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セブンスターズの印刻使い  作者: 白河黒船/涼暮皐
第五章 学院都市陥落
196/308

XX-X『×××××××』

 ――世界とは、文字によって記述されたひとつの絵画である。

 圧倒的な情報量を持ちながら、けれどその大半が秩序だっていながらに混沌とした、判読不明の言語によって構成されたひとつの大渦。成立する矛盾した情報書庫データベース理論セオリー才覚センスの両方が合わさって初めて解読可能となる、巨大な運命の螺旋。まるでそれ単体が、一個の生物であるかのような。


 それは魔術師にとって常識と言っていい前提だ。

 理屈を学び、それを感覚によって再現し、世界というひとつの情報データを改竄する技術。その行為を指して魔術マジックと呼び、それを可能とする人間こそを魔術師ウィザードと称す。

 詐欺師マジシャンであり改竄者ハッカー

 全界記録の年代記(アカシックレコード)への接続者。


 そんな存在ものは本来、世界に存在していてはならない。


 なぜなら、彼らは物語の登場人物でありながら、自らを内包する物語そのものを書き換えてしまう者なのだから。そんな行い、許されていいはずがない。

 いわば不具合バグ

 世界が滅びを迎えるに当たって、自ずから生み出した救世主。世界への干渉権限を世界そのものから与えられた、特異点と表すべき存在。

 そう。魔術とはすなわち、ひとつの主人公特権(丶丶丶丶丶)だ。


 魔王を打破する勇者のように。戦いを終結に導く英雄のように。

 彼らは世界を救う。そのための機能を世界そのものから与えられた装置であり、歯車。

 文字通りの救世主である。

 彼らは世界に後押しされている。強い力を持ち、固い信念を抱き、どんな窮地にも折れることがない。

 なぜなら世界ものがたり主人公ヒーローだから。

 その目の前には、前に歩む力を与えてくれる心強い師匠が現れることだろう。その向かう先を忘れることがないように、先を照らしてくれる先達に恵まれることだろう。ともに進み、ときには競い合うように切磋琢磨できる同輩と出会うことだろう。彼が庇護するべき、そして導くべき後進も添えられることだろう。どんな窮地にも輝きを失うことがないよう、最後に恋人でも配置されていれば完璧な布陣だと言っていい。

 お膳立てられた道を歩けば、成功など初めから約束されている。

 いや、それ以外は許されない(丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶)と言うべきか。

 救世主であることを強制された存在は、その役目を担うだけの能力は持っていても、それ以外の一切の自由を許されていない。本来そうあるべきだから。


 ゆえに。

 そうして世界を救ってしまえば。


 ――主人公えいゆうなど、あとの世界ものがたりでは用済みだ。

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