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名無しの天使  作者: 逢咲楓
一章
8/13

外界の都市


 廃墟となった喫茶店を、進んだ先。目の前に、一つの都市が現れた。

 「……何……コレ……」

 言葉が、出ない。街を行き交う車、親子が手を繋ぎ笑いながら歩き、頭上からはモノレールが運行している様子が目に入る。

 戸惑いを、あまりに隠せない。流石に、これには驚くほかない。

「ふふっ、驚いてる、驚いてる!。――――ようこそ、『ヴィルドシティ』へ!!」

『ヴィルドシティ』それが、ここの名称か。ここは、一体何処にあるんだ。

「さ、詳しいことはあそこで、ね」

月城が、指を差した先にある、それはこの都市の中央にそびえ立つ、摩天楼だった。





「じゃあ、……ちょーとここで待ってて、取ってくる物あるから!!」

 月城が部屋から出ていった。案内されたのは、月城の個室らしき場所、部屋に入る時隣に月城の名前が、入っていたから多分そうなんだろう。カーテーションが、下ろされておりその隙間から外を覗く。人や車の影が見にくい。ここは、地上から約二十メートルは、離れている。そう、今俺は摩天楼の中にいる。ここに、入ってくる時色々な視線を浴びて、中々辛かったから、個室はありがたかった。ここでなら、視線を浴びることもない。

「ふー、お待たせー。……眺め、良いでしょ」

「あぁ、いい眺めだ」

月城も戻って来たことだし、ソファに座る。

「……さて、何から話そうか。んー……何から聞きたい?」

「じゃあ、まずこの場所の事を……」

「オッケー!、えっーと、ねぇこの場所は、ヴィルドシティって名前の、私たち万魔殿の本拠地なの」

「じゃあ、俺が知る万魔殿の本部っていうのは……」

「うん、あれはダミー。だから天使の攻撃を受けても、私たちには何の影響もない」

万魔殿の本部は、全国五都市にある。東京を中心に、札幌、福岡、京都、仙台に戦力を分散し、日本での被害を抑えている。

「なるほど……。それで、この都市、一体何処なんだ。地下なのか?」

「ここはね……『外界』とそう呼ばれる場所」

「外界?」

言葉の意味をそのまま取るのなら、ここはこの世界の外側にある……そんな感じになるが。

「まぁ、言葉の通りそのまま。ここは、この世ではなくあの世でもない。世界の外側にある空間。宇宙を超えた先にある、不定の狭間。それが、外界」

「……じゃあ、ここはどうやって……?宇宙を超えた先って人類には、まだ無理…………あ、」

一つの可能性が頭に浮かぶ。だけど、それでも可能なのか?

「やっぱり、君を連れてきて正解だった。恐らく、君が考えてる通りだよ。とある悪魔の能力を使いこの空間を、構築した。約千の命と引き換えに」

やはり、悪魔は…………。

「ここの、存在に関しては、このぐらいかなぁー」

「なぁ、ここは安全なのか?」

「?安全だよ〜〜。心配いらないって〜」

月城は、笑いながらそう答える。だけど、ここに来たときから何故か胸の奥が、ずっとざわついている。

……気の所為だと、良いんだけど。

「……それで、俺に協力して欲しいことって」

「あぁ、あぁそうだった。えーとね、これを見て欲しい」

ようやく本題に入り、月城が何枚かの書類を渡されそれを目を通していく。書いてあることを、要約すると……。

「俺に、堕天と天使の討伐。そのサポートをして欲しい、と。その為の、資金や道具はそっちから出され、報酬も支払われる。…………超危険なバイト……みたいな感じ……か」

「バイトって程、気軽なものじゃないけど、認識はそれでおおよそ。だから、学校ではああいったけど、今からでも全然断っていいからね」

「いや、……やろう」

「け、決断早いね。ホントに大丈夫?最悪命の保証だって……」

「何も、問題ない……」月城が、パァとにこやか笑顔になる。

「えぇっと、じゃあ、契約書類取ってくるから、ごめんね」月城は、もう一度部屋を、出ていった。

恐らく、俺が断ると思っていたのだろう。学校では、勢いでいっただけで冷静に考えて、辞めると。だけど、これは……実に好都合。……通じるかな。家に居るはずの彼女――――ルナへと、テレパスをとばす。

【何〜〜?何かあったの?】

よし、通じた。早いとこ要件だけを、伝える。こんな所で天使の力を長い事使うのは、危ない。

【万魔殿に潜り込めそう。そこで、天使の討伐を手伝える】

これで、通じてくれたら……【あぁ~、そういうこと……がんばぁ〜〜】伝わったらしい、とても眠そうな声で答えられた。

――――――ルナの本当の名を、取り戻す。

それが俺の目的だ。その為なら、何でもする。彼女に、救われたあの時からそう誓ったから。

月城が戻ってきて書類を、差し出す。そこに、サインを書く。ペンの重みが、手を介して伝わってくる。

「よし!これで、星歌君。今日から君は私の、サポーター。これから、よろしくね!」

月城が、手を差し出してその手に応える。

「よろしく頼む。月城」

「じゃあ、早速君に初仕事を命じる。上原先生、彼を徹底的に調べ上げ、堕天の証拠を集めなさい」

「……上原って、堕天じゃないの?」

「あれは、私が見たままを言っただけ。確固とした証拠があるわけじゃない。もし仮に、私の勘違いだとしたら大問題。それに、私は自分が万魔殿だということを学校にはいってない。つまり……」

「なるほど、俺の方が、自由に調べ上げやすいと」

「そういうこと。あと普段は風紀委員会の仕事と、万魔殿の書類仕事があるから、中々自分では行けないの。だから、お願いね。何か分かったら遠慮なく連絡してね」

「あぁ、了解した」

「それじゃあ、これ。ハイッ」

手渡されたのは、一枚のカードだった。

「これは?」裏を、見ても何も書かれていない表には万魔殿のマークが、入ってある。

「それはね、この都市へと入るために必要不可欠な物。それが無いとここには、これないからね。使い方はね、カードを持った状態で特定の扉をくぐる。それだけ、……特定の扉の点在値は、後でメッセージアプリで送っておくね。それじゃあ、……送るよ、帰ろっか」



――――――――――――――――――


入って来た時と同じ所から出て、またあの路地裏の喫茶店へ出てきた。

「それじゃあ、頼んだよ。……また、学校でね」

月城は、そう言ってあの都市へと戻っていった。やり残した仕事があるらしい。

これで、目的へとやっと近づけた。この一年あまり、特に収穫もなく、正体を隠し天使を非効率的に倒していたが、これからは違う。情報が、得られる。これは、大きな一歩だ。そう思い、帰路へとついた。



――――――――



 空を見上げると、そこに太陽の温もりはなく、無数の輝かしい星たちが冷ややかな夜を、もたらしていた。

 無数の星を、侍らせている夜の主。月が、雲の隙間から姿を覗かせる。その月に、手を伸ばす。もっと、高い所へ。そう思い、近隣で一番高いビルのヘリポートへと飛ぶ。

 

「月に、心臓に、契約に、魂に誓いを。太陽に、脳に、盟約に、意思に、祈りを。再度誓おう、―――は、彼女の為に」これは、依存ではなく、執着でもない。

月が、光を伸ばし―――を、祝福しているかのよう。時の歯車は、動き出した。





??????


「やっと、動き出した……。早く、何とか……しないと」


一人の少女が、虚空へそう呟き、歩みを進めた。


 








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