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名無しの天使  作者: 逢咲楓
一章
6/8

ドッキドッキの測定


 体育の時間が、やってきた。ここで、俺がするべきことは唯一つ。絶対に、『堕天』だとバレないようにすることだ。


『堕天』読んで字の如く、天使が悪魔に堕ちるという意味だが、もう一つ別の意味がある。それは、[天使に堕とされた人間]。堕天となった人間は、その時点で大罪人。故に、バレる訳にはいかない。


「よぉーし、全員揃ってるなぁー。じゃあ、これから魔装値の測定を始めてくぞー!」

体育の担当教師、上原芳正先生が準備を進めていく。

測定と、いってもそんなに大それたものじゃない。ただ、よく分からんあの水晶の上に、手をかざす。そうすると、どのくらい悪魔との相性が良いか分かる。その時、もし天使との関係があれば水晶が青白く光輝く。それで一発で終わりだ。



「よし、じゃあ……順番は、どうしようか……。出席番号順で、やってもらおうか。じゃあ、1番は……えー、青山来い、他の奴等も自分の番が来たら、並んどけよー」

自分の番は、数えて7番目。その間に、することそれは……。

「ふぅ〜〜」

自分の中に、感じれるルナとの契約。その結び付きを、できる限り解くこと。契約とは、互いに縛り合うこと、ならばその結び付きを弱くすれば回避することが出来る。


今までも、ずっとこうして来たからだ。だが、気をつけなければならないのは、結び付きを弱くしすぎれば契約は、途切れてしまうこと。外部からの、要因で途切れたのならば、再度契約することは可能だが、自らしてしまうと二度と契約は、出来なくなってしまう。


だから、これは慎重にやらねばならない。ルナとの契約は、絶対に切ってはいけない。もし、切ってしまえば何があろうと、後悔する。故に、神経を研ぎ澄まし集中する。

(…………慎重に、慎重に……)

少しでも、気を抜けば終わりだ。契約の核となる部分を、ゆっくりと、ゆっくりとできる限り薄く小さくする。


「………………ん! …………げん! ……華幻! 次、お前の番だぞ!!」

先生に、名を呼ばれ向かう。水晶の前に立ち、手を伸ばす。心臓が、鼓膜に直接鼓動をぶつける。顔も、若干青褪めているのが、自分でもわかる。息をしているのか分からない、恐らく上手く出来ていないのだろう。


(できる限りの事はやった……頼む…………)

「…………、反応なしか……よし、次!!」

水晶は、何も反応しなかったらしい。

(よかった〜〜…………)

安堵で、息が漏れる。心臓の鼓動も、心地の良い音に変わる。取り敢えず、座っていたところに戻る。


即座に、契約の核を本来の形へと戻す。これで、大丈夫……はぁー……。やっぱりこれは、心臓に悪い。

「…………おい、大丈夫か? 顔色悪いぞ?」

マコトが、横から声をかけられる。

「だ……大丈夫、元気……だからさ」

「嘘つけ、はぁー……ま、体調悪くなったらすぐ言えよ」

「あぁ、ありがと」


体調が、悪くなったのを見抜かれてしまった。……もう少し、上手く隠せるようにならないと。あまり、面倒くさい事にはしたくないからな。

それに、あんまり心配かけるのも悪いしな。

そうして、しばらく息を整えていると、一人の生徒が嫌がって反抗しているのが、目に入る。雅だ。


「い、いやです……、目立ちたくなぁい〜〜……」

「ただ手をかざすだけだ、はーやーく、しーろ!」

長い髪を、ぶんぶん振り回しながら抵抗を、続けている雅。

上原先生が、水晶を持って雅の周りを旋回している。

雅が、嫌がる理由……それは、

「……あ!! 花桐が、艶めかしい格好を、しているぞ!!」

「え!! どこ!!」

「今だ!!」

雅の手に水晶が触れた。瞬間、水晶は深く沈む闇を映し出した。それを、見ていた生徒たちは、小さく驚嘆の声を上げる。

「なっ……! 先生……やっ、やってくれ……」

「……よし、次!!」

先生は、何事もなかったかのように測定を再開し始めた。


「ねぇ、……今のって……」「やっぱり、噂のとおりだったのかぁ……」ざわざわ、している空気を、作り出した本人は、顔を赤くしている。

嫌がっていた理由が、これだ。雅は、魔装値の値が高いのが、コンプレックスらしい。注目されるのが、苦手な彼女からしたら、嫌でも注目を集める的になってしまう。中学生の時も、同じ目に遭ったらしい。


だから、コレが嫌で抵抗していたわけだ。マコトが、雅を隠すようにして、落ち着かせている。…………。

その後も、つつがなく測定は続き、

「よし!! これで、全員やったな!! じゃあ、今から…………残りの時間、各自でやりたいことをやれ!」

そう言い渡された、一部の男子生徒は、はしゃいでボールを取りに行った。同じように、女子生徒も遅れて色々な物を取りに行った。


さて、俺は何をしようか考えていると……。

「ねぇ、ちょっと、こっち来て……」

月城から、耳打ちをされる。

「え、あぁ……」

よく分からないが、取り敢えずついていくことにした。階段を、登って体育館2階の、踊り場で立ち止まる。

「……先生は、……一緒に、遊んでいるのね。よし」

「で、いきなり何のよう? ま、まさかこ、こくは……」

「違う!! ……上原先生の事。あの人、…………堕天よ」










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