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名無しの天使  作者: 逢咲楓
一章
7/7

万魔殿


 「は? な、何どういうこと? 上原先生が、堕天って…………」

突如として、月城が俺に語りかけてきた。その内容に、目を丸くすることしかできなかった。

 「……気づかなかった? ……あの人が、風薊さんの測定をするため水晶を持っていたでしょう? 皆、風薊さんの結果に、目が行ってしまっていたけれど、私は見逃さなかった。ほんの、微かな光だけど、青白くあの水晶は光っていた」

「……それで、そうだとしたら何で俺に? もっと、他の人それこそ、然るべきところに通報でもしたほうが……」


 そこが、疑問だ。何故、この話を俺にしてくるのかよく、分からない。

「何故って、……私は、貴方の正体を知っている」

「…………は? 俺の、正体……?」

 何故、一体何処からどうやって。今まで、完璧に証拠は消してきた。認識阻害だって、力を使う時に解いたこともない。なのに、どうやって。いや、それよりまず今、この状況をどうするか……。

思考が、ものすごい速さで巡る。

「そう、……貴方」

固唾を飲み、その言葉の続きを、待つ。俺が、予想する言葉ではないことを、祈りながら。


「天原の人間でしょう?」

「え……?」


 予想していた最悪の、展開ではなかったが、また斜め上の答えが飛んできた。

「……そ、そうだけど……」

「やっぱり、そうなのね。だったら、貴方、私に協力して」

天原……。俺の父方の姓。今、名乗っている華幻というのは、母方の姓だ。


「な、何で?」

「天原の人間は、総じて才能や身体能力が、高いものが多いからよ。……私の、同僚にもその分家がいるの。その彼女が、いっていたの本家の人間は、更に凄いって」

「そうか。……ちなみに、何で俺が天原だと……? 俺は、一回も名乗った事はないんだけど……」

「調べ上げたからよ。まぁ、軽い職権濫用みたいなものだけれど」

「なぁ、月城。……お前は、一体……」

「…………そうね、協力してもらう立場なのに、隠すのは駄目よね。…………私は、万魔殿の――――」


 後ろから足音が、すると同時「星歌ーー」という声が聞こえてくる。

「お、いたいた! って、あれツッキー? こんな所で何してんの?」

「マコト? どうしたんだ?」

「いやー、そういえばお前体調悪そうにしてたから、大丈夫かなぁーと思って。で、姿見えなかったから探してた訳」

「そ、そうか。悪いな、心配かけて」

「まぁ、ツッキーも一緒に居るなら大丈夫か!」

「花桐君!! そのツッキーっていうのやめて……ってもう居ない」


 はぁ、と溜息をつき月城が、壁に背を預けしゃがみ込む。

「……話の腰が、折られましたね。……私は、万魔殿の幹部その一人です」

万魔殿の幹部。日常会話の、延長線の様に軽く告げられる。

「…………そっか。……凄いねぇ」

「それだけですか……。もっと、驚いてくれても良いんですよ?」

「あの、雰囲気からコレじゃあ、……ね」

「……言わんとしていることは、分かります。……それで、私に協力してくれますか?」

「良いけど、ただの一般人だけど……。大丈夫? 怪我したりしない」


「大丈夫よ。貴方の事は、絶対に守るから」

「そ、月城が、そう言うなら」

ふと横を見る。いつもの、鬼の委員長の形相は、鳴りを潜め、穏やかな昼下がりの顔を覗かせる。

「……キャラ、作ってんの?」

気になって、尋ねてみる。月城は、立ち上がり背伸びをし「……意外と、上手いでしょ。にひっ」

そう言葉を、残し下へと降りていった。最後に、見せたその顔は今までの、月城からは想像も出来ないくらい眩しかった。




 『放課後、ここにきて』月城に、言われたとおりにその場所へときたのだが……。

 「…………、本当にここで、あって……るんだよなぁ」

着いた場所は、寂れ、落書きだらけで、端を見ればネズミなどが走っているような裏路地だった。匂いも、中々キツイが、進むしかない。目的地は、この奥らしい。進んでいくと、一つの看板が目に入る。


「……喫茶アルバ。―――ここだ」

窓は黒く汚れがこびり付いて所々割れており、手前にある花壇からは雑草が生い茂っている。中の様子を、伺うことはかなわなかった。扉に、手をかけ少し引く。鍵は、かかっておらず中には、入れそうだった。

「入……るか」

中の、荒れ具合を想像しながら扉を開ける。外から、覗くと中は暗闇に、覆われており何も確認出来なかった。足を、踏み入れる。ジャリと、ガラス片を踏んだような音が鳴る。後ろの扉が、閉まり光がなくなる。


「スマホをっ……と」

スマホのライトを、付け先へと進む。辺りを、照らすとやはり想像通りの荒れていた。イスは、ボロボロに朽ち果て、テーブルには傷跡が沢山ついており、カウンターも破壊されている。かつてあったであろう喫茶店の影を、想像しながら歩く。


「うぁぁぁぁぉぁ!!!」

突然、大声を上げ現れたその人は、ここに呼び出した張本人月城だった。

「何、やってるの……」

「ちぇー、つまんないのもっと、驚くかと持ったんだけど」

「この、程度で驚かないよ」

月城は、腕を組みこちらをのぞいてくる。

「何か、顔についてるのか」


「いや、きみも結構、学校と違うから。心なしか、声も低いし」

「お前程じゃない」

「ま、それもそうだよね〜。私が、違い過ぎるだけだもんね〜」

やっぱり、いつもの優等生の月城を、見てると頭がこんがらがる。

「それで、……何でこんな所に……」

「あぁ、そうだった、そうだった」

手をぽんと叩き、「じゃあ! 着いてきて」そう言って奥へと消えていく。その背を、追いかけ進んだ先には――――――。


いきなり光が、差し込んできて目が眩む。徐々に、慣れてきて、視界に映ったのは「……え、は?」

―――――――――――――巨大な都市が、現れた。











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