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名無しの天使  作者: 逢咲楓
3章 天下楽園
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舞踏


 雲雀が、一歩踏み出すと景色が変わり、月城と男の背が目に入る。斧を、変貌させ攻撃する直前で、また景色が変わって今度は、距離をとっている。

「何で、距離を……って、なるほど」

先程までの場所に、無数の鎖が突き刺さっていた。斧を振るい、矢を切り落とす。あの男も、油断ならないこっちが距離をとった直後に、矢を放ってきた。

「ねぇ、雲雀の能力って、テレポートで合ってる?」

「あぁ、そうだよ。あたしに認識できる範囲ならどこへでも、自由にとべる」 

「だったら、試したい事がある……」

「へぇ、何すんだ?」

「可能な限り、テレポートし続けて欲しい」

「いいぜ、何するかはオメェに任せる……いくぞ」

 瞬間、月城たちの背後に再び現れ、空間排除の能力を持つ斧で攻撃。今度は、上空から攻撃。海の上から攻撃。森の中から攻撃。空間排除は、斧の軌道を読めれば防御できる。もしくは、間に障害物があれば簡単に防げる。あくまで、空間を排除しているだけで、やっていることは斧で斬りつけてるだけ。

相手との距離を詰める過程をすっ飛ばしているだけ。

 雲雀のテレポートと合わさると、どこからともなく、斬りつけられる、実質不可視の斬撃が出来上がる。

実際、彼等はこれに対処できていない様子だった。

「なるほど、…………いいじゃねぇか。続けるぞ!」

更に、加速し、景色が目まぐるしく変わる。あまりの激しさに、脳が追いついて来ていない。視界が、ぐるぐると、回り始めていく。目を閉じ、気配で攻撃する。彼等の、魔力を頼りに攻撃を続けていく。






「がっ!!……ぐはっ!!」

「ぐっ!!」

まさか、こんな一方的に、やられるなんて。思ってもいなかった。こいつの能力じゃ、これを防げないよね。しょうがないか。

「フッ!!」

鎖を、出して私達を囲む。鎖が、切られる音がするも、私達への斬撃は止んだ。どうやら、貫通はしてこないらしい。

「…………犬飼、誰の指示で私を監視しろと言われた……」

「ふ、言いませんよ。あの方は、貴方の失脚を願われているので」

「……來間か……」

「伏せた意味が、ありませんでしたね。それよりも、聞きたいのですが、あの堕天と貴方、どういう関係なんです? 認識阻害が、かかっているので顔の特定は叶いませんが、貴方はあの堕天と知り合いのようですが……」

「…………」

「まぁ、この事は、上に報告するだけです。貴方が、堕天とつながっているとね。あれに、呼び出されたのでしょう? スマホを、しきりに確認していましたものね」

がぎんっ、がぎんっ、鎖が、断たれる音が近づいてくる。犬飼……この男は、ここで、消さなければ。

「グオっ……ッ!! ど、同胞を手に掛け……」

鎖で、心臓を一指しし、息の根をとめる。犬飼が、地面に倒れ込み、砂埃が舞う。まさか、殺されるとは、思ってもいなかったのだろう。だって、コイツは。

「はぁ、万魔殿の裏切り者が。同胞なんて……反吐が出る」

犬飼は、万魔殿にいる裏切り者の内の1人だった。いつ消そうか迷っていたが、タイミングが良かった。

これで、來間も裏切り者の可能性が出てきたな。

鎖を、解除し、潮風が吹き込み、月明かりに照らされている。

斬撃は……、止んだみたいだね。






鎖が、解かれると、中から月城と男の死体が、出てきた。―――――は? 一体何があったんだ。

「あそこに、移動できる?」

月城が、いる所を指差し「……はいよ」月城と死体の、目の前に、着地する。

雲雀が、月城めがけ、蹴りをかます。それを、軽々しく避けて、鎖で反撃した時には、雲雀はそこにはいなかった。俺と月城だけに、なってくれた。今なら。


「星歌君、いやぁ~、ごめんね。コイツが、中々しつこくて。でも、君が連絡をして、呼び出してくれたおかげで、裏切り者を排除することが出来たよ」

彼女に話しかけようとしたら、あちらから話しかけてきた。

「……何も、思わないのか」

「…………堕天であること? 特にかなぁ。だって、知ってたし」

「…………は? 一体、いつ?」

「上原と戦った後、意識がなくなった君の、身体が、突然、祈力で包まれたからかな。何も、しなかったのは君が、害あるものだとは思わないという、私の独断」

あの後……ルナが、バレない範囲で回復しようと、してくれてたんだろう。

「……月城、着いてきて欲しい」

彼女に、手を差し出す。静寂を、波打つ海の音でいっぱいにする。


「いいよー。……そちらの、お仲間さんにも興味あるし」

「雲雀……。大丈夫、彼女は……」

「やっぱし、敵だったか。テメェ、万魔殿の奴とつるんであたし達を、売ろうとしたってのかぁ?」

「違う。コイツは、味方だ。敵意は……」

「そりゃ、お前からしたら、味方だろうな。でもな、それは私達には、当てはまんねぇだよ!!」

彼女が、姿を消し直後、吹き飛され、その先でもまた、今度は空中に蹴り上げられる。

「…………」

黙って、受け入れるしかない。地面に、激突し、全身を強打する。大の字に、なり倒れていると、上からのしかかられる。彼女の顔には、血管が浮き出ており、肌の色も、朱色に染まっている。


「はぁ、はぁ。不来方とアリナには、お前は裏切り者で、ぶっ殺しておいたって事にしとくから。二度と、面見せんじゃねぇぞ」

「俺は、君の敵ではない」

「まだ! そんな事を!」

感情で、せめても勝てそうにない、ならばどうするか合理的に判断させる。

「よく考えてみろ。お前たちが、相手取ろうとしてるのは、天下楽園、あの映像にも映っていたが、幹部の様な奴等でも、十は超えていた。それを、たったの三で戦うというのか?」

「あぁ、そうだ! だが、それがどうした! 数で、日和って戦えなくなるほど、腰抜けじゃねぇ。そんなもん、こっちの質が高いからどうとでもなる」

「はっ……! 馬鹿かよ。彼奴等は、甘っちょろい考えでどうにかなるわけないだろ! 数も質も、あるから万魔殿に喧嘩売ったんだろ。少しは、考えろ。このクソギャルが……」


顔に、拳が飛んできた。何度も、何度も。

「黙れ!! 私がクソならテメェはカスだ。スカした顔してグダグダ御託並べやがって!」

そこから、タコ殴りが始まった。途中、意識が飛びそうになる。祈力を使い回復、また殴られ、回復を繰り返し、十分位経った頃に拳の雨は止んだ。

「気は、済んだか? あ、短絡的にしか、考えられないクソゴリラだから、これから何言っても無駄か! ハハッ」

「煽ってきやがって!! この……」

「利用すればいい」

飛んできた拳が、目の前でとどまる。今なら、話を聞いてくれそう、その直感にかける。


「俺も、彼女も使えるもの全て使って、お前の目的を、なしたらいい。俺だって、そうだ。目的のために彼女やお前らだって、使うつもりだ」

「使えるものを……」

「そうだ。俺と彼女は、便利な道具になる。持っておいて損はない。後悔もさせない。必ず、頼りになる」

傷が、段々と治っていく。視界が、赤く染まっていたが、元の色を取り戻していく。彼女の顔にも、落ち着きが出てきた。顎に、手を当て考え込んでいる。

「…………確かに、お前らを使ったほうが、メリットが大きい。ふっ…………なら、一生こき使ってやる」

彼女が、腹の上から降りて立ち上がる。腹から重りがなくなったので、スッと立ち上がり、砂を、払う。

「話し合いは、おわったかい?」

月城……。さっきまで、ずーっと見ていて途中で、笑ってたの目に入ってたからな。

「月城……だったか? 白茅だ。お前には、着いてきてもらう」

「白茅さんね、はいよー」

白茅が、月城の手を取り、左手をこちらに差し出してくる。

その左手を、掴み移動が始まった。
































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