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名無しの天使  作者: 逢咲楓
一章 あれから
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学校


 青藍高等学校。それは、俺が通っている高校の名前だ。特に、これといった特色もない至って普通の学校。生徒数も、マンモス校に比べれば少ないが、それでも多い。確か……、進学校?みたいな話しは聞いたことある気がする。正直あまり分かってない。


そこへは、徒歩で大体二十分位の距離。朝の運動としては、丁度良いくらいだと思う。自転車も、あるがあまり使わずに歩きたい。歩きだと、何か新しい物が発見できるかもしれないから、だから敢えてルートを、変えることもある。


 学校が、近づいてきたからかチラホラと、同じ制服が目に入る。校門前に着くと、いくつかの生徒がバインダーを持って何かしていた。

「……風紀」

腕に、そう書かれたワッペンを着けていた。


そうだった、持ち物検査の日だった。皆机の上に鞄を乗せて中を見せている。完璧に忘れていた。まぁ、余計なものは何も入れてないし大丈夫か。

でも、何か見られたくないからなるべく存在感を消して、素通りを試そう。よし、そうしよう。


「…………」

「ねぇ、何やってるの?」

声を掛けられた。気の所為だな。

「止まりなさい!〜〜華幻さん!!」

名前を、呼ばれてしまった。

「やぁ~、おはよう。月城さん……」

「はい、おはようございます。ではなくて!!何故、一回無視したのですか!!」

「ん?あぁごめん。考え事してて、何も聞いてなかった」


嘘である。めっちゃ、聞こえてたし何なら一瞬止まってしまった。

「はぁーー…………、まぁ良いです。荷物検査させてもらいますからね」

「はいよ」

特に、やましい事もないのでスッと鞄の中を見せる。

月城円香、同じクラスの委員長。黒髪のストレートに、紅の瞳を持っている。性格は、凄い真面目で勉強も出来る、委員長キャラを地で行っている。風紀委員会の副委員長もやって面倒くさくないのだろうか。ちなみに、良い子なんだが怒られる時が、一番怖い。


「……なんですか、さっきからジロジロと、何か顔についていますか?」

「いや、やっぱり美人だなぁ、と」

顔立ちも、凄い整っている。大和撫子的な雰囲気を醸し出している。密かに、ファンクラブ的なのもあるらしい。本人は、知らないと思うけど。

「〜〜〜〜〜華幻さん!!!そういった事を、軽々しく言うのをやめなさい!いつか誤解を招きますよ!」

「思った事を、言っただけだけど……」


「それを、心の中に!しまって置きなさい!!……ったく。……ん?華幻さんこれは、一体」

「これって…………はァッ!?」

取り出されたのは、ゲーム機三台と一枚のメモだった。

「え、は、な何で」

「こーんな、正々堂々私の目の前に、持ってくるなんて、良い度胸してますね」

「い、いや、違う俺は持ってきていない!!……あ」

思い当たる人物など1人しかいない。


メモを、見ると『星歌、学校、暇そう……だから、入れておいて上げた……みっつ入れたから、友達と遊べるよ。』と書かれていた。

「ふぅーー、なるほどなるほど」

「それで、言い訳は?今なら聞いてあげますが」

「何も……ありません…………」

「そうですか。では、行きますよ」

「行くって、何処に?」


「決まってます。指導室ですよ。良かったですね、今日は私自ら、徹底的に説教させてもらいますから」

「い、いやぁ、そ、そういうのは畑中先生の役目じゃ」畑中先生とは、生活指導担当の先生で、めちゃくちゃ優しいおじいちゃんである。

「いいえ、畑中先生には少々失礼ですが、あの方は甘いにも程がある。ですので、基本的には、風紀委員会が指導を行っています。ですから、さ、行きますよ」

「え、えーとほら、持ち場離れたら不味いんじゃない?」何とか回避できないか、あがく。


「すいません、後はよろしくお願いしても構いませんか」後輩の子に、確認をとっている。後輩が、サムズアップをしている。終わった。

「さ、行きますよ」

「ふっ……こういうときは、逃げるが勝っ……ぐうぇッ」

いつの間にか、首に鎖が巻きついていた。そうだった、彼女の悪魔の力は鎖を操る力で、あることを忘れていた。


「まったく……」

そのまま、俺は引きづられながら指導室へと連れて行かれた。

「じ、自分で歩くからせめて立たせて。摩擦で凄い熱いし制服ボロボロに汚れちゃう。お願いだから」



――――――――――――――――――――――


 教室のドアを開ける。教室の中は、まだホームルームの前だから各々自由に過ごしていた。

 取り敢えず、席へと向かう。ふらふら、歩きながらも席に座り、うつ伏せる。

「うぅ……痛い……」


あの後、指導室で約三十分間ずっと説教をされていた。ゲーム機は、当然全て没収された。

「おーおー、こりゃまた、こってり絞られてきたかーー?」

前の席に座り、若干笑いが含まれたような語彙で、話しかけてきたのは「うるさい、……マコト」友達である、花桐マコト。


誰に対しても明るく、どんな人にも優しく、それでいてスポーツ万能。先生達からの、信頼も厚いとても良いやつ。それが、花桐マコトだ。ついでに身長も高い。

「お前も、同じ目に遭えば良いのに……」

「へっ、ぜっーたい、やだね。……それよりさ〜〜、聞いてくれよ〜〜。実は〜」

「彼女の話か?」


「そうそう、でな雅のやつがなんと!!、格闘ゲームの世界ランク5位になったんだよ〜〜。すごくね!!」

「おぉ、そりゃ確かに凄いな」

「だろー、実は今朝bondで教えてくれてな、お前に話そうって決めてたんだよ」

Bondとは、連絡アプリの事だ。多分、この国では一番主流になってると思う。時々、こいつから、変なのが送られてくる。


「そういや、今日雅は?」

「あー、もうすぐ来るんじゃないか」

教室のドアが開く。

「噂を、すればじゃないか?」

地面に、付きそうなほど長い黒髪。ちょこん、こんな効果音が聴こえてきそうなぐらいの身長。髪の隙間から覗かせる顔は可愛い小動物の愛くるしさ。それが、マコトの彼女、風薊(かざみ)雅。


「みーやび〜、おはよ〜」

マコトが、席を飛び一目散に雅の方へと向かった。

「お、おはよ……マー君。す、すご、元気だね」

「そりゃ、もう雅に会えただけで、活力が無限に湧いてくるってもんさ!」

「そ、そう?//なら、うれしい」

二人手を繋ぎ、こちらへと歩いてくる。


「せ、星歌君、おはよう、ございます」

「あぁ、おはよ、雅」

「雅、ここ座って髪結ぶから」

「ありがと、マー君。……お願いします」

これは、大体毎朝の光景だ。雅の髪を、マコトが結ぶ。慣れた手付きで、あの長い髪がまとまっていく。

家で、結んでもらわないのか一回聞いたことがあるが、マー君にやってほしいらしい。今も、ずっと嬉しそうな顔をしている。


「よしっ!これで、どう?可愛くできたと思うけど」

「うん!ありがと、マー君」

「いつも、思うけど本当にすげーな。それどうやってんの?」

後ろも、綺麗に結ばれてあるし前髪もわけられて顔を、見やすくなっている。

「慣れだよ、慣れ」

「流石、幼馴染だな」


「フッ、そうでもあるだろ、いやそうしかないな。ハッハッハ」

「星歌君、どうでしょう、か」

「十分、似合ってるよ」

「十分???」

マコトに胸ぐらを、つかまれ圧をかけられる。失言だった。

「いえ、大変良くお似合いです」

「それで、よろしい」


ばっ、と手を離される。雅の事になると、すぐ手を出してくるんだから。

「ふふっ……ありがと、星歌君。マー君!だめすぐに手を出しちゃー、めっ!顔、下げて」

マコトは、言われたとおり顔を下げる。多分、デコピンするんだろうけど……。

「ん〜〜〜、えいっ!」


音も、何もしないデコピンが、マコトに当たる。痛がってる様子はない。当たり前だ。雅の力は、マコト曰く赤ちゃんと大差ないらしい。

「はぁ、はぁ、全力込めてやったよ、どう痛かった、でしょ。次、星歌君に、はぁ、謝って。ゔへぇっ」

傍から見るほうが、心配になってくる。

「すまん、星歌!」

「…………カツ丼定食」

「ぐっ……いいだろう」

「それでこそだよ」

勢い良く、トビラが開くと同時に、緩い声が聴こえてくる。


「はぁ〜い、みなさ〜ん。席に座って〜。ホームルーム、や〜るよ〜」

時計を見ると、45分になっている。いつの間にか、そんな時間になっていたようだ。

ふたりとも、自分の席へと向かう。

「皆、自分の席に、ついたね〜〜。じゃあ〜、今からホームルームを始めま〜す」

このクラスの担任の先生、阿莉方麻沙美(ありかたまさみ)先生が、そう告げた。














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