2-00『ある少女からの手紙』
や。久し振りだね、アスタ。あたしだよ。
一年前、アスタが急に姿を消して以来かな。
どこに消えたのかと思ったら、まさか今さら魔術学院に通ってるとは思わなかった。しかもこれ、あたし以外のみんなは全員、知ってたみたいだし。
正直、納得いかないなあ。あたしは仲間外れにされるのがいちばん嫌いだって、アスタは知ってるはずだよね?
これはちょっと一回、直で話さないといけないと思うよ。うん。
ていうかさ、なんで今さら学生に? 似合わないってモンじゃないよ。
って思ったけど、まあ、目当てはたぶん本だよね。オーステリア学院っていえば魔術研究の頂点だし、貴重な魔術書もきっと保管してるだろうね。
学院の蔵書の中になら、アスタの《呪い》を解くための情報が、何か見つかるかもしれないよねえ。
そりゃアスタも学院にも通いたくなるか。
ま、望み薄だとは思うけどさ。教授も知らない本が、学院で見つかるとも思えないし。
それとも、もしかして禁書庫のほうが目当てだったり? だとしたら、ずいぶん無謀なコト考えたな、って思うけど。
ていうか遠回し? うん? いや、よくわかんないけどさ。
……てか、それはいいや。そんな話がしたいんじゃなかったし。
手紙なんて書いたことないから、なんかぜんぜん関係ない話しちゃったよ。
問題はそこじゃない。
ねえ、アスタ。そんな面白そうなコトしてるなら、どうして教えてくれなかったのさ?
ていうかアスタばっかり学校に通ってるなんてずるい。あり得ない。卑怯だと思う。
あたしだって行きたい。
ていうか行ってもいいよね? 年齢的にはおかしくないと思うし。最近はエレ兄もどっか行っちゃって構ってくれないし。
うん、だから決めたよ。
あたしも、アスタと同じ学院に通うことにする。
あたしだったら簡単に入学できると思うし。これに関してアスタには一切邪魔させないから。
というわけでまあ、報告までに。
この手紙がいつ届くか知らないけど、たぶん着く頃にはあたしもそっちにいると思う。
そのときは先輩として、街でも案内してもらうから。
そんだけ。
――って思ったけど、追伸。
マイ姉がまた何かするって言ってたよ。
まだ詳しいことは聞いてないけど、なんでも世界の危機を守るらしいね。
まーよくわかんないけど、きっといつもの通りアスタも巻き込まれると思うし。
準備くらいはしておいたほうがいいんじゃないかな。
それじゃ。近いうちに会いに行くから。
アスタ=プレイアスへ。
親愛なるメロ=メテオヴェルヌより。




