サンタ遊園地
サンタクロースと少年の不思議な邂逅。
「どこ、……どこにいるの?」
男の子は――泣き叫ぶ。
閉鎖された夕方の遊園地。男の子は佇む。
普段は喧しいほどに煩いはずのこの場所で、男の子は一人佇む。
「ねえ、だれか……いないの?」
男の子は呟く。
閉鎖さされた夕方の遊園地。回る観覧車、ティーカップ、メリーゴーランド。男の子は一人。
乗ってみるうちに、あれもこれも、と夕景は夜景へ。湧き上がる夏の緋い雲も、薄紫の星空へ居場所を明け渡す。
落ちるフリーフォール、ジェットコースター。男の子は一人。
地上を離れ、星空から奈落へと。墨色の月空は、星屑のような街の灯りへ。
「やあ。楽しかったかい?」
真っ赤なお鼻のサンタクロース。天空から降りるシャッター、沈むメリーゴーランド。
「さあ、私からのプレゼントさ」
泣き叫ぶ男の子は夕闇に囚われる――
「――ゆ、ゆめ……」
跳ね起きる男の子。サンタクロースの袋の中のような布団から抜け出し、息を整える。
男の子は再び眠りに付く。
「おかあさん、おとうさん。楽しかったね」
男の子は笑う。
閉園間際の夕暮れの遊園地。家族三人、笑う。
他の誰もいない、三人だけの夕景の遊園地。
メリーゴーランドの前。真っ赤なお鼻のサンタクロース。
黒い空から落ちるシャッター。
「おとうさん! おかあさん!」
両親と男の子を隔てるように落ちてくる鈍色の壁。助けは来ない。
「さあ、私からのプレゼントだよ」
真っ赤なお鼻のサンタクロースに抱えられて、真っ黒な空間――
――そして、朝になる。
実際に見た夢を元にしたお話です。