表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名無しの天使  作者: 逢咲楓
一章 あれから
2/26

月と星


「そういえば、……なぁ、これって」

ポケットから指輪を、取り出す。

リビングのテーブルに、顔を俯せていた彼女が起き上がる。

「おー、……何処で、見つけ、たの〜?」

「さっき助けた女の子が、持ってたんだ。危ないもの、と言って貰ったんだが」

「ふーん、これの……せいだね。あの子が、狙われたの……。………あ、……中々な、悪魔がふうじられてるよ」

指輪を、転がし遊びながら、彼女はそう話す。一瞬怪訝そうな顔をしていたが、すぐさまいつものダランとした顔に戻った。

「それで、これ、どうするの〜?」

「それを、利用して假名を作れるんじゃないかと思って」

「……あ〜、なるほど〜、…………やって、みましょっい」

彼女は、そう言った直後指輪を口に含んだ。バギ、ボキ、と石を砕く音が聞こえる。それを、飲み込んだ直後彼女は動かなくなってしまった。

「……大丈夫か?」

心配し、声をかけた瞬間、

魔力と祈力が織り交ぜながら吹き荒れた。

「うぉっ、!!」

家の物が、散乱し顔に椅子が飛んできてそれを、既で避ける。中心には、神々しい姿をした彼女がいる。

『必要な、条件を……満たした……[あれ]には届かず、……代用……取り戻せし。今は、…………これで』

『魔力、変換……sxえ4r4の名の元、……源生、構築、、再現、現象、集約。完成』

此方に向き直しながら、

『――――假名を、』

この嵐の中心である彼女が、そう呟く。いつもより低く、威厳を孕んだ声で。

「假名……?名付けろって、事だよな……」

名前を俺は知らない。彼女の元々の名を。

昔、彼女と出会った時に聞いたことはある、だが分からなかった。より正確に言えば、聞き取れなかった。あの時の言葉は、人間の言語じゃなかった。名を剥奪された天使は、全ての力を取られると同時に誰にも本名を伝える事が出来ない。

「名は…………」

未だ力が渦巻く彼女の方へと近づき、彼女の手を取り宣言する。

『ルナ』

そう彼女に、告げる。

彼女……ルナの方を向くと、穏やかな顔を覗かせていた。祈力の嵐も、次第に収まっている。

「…………ルナ。ふふっ……ルナ」

小さな声で、何度も反芻している。よほど嬉しいのだろう、ぴょこぴょこ飛んでるし。それに、もみあげ付近の毛が、パタパタしている。これは、ルナが喜んだ時のサインだ。多分今までも、そうだったし。

「星歌、…………ありが、とう!!」

ルナが、此方の胸に飛び込んできた。ガシッ、とホールドされてしまった。顔をグリグリしてくる。

「いやぁ、……そこまで喜ばれるとは、思ってなかったなぁ」

実際、もっと淡白に終わる想定をしていた。これまでのルナからは、あまり想像が出来ない姿だったから。

「それと、なんか少し変わった?前よりも、幾らか話しやすくなった、よね?」

「假名を、つけられたことで、本来の私に少〜〜し近づいたからね…………。今までは、ね……」

そういうものなのだろう、と勝手に納得してしまい、この事にはもう触れない。

「……ところで、いつまで抱きついてるの……そろそろ片付けたいんだけど……」

「ん?あぁ、これね……ちょっと待ってね。ん〜〜〜、ホイッ」

ルナが、指先に祈力を集中させると荒れまくっていた部屋がみるみる内に、元通りになっていく。まるで、時を遡っているような。

「これで、どう……?」

「…………」

部屋は、一瞬にして元通りになった。割れたガラスやビリビリに破けた本さえも、何もかも。

「これはね、時を戻す……そんな力なの……といっても出来るのは5分以内が、限度だけど」

「それも、假名をつけた影響……?」

「そう……私に、とって名はとても重要、あるかないかで、雲泥の差がでる……。なにせ私は……元、冠位位階神位第5位の天使だったから」

「…………マジ?」

「?……大マジー」

「えっ……どうして今まで、教えてくれなかったの?」

「?言ってたけど……多分……あなたには未知の言語で、聞こえてたんだと思う、けど…………」

とんでもない事を、平然と何事も無いように言ってくれた。ルナは、……今もずっと抱きついてる彼女は。

世界に、十二しかいない冠位を持つ天使の一人だった。

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ