真の協力
彼女が、倒れている周りには、無数の鎖が散らばり、地に叩きつけられている。
こちらを、強く睨んで来て、鎖を飛ばしてくる。頬を掠め取り、粒子となり消えてゆく。頬を流れ、落ちる赤い涙を滴らせ、彼女へと近づく。
「ッ!! こ、殺しなさい!」
「殺さない。君には、協力してほしいから」
「堕天に……協力なんて!!」
彼女の、拳から血がこぼれ落ちる。
「死んだ……ほうがッ! マシよ!」
「……?」
彼女の言葉に、どこか違和感を覚える。彼女は、このような、事を言うのだろうか。素の彼女なら、もう少し違う反応を、示すと思っていたが、今の彼女は、何故か皮を被っている様に思える。
「うっ……くっ……」
彼女が、腕を必死に持ち上げ、足元まで届かせる。靴の上に、血の滲んだ紙が置かれた。
「…………?」
屈んで、紙を広げる。血で、濡れてるからか開きづらい。
『気を付けて、監視されている』
血が、一部分だけ弾かれている所を読むとそう書かれていた。
「監視……?」
「ッ! 避け……!!」
彼女が、声を遠くから荒げるのが聞こえた。口の中が、塩辛くなる。目にも、入ったのかしばしばとしてしまう。
「げほっ、ゲホッ……だ、誰?」
「おやまぁ、あれで仕留めたと思ったんですけどねぇ。月城さん……いい足止めでしたよ」
「……犬飼……何故、出てきた」
「何故って、そりゃぁ、月城さんが殺られそうになってたから。助けないとなぁ、と思って」
黒いキノコの様な髪、全身を、闇に溶け込める黒で染めている男が、そこにいた。その男の手には、弓が握られていた。
なるほど、さっきのは弓矢で攻撃されたのか。直前、とっさに斧で防いだおかげで、助かったけど重力を解除してしまった。重力を何倍にも、重く掛けていたのに、何故届いた?
「……考えても、仕方ない」
いくつかの、候補は浮かんだものの、それはあくまで推測。見定めないと。
「さて、と……どうしようかね」
状況は一対二、月城は、恐らくアイツがいる以上あちら側だろう。月城だけでも、きついのに、更に、遠距離がプラス、っていうのが拍車をかけている。
最悪、ルナを呼ぶしかない……か。正直、彼女にはあまり戦わせたくないけど……。スマホが、震える。
「もうすぐ、着く?」
届いたメッセージを、読む。相手は、誰だ?
「……何で、彼女が?」
顔を上げると、目の前に、矢が飛んできた。あ。防御、間に合わない。
そう思った直後、景色が変わる。先程まで、いた場所が、小さく見え、海の水平線が更に遠くまで見渡せる。
「はぁ……ったく、何であたしが……」
「雲雀? な、何でここに?」
白茅雲雀に、摘まれ空中に留まっている。
「不来方の、おっさんにお前を、見守るよう言われたんだよ。あたしは、嫌だっ、つったのに」
「不来方が?」
俺を、見守る理由なんて何処にあるんだ。まだ、信用されることなんて何もしていない。それに、黙って教会から抜け出してきたってのに。
「そうだよ。お前の後を追いかけるようにって。どこか行くのが見えたからだってさ。それでついてきたらこの現状。はぁ〜、めんどぉ……」
「すまん……。それより、ここからどうするんだ」
段々と、地面がこちらを、迎える準備をしてきている。
「え、あぁ……大丈夫、大丈夫」
さざ波の音が、耳に届く。地に足がついている。
「ね、……さてと、あいつら、ぶっ殺すか。……天下楽園との戦いの前に、お前を信頼したかったからな。ちょうどいい機会だ。いくぞ、星歌」
「…………どうしよう……」
嘆きは、波の音にさらわれた。隣で、雲雀が構えをとっている。こうなったら、やるしかない……。
あの男だけを、殺して月城を、捕縛する。




