度は「たぶん」と言わなかった。「きっと」も大して変わらないと思うが。


「早く戻してくんないかなぁ」

 そしたら敬太には俺が見えるから、何も無い所を見ながら俺を呼ぶ事も無くなる。

「一定の場所を見ながらパパと呼ぶのも、他人からすれば同じに見えますよね」

 ズバズバと、身も蓋も無い……

 はい、仰る通り………

 俺が戻っても状況は変わらないのか。

「息子さんが空間に嬉しそうにパパと言う方が不気味かも知れませんね」

 幽霊が視えると言う事ですから。と続ける清流に、そうかもしれないなと俺も相槌をうった。

 と言う事は、助ける手立てが無いと言う事で……

 俺は再び頭を抱えたのだった。


「あっ」

 突然、清流は短い声を上げて、目を閉じた。声を掛けられる雰囲気じゃなくて、俺は清流が動き出すのを待った。

 暫くして瞬きした清流が「朗報ですよ」と微笑んだ。

「あの方の守護霊が決まったそうです。渋々ではなくて、ノリノリで引き受けたそうですよ。良かったですね」

 懸念材料が一つ減りましたねと言う優しげな清流の顔に、俺の頬も緩む。

「そうか、良かった」

 俺も肩の力を抜いた。

 とにかく良かった。もろもろの話を聞いて俺は呟いた。

 敬太の事は、俺が出て行けば更に状況は悪化するので現状を維持するしかないと思われる。が、とりあえず家族が無事で良かった。

 だって、あの守護霊だよ? 言っちゃ悪いけど、貧乏神? ってぐらい幸薄い感じなんだから! 無事って事で妥協しなくちゃな。

 でも、俺はまだ静養が必要なのか?

「あー、もう暫くってとこですかね」

 清流が俺の心の声に応える。便利だな。

「川崎様の場合、霊力が満たされればこの空間から弾かれる筈ですから」

「どう言う意味だ?」

「川崎様の霊力が巨大すぎて、この空間を守る為に、存在を異物として排除されると言うか何と言うか、まあそんな感じです」

 意味が分からない。

「とにかく、川崎様の力が大きすぎると言う事です。それこそが閻魔大王様の特別になりうる点です」

 と、清流は力説する。

 はぁ、そうなんですか。

「暇ですし、劇場にでも行きますか? それとも何か食べに行かれますか?」

 気の抜けた返事をする俺に、清流はそう持ちかけた。




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