日常
朝日が、カーテンの隙間を縫って差し込んできて意識が覚醒する。時刻を確認すると、時計の針は午前六時を指していた。
「ンッ〜〜……と」
軽く背伸びをする。昨日は、割と色々な事があった。天使との対峙、変な悪魔の誘い、それと元最上位天使への名付け。
「ふぁ〜〜あ、……さっさと支度するか」
床に、散らばっている教科書類を一通り集め、必要なものだけをカバンに入れていく。確か……今日は、体育もあった筈だから、タンスから体操服を取り出す。適当に入れたカバンが、水風船みたいに破裂しそうになっているが、まぁ良いだろう。
「……お腹、空いたな……」
部屋を出て、リビングへと向かう。カーテンは、閉め切っておりその様子から、ルナがまだ寝ている事が分かった。ひとまず、カーテンと窓を開けて換気をする。優しい風が、吹き新しい朝を歓迎しているようでもあった。しばらく、このまま開けていよう。
台所にあるポットに、水を入れお湯を沸かす。上の棚にある、カップ焼きそばを取り袋を剥いでおく。朝から、これか…………。ちなみに、冷蔵庫の中は何も入ってなかった。いくつかの、調味料があるだけ。
「……まぁ、好きだし、いいか」
そこで、少し実家の時の事を思い出した。毎食、きっちりと出ていたなぁーと。実家といえば、……父さんと彩奏は、元気だろうか。もう何年も会っていないが。
「……あっ!!ち!」
ボッーと、してたあまりお湯を誤って自分の手にもかけてしまった。焼きそばにも、お湯がなみなみに注がれており、基準の線を優に越していた。
「うぅ……はぁ……、珈琲でも飲も……」
落ち込んだ気分の時は、カフェインを摂取すれば大抵良くなる、という持論があるので飲むことにする。
コーヒーマシンに水を入れる。注がれる部分の上をカパッと外し、そこにペーパーを敷き、コーヒー粉を大さじ2杯ぐらい入れ蓋を閉める。スイッチを入れ、しばらくするとポタ、ポタと貯まっていくため、後は待つだけだ。
焼きそばのお湯を、捨て、ソースをかける。すっごくみずっぽい、感じになった。それを持って、テーブルへと腰をかける。テレビのリモコンを、取り電源を入れる。
「いつもの、ところはっ……と」
毎朝、見ているニュース番組をつける。正直、ニュースなどあまり興味はないが、見ていた方がなんか朝っぽい感じがしてカッコいいから見ている。
「……芸能人の、不倫とかなんてどうでもいいよ……。個々人で話し合うものだろ……」
最近というと、大抵この話題だ。どっかの大物俳優が、若い美人女優と懇ろな関係、だって話。もっと天使に関する事を、言えば良いのに。
そんな、何処にもいかない愚痴を吐いていると、耳を引く内容の物が入ってきた。
『昨夜未明、天津市北原区にて出現した天使により、万魔殿の一員である御名方敦也氏、風海佑磨氏、水上譲二氏の死亡が確認されました。警察…………』
「……三人?あれ……もう一人居たはずじゃ……」
今出てきた名前は、三人。だが、あの時もう一人女が居たはずだ。確か嘘虚って呼ばれてたような。一体どういう事なんだろ、実はあの時、生きていたのか。
だとしたら、俺の姿を見たはず……それは、非常に不味い。………まぁ、何かあってからでもいいか。様子見だ。
ガチャッ、とドアの開く音がする。
「おふぁよ〜〜……うぅ……」
髪が、凄い形に爆発している。一種の妖怪みたいに、見えなくもない。ルナは、目を擦りながら此方へ来ている。そして、ちょこんと俺の膝に座った。爆発した髪が、鼻とかに当たってこそばゆい。
「ねぇ、……ひとまずこの髪、直そっか」
「……うぃ……ふぅぁ〜……」
そういうとルナは、洗面台へと向かっていった。……何で、わざわざこっちに来たんだろう。そんなことを思いながら、残っている焼きそばをかけこんだ。
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そんなこんなしていると、あっという間に登校時間になった。朝というのは時間が過ぎるのが速い。
「じゃあ、行ってくるよ」
「いってらしゃいませ、マスター」
「……何それ」
「……ふふっ、カッコいい……でしょ……」
「…………まぁ、確かに」
「やっぱり、星歌……センス◎」
「はいはい、じゃ留守宜しくね」
そう言ってドアを、開けて学校へと向かった。