僕の名前はラリー。
僕の名前はラリー、オスで7才。
僕は、鹿島家の人達に飼われている犬だ。
もちろん、今こうやって言葉を喋って説明してるけど、人間には僕の喋りが、遠吠えや鳴き声にしか聴こえない。
今、とても暖かくて気持ちが良くて何だか眠いんだ…。
今から5年前、僕は鹿島家の一員となった。
鹿島家の人達と出会う前まで、僕は前の飼い主から捨てられた捨て犬だった。
まだ幼くて小さな僕を、段ボールの中に入れて道路脇に置き去りにされた。
最初は、来る日も来る日も飼い主が戻ってくると信じて待ち続けた。
だけど…、飼い主は僕の前に現れなかった。
僕は、毎日淋しくて哭いてばかりいた。
毎日、僕の前を走り去っていく幾つもの自動車。それを見る度にあの時を思い出しちゃって苦しかった…。
そんなある日の事。僕は、いつものように段ボールの中で前の景色を見ていた。
すると、一台の自動車が道路脇で止まった。
車から出てきたのは…紛れもなく、僕を捨てていった飼い主だった。
(僕を迎えに来てくれたんだ!)
そう思って、僕は嬉しくなってシッポを振り続けた。
飼い主は少しだけ僕の顔を見て、ポケットから何かの機械を取り出して、数秒間それを見て耳に近付けて喋り出した。
僕はその時、飼い主が何をやっているのか解らなかった。
それから少し経った後、一台の大きな自動車が道路脇に停車した。
車から2人出てきた。一人は、飼い主と何か話していてもう一人は僕に近付いて来た。
その人は僕を見て、
「お前…飼い主の事情で捨てられたなんて可哀想だな…。」
と言った後、僕を抱き抱えた。
僕は、怖くなってジタバタした。だけど、逃げられなかった。
飼い主が、もう一人の人との話しが終わると、僕の方を向いて悲しい目をして見つめた後、僕に向かってこないで乗っていた車へ戻っていった。
飼い主を乗せた車は、ゆっくりと僕から遠ざかっていった…。
「待って!僕を置いてかないでよ!」
必死の思いで吠えたけど、無駄だった。車は、僕から見えなくなった。
僕は、悲しくて吠え続けた。
僕を抱え、2人が車に乗ろうとした時だった。
大きな車の前に、一台の車が止まった。
車から出てきたのは…、僕の今の飼い主である鹿島家の人達だった。
鹿島家のお父さんが僕を見てから2人に、
「すいません。この犬、私らで飼わせて頂けないでしょうか?」
と、言った。
2人は、お父さんを見て何か相談していた。
そして、僕は“保健所”っていう所に連れてかれ、数日間お医者さん達に見てもらった。
そして…、僕は鹿島家の飼い犬になったんだ。
今、僕は鹿島家の一員として生きている。
鹿島家の人達は、今でも僕を可愛がって優しく接してくれている。それが、僕は嬉しいんだ!
捨てられた時はとても悲しかった。
でも今は…とっても幸せだ。
僕を育ててくれた鹿島家のみんな…
本当に…ありがとう。