↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

ヌヴェル12 風見鶏

作者: 寺澤樹生
掲載日:2026/08/29

「めずらしい風見鶏ですね。親子で風を見ているのって」

風見鶏の館に訪れたゲストは、必ずその風見鶏を見て、そう感想を漏らす。そして私は答える。

「ええ、あれは私の家内サリーと息子のトムなのですよ」と。


十年前、記者をしていたサリーは、取材先で台風に遭い、命を落としました。

そのとき、五歳だったトムは、深い悲しみに精神が不安定になりました。

来る日も来る日も、風見鶏を見て、風の向きをブツブツと言う状態が続きました。

トムはサリーと風見鶏を見て、「今、北向きの風が吹いているね」という他愛無い会話をするのが好きだったのです。

学校へ行くようになっても、時間があればトムは風見鶏を見ていました。

やがて、トムは、風見鶏にサリーの面影を見るようになってきました。

陽ざしのあたたかな日にはサリーに抱きしめられているような、風の穏やかな日にはサリーの香りに包まれているような、月明かりの夜にはサリーに子守唄を歌ってもらっているような、そんな気持ちを抱くようになってきたのです。だから、雨の日や風の強い日には「お母さんが可哀そうだ」と、ずっと風見鶏を見続けていました。


二年前、とても大きな台風がやってきました。

その台風に、風見鶏は支柱ごと飛ばされてしまいました。

そして、トムは、風見鶏の塔の下で倒れていたのです。

死んでいました。

おそらく、台風に飛ばされそうになっている風見鶏を守ろうと屋根伝いに、そこまで行ったのでしょう。

「お母さん、しっかり」と言いながら・・・。


私は、大切なものを無くしてしまった。

でも、この館の中で何故か息づいているように感じるのです。

そこで、二人のことをいつも思い出せるように、あの親子の風見鶏を作ったのです。

最近は、あの風見鶏を見て、私が風の向きをブツブツと言うようになりましてね。

そうすると、サリーとトムの笑顔が浮かんでくるんですよ。


そのとき風が吹いた。親子の風見鶏は、楽しそうに風と戯れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
宮沢賢治がもう1人、おられました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。