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桃色の雲の空  作者: 黒之
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7月26日

今日は天気がよく、とても暑い。

家でじっとしてるのもなんだし、駅近くの盛り場に行くことにした。

けど盛り場にゃ馬鹿そうなカップルしか居ねぇ。

胸くそ悪りぃ。帰るか。

これだから夏。特に夏休みは嫌いだ。

お前等他に行くとこないのかよ!?

コンビニよってアイスでも食いながら帰るか。

俺小豆バー好きなんだよな。

とかまぁ頭ン中で独り言言いながら小豆バー噛ってたんだ。

そしたらさ、見っけた。

何がって?聞く迄もないだろ、可愛い女の子だよ!

白いフリル付きのワンピースに薄いカーディガンてやつ?を着た女の子。

見たとこ年は俺と同じか俺より一こ二こ上な感じ。

顔が小さくて、目がぱっちりと大きくて二重。

唇はサクランボみたいに朱くて、鼻はすっと高く通ってる。

殆ど化粧してねえの。

俺男だから化粧のことよく分かんねえけど、本当にうっすら。

で艶々に光る黒くて長い髪の毛。

パッと見は大人しい感じの女の子。

完全に俺のタイプだった。絶対声かけなきゃ。そう思った。

今を逃したらぜってぇこんな可愛い娘に会えないからね。

幸い地図眺めてたから声を掛けるのは簡単だった。

俺は俺の高鳴る心臓の音を聞きながら声をかけた。

「地図なんか眺めてどうしたの?この辺だったら案内しようか」

「ホント?ここ誰も通らないから不安だったんだよね」

少し驚いたような、安心したような笑顔で言ってきた。

笑った顔もやっぱり可愛い。

鈴みたいに高くて透き通った声。

幸せだ! 今なら死んでも良い!

俺は聞いた。

「どこ行くの?」

もう心臓バクバク。

学校じゃこんな可愛い娘居ないからさ。おまけに一目惚れだし。

「んーとね、風雲荘ってとこ。あたし今度からそこに住むんだけど、道に迷っちゃって。」

てへへ、と照れたように笑う女の子。

もう心臓が破裂するんじゃねぇか?ってぐらい早く動いてる。

暑い。熱い。目眩がしてきた。

風雲荘っておい!俺が住んでるアパートじゃん!

ぁまりの偶然に狼狽しつつ尋ねる。

「へ?風雲荘ってあのアパートの?」

「うん、そうだけど、どうしたの?」

不審そうに彼女が聞き返す。

俺の顔真っ赤だなとか思いながら

「えっと…俺もそこ住んでんだよね…」

と返す。

「え?本当!?」

目茶苦茶びっくりしてるみたいだ。

そらそうだ。こんな漫画みたいな展開、俺だってびっくりだ。

でも次の瞬間もっとびっくりした。

「うん、205号室に住んでんだけど」

「うっそ私206号室に入るの!」

な? びっくりだろ?

「お隣さんかー。私は小日向優雪!優しい雪って書いてゆうきだよ。宜しくね!」

飛びっきりの笑顔で自己紹介。マジ可愛い…

俺にも春、いや夏が来たか!?

「俺は神谷司狼。狼を司るって書いて司狼。宜しく。」

同じ様にして自己紹介を返す。どこの学校に通うんだろうか?とても気になった。

だから道すがら

「優雪ちゃんは何処の高校通うの?明星女子とか?」

て聞いてみた。

すると彼女はうーん、と唸った。

んでまたまた予想外の答え。

「やっぱりそう見える?」

なにがだ?

「何が?」

「うーんとね、私もう出たんだ。高校。今二十歳」

ちょっとバツが悪そうに笑う。

「嘘ォ!? 俺より四つも上?」

「うん。ホラ」

と、財布から免許証を出す。

写真の優雪ちゃんも可愛い。じゃなくてそこには確かに生年月日昭和62年と書いてあった。

もう何でも来い。俺はもう驚かねぇぞ!

「へぇー、そうなんだ。全然見えねぇ」

「よく言われる。今は会社で経理やってるんだ。」

「お。俺商業行ってんだ。だからちぃとわかるよ。」

とか雑談しながらアパートに着いた。今日は下見らしく、すぐに電車で実家に帰るとのことだった。

見送った後、俺は幸せの絶頂に居た。

明日からは毎日が天国だ!とか考えながら。

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