楽園の在処
天下楽園の話題で、世間は持ちきりだった。まぁ、それはそうだろう。奴らの要求、万魔殿の解体。
それが、なされることは絶対に無い。彼等も、それぐらい分かっているだろう。つまりあれは、宣戦布告だ。
「……でも、どうやって……勝つつもりなんだ」
宣戦布告したからには、彼等にも何か勝機があってのことだと思うけど。人的リソースで、勝てるわけ無いし資金面でも無理だし。……個人の能力……それも違うないくら個で強かろうと数の暴力には抗えない。
「数の暴力……。灰色の天使か……」
だけど、あの天使そこまで強そうには見えなかった。
「さて、どうやって探そうか」
天下楽園を、探す方法。……月城に、聞いてみるか。
アイツ、今忙しいだろうしな、やめておこう。
【なぁ、ルナ。彼等の居場所、探す方法ある?】
テレパスで、確認をとる。
【……ない。けど、面白いものがあるよ。私の視界、見える?】
彼女の視界が、脳に直接映し出される。彼女が、カタカタとキーボードを打ち、とあるサイトを表示した。
【ほら、これ見て。天下楽園の、在処だって】
彼女が、出したサイトは如何にもなオカルトサイトで、明らかにイタズラで作られたものだ。その記事、だけでなく、その他の記事も、都市伝説みたいなものが多い。
【それ……はぁ、まぁ良いか。えぇと……
「楽園は、自然に芽生えており、そこは神の祝福を得られる場所。
あなたが、強く望めばそこに姿を現しましょう。ただし、魔に落ちし罪人では現れない。純白の、穢れ無き存在でなければならない。星が巡り天に近づく、その日まで。心よりお待ちしております」
これが、天下楽園の居場所?】
【そうみたい、まぁ頑張って、探してね。何かあったら言うから】プツンッ
そう言われテレパスは、途絶えた。
よし、考えても仕方ない。外に、出たんだし……本屋にでも行くか。
「なぁ、マコト。何で俺たち、山にいるんだ?」
「さぁ、知らん。雅に、聞いてくれーー」
今、俺達は山にいる。天津にある、音倉山。そこで今山登りをしている。
「雅、何で急に山登りなんか?」
「ふふん。これだよ!」
雅が、スマホの画面を見せてくる。マコトも横から同時に見ている。
その画面には、見覚えがある。昨日、ルナが開いたオカルトサイトそれと全く同じものが表示されていた。
「ここにある、天下楽園の在処って所のヒント。それと、このサイトの二年前の記事にね写真が載ってるの。その写真が何処で撮られたか探したらこの山だったの。だから、探しに行こう!!」
「そんな、お宝探しみたいなテンションで言われても」
雅、こういうの好きだもんなぁ。髪の毛を全て、お団子にして気合いれてるもの。格好だって、動きやすい山登りの服をきている。この為だけに、買ったんだろうな。
「雅、帰ろっか」マコトが、ため息をつきながら雅に説く。
「ええっ!! 何で、せっかくここまできたのにー」
「元々、今日は星歌と遊ぶ予定だったのを、無理して変えたもらったし、これ以上付き合わせるのも、な」
「うっ……。分かった。ごめんね、星歌君」
「いや、全然良いよ。久々に、いい運動になったし」
正直、楽しかった。普段、こういった事は、しないから。
「……腹減ったな。飯でも食いに行こうか」
下山している最中、ふと目に止まる物がある。
「ねぇ、ふたりとも。来る途中あんなものあったっけ?」
俺が、指差す先を2人が見つめる。そこにあったのは、寂れた教会だった。
「? いや、俺は見てないな。登るのと雅が心配で」
「!! まー君、星歌君、ちょっと行ってみない?」
雅が、目を輝かせ好奇心を溢れさせている。確かに、こんな所にあるなんて、興味は湧くが。
「駄目だ。見たところあれ廃虚だろ。もし、崩落して事故に遭ったらどうするんだ?」
「そうだね……。せめて写真だけでも」
雅がスマホを取り出し、写真に収める。
「じゃ、行くぞー」「うん!」
2人は、歩みを進めている。スマホを取り出し、マップアプリを開き、ここにピンをつけておく。
「星歌ーー?」
「あぁ、ごめん。連絡きてて、さ」
そのまま、下山し街へと出てきた。
「何食べるー?」「あたし、回転寿司!!」「俺は、何でも良いや」
「よし、じゃあ、回転寿司で決定!」
この三人で、集まった時はいつもこんな感じで、スムーズに決まる。雅が、食べたいものをスッと言ってくれるおかげで、迷うことがない。
30分位、歩き回転寿司に着いた。雅は、マコトの背中に乗っている。山登りのドーパミンが切れて、いつもの雅に戻っていた。
店内に、入ると人でごった返しているものと思っていたが、思いの外空いていた。なので、あまり待つことなく席を案内された。
「今日、日曜だってのに人少ないよなぁ」
「たまたまだろ。それより、さ、さっさと星歌も頼めよ。じゃないと」
マコトの言葉を遮り、商品が届いたアナウンスが、何度も、連続できている。
「こうなるからな……」「なるほど」
「うぁっはぁーーー」雅が恍惚そうな表情を、浮かべて食べ始める。
「星歌、何にする?」
マコトがタッチパネルを、見せてくれる。
「俺、マグロ以外食えないから、大トロとあと、サイドメニューの唐揚げをとりあえず」
「オッケー。なら俺は、サーモンからにしとくか」
久々に回転寿司に来たが、やっぱり友達と来ると楽しいな。
レジに、席番号を通し会計をする。
表示された金額15600円。めちゃくちゃ食べたな。多分、ほとんど雅のだろうけど。
「ごめん。小銭ないや、5000円で良い?」
小銭あるにはあるが、64円しかない。
「あぁ……俺も、札しかないや」
「あたしが、出す。いっぱい、食べたのあたしだしそれに、2人に山登りさせちゃったし」
雅が、カードを取り出し端末に差し込む。
「……これは奢りです。お金、渡さない様に」
そう言って彼女は、店を出た。マコトと、目を合わせ思わず笑う。
「やっぱり、強いよなぁ、雅って」
「あったりまえだろ!」
満腹感と、清々しい気持ちを感じながら店を後にした。
その後も、一緒に遊んで、時間が来たので解散した。
「さて、と」
マップアプリを開き、さっきピンを差した場所へと向かうため、俺は1人山に入った。流石に、暗くなってきて見晴らしが相当悪い。
スマホのライトを、頼りに進み道無き道を行く。
「ここのはずだが……」
ピンが指し示す場所には、ただの鬱蒼とした森が広がっているだけだった。横の草むらから音がし、スマホを向けると、1人の少女がいた。いわゆる、ゴスロリと呼ばれる服装をしている。
「あ、あのーだ、大丈夫ですか?」
地に伏しているので、心配になり声を掛ける。
「う……うーん? あなた……?」
彼女は、立ち上がりこちらへと、近づいてくる。顔が、当たる距離まで接近してきて、「スン、スンッ」と匂いを嗅がれた。
「あなた、不思議。今まで、嗅いだことのない匂い」
「えっ……そんなに臭いってこと……」
「ううん。違う、あなたは僕たちの味方?それに近い。けど、何処か違う。そんな感じ」
彼女が鬱蒼とした、森の奥へと入っていく。
「ちょっと、そっち危ないかも」彼女の背を、追って奥へと進むとそこにあったのは、昼間見た教会だった。
「アリナ!!どこ行ってやがった!!」
教会から、彼女と似ている顔のギャルっぽい人が出てきた。
「そこで、寝てた。あの人に、起こしてもらった」
「ああっ?! アリナ部外者入れんな、つっただろう。見たところ、一般人っぽいけど」
「ううん。お姉ちゃんあの人は、あたしたちに、近い」
お姉ちゃん。あの2人は、姉妹なのか。ゴスロリを、着ている方がアリナと言う名らしい。
その姉らしき、人物がこちらに近づいてくる。
「おい、テメェ。…………妹が、世話になったな。下まで、送ってやっから二度とここに近づくんじゃねぇぞ」
そう言って彼女が、俺の手を引っ張って行こうとした時、「待ちなさい!!」と後ろから大きな声がした。
「うっせぇぞ!! 不来方」
振り返ると、神父のような格好をした男がいた。
「その方は、私達の賛同者足り得るかもしれませんよ」神父の男が、にこやかな笑みを浮かべている。
まさか、冷や汗が身体から、出るのが分かる。雅、君が来なくて正解だった。ここが、恐らく……
「あぁ、コイツのどこが」
彼女が、訝しみこちらを覗き込む。
「力を、使ってみなさい」
神父が、そんな事を口走る。まず……くはない、だって多分こいつらが。
「んでだよ、一般人には、絶対に手を出さない。そう決めただろ」
彼女が、掴んだ手を離し神父の方へと向かう。
「良いですから、さぁ」
「やだよ、オメェがすりゃいいんじゃねぇか」
「もう……しょうがないですねぇ」
神父が、こちらの方を向き、天装そう唱えた。
その姿が、白く異形へと変貌した。奴に、祈力が集まっていくのが分かる。回避は、無理だもう間に合わない。……やるしかない。
「天奏」
奴から祈力の塊が、発射された。ルナの前までの力は、正直弱かった。物を変貌させる力。
ただそれは前の話、假名をつけた事で能力は、飛躍的に上がった。それでも、彼女曰く全盛期の1割にも満たないらしい。
彼女の能力、物を変貌させる力それ自体は変わってないが、前は制限がかけられていた。自分が、触ったことのあるものだけという制限が。だけど、それは無くなった。そして、新しい能力があるそれが……。
迫りくるそれを、斬り霧散させる。俺の両手には斧が握っている。この斧は、かつてルナが使っていたらしい。変貌させたものに対し、能力を一つ設定できるという能力だ。今、斧には能力を設定しているそれはルナから超オススメされたもの。
思いっきり、虚空へと振り被るそれは、誰に当たるはずもない攻撃。だが神父が、血を流しながら膝をついている。
「ガハッ……!!」
「もう、わかっただろう」
力を解除する。
「なっ……! まじかよッ……」ギャルの彼女が、驚きを、隠せない様子だ。
不来方という男も、能力を解除し元の姿へと戻っていく。
「ふふ……やはり、あなたは我々と同類!! どうぞ、中へ……歓迎しますよ」
ギャルと不来方が、中へと入っていく。正直、何をされるかは分からないが、彼女の名を取り戻せるかもしれないんだ。それに、彼らには冠位の天使とつながっている可能性が高い。それならば……
「行くよーー」
アリナに手を引かれ、俺は楽園へと足を踏み込んだ。




