目覚め
ゆっくりと意識が、覚醒していく。目に映るは、白い天井。辺りを、見ると察しがついた。ここは、恐らく市内の総合病院だろう。何度か、来たことがあるので覚えていた。
「お、目が覚めた、良かったー。ギリギリ間に合ったんだよ。あの後」
月城が、隣でりんごの皮を剥いている。
「俺は、どのくらい寝てた?」
「えーっと、1週間位だね。ごめんね、あの時、来るのが遅れて。もう少し、早く着いていれば」
「良いよ、最後は助けにきてくれたし」
あの屋上での、戦いから1週間が経過しているらしい。
俺の、怪我は深刻で体のあちこちに、色々巻かれている。腕にはギプスを、胸にバンドを付けている。痛みは、感じない。
「上原は、どういった感じで処理されたんだ?」
ありのままの、出来事を語るわけにもいかない。それをすれば、周りを疑い傷つけ合う者もでてくるかもしれない。堕天は、人に溶け込めると。
「……あの日屋上に現れた、天使による不慮の事故で、同時にいたあなたをかばい亡くなった。って言う、カバーストーリーを学校に万魔殿から説明するよう、圧かけておいたから」
「…………そうか。それなら」
あの戦いの時、間違いなく月城はすぐに来ていた。なのに、何故俺をすぐには助けなかったのか。考えてもしょうがないか。いずれ、分かるだろう。
「よし、出来た! は~い、あ~ん!」
りんごを、こちらに差し出してくる。ウサギの形……じゃない。なんだこれ、何の生き物だ。
「生憎だけど、俺りんご嫌いなんだ。ごめん、せっかく切ってもらったのに」
「あ、そうなの。……じゃあ、私が食べるか……」
月城は、シュンとした顔を覗かせ、りんごを食べ始めた。
「ねぇ、それって何の動物?」
「ぅん……? これ? 蛇」りんごを、ニョロニョロっと動かし蛇を表している。
「蛇にしては図太くない? どっちかって言うと、ツチノコのよう見える」
「なっ……!! ……蛇だよ、へーび!」
そう言って月城は、残ったりんごを全て頬張って、ここから去っていった。
「出てきていいぞ」
呼びかけると、ベッドの脇からひょこっと顔をだす。
「馬鹿、星歌の大馬鹿……」
ルナが、ペチペチ叩いてくる。迷惑を、掛けてしまったからな。俺が、死ねば彼女も消える。一蓮托生なのだから。
「ごめん。次から、危なくなったらきちんと使うから、ね」
「…………次は、ないから」
ルナは、そう言うと俺の上に跨ってきた。
「…………肋、折れてるからやめて欲しいのだけど」
「? 何故、直してあげたから大丈夫だよ?」
まさか……、全身を動かしてみる。手は、問題なく動き、胸に合った痛みも消えてゆく。
「……ねぇ、これ。……どう説明すればいいと思う?」
ルナは、首を傾げて不思議そうにこちらを朱と白の瞳で見つめている。
「重傷の患者が、いきなり完治したらどう思う?」
「良いこと……じゃないの?」
「いやね、確かに良いことだけど……。普通はね、何らかの能力を疑うと思うよね。でもさ、今の俺は、悪魔の力が、契約が出来ない。相手から、見たらただの一般人。そんな奴が、いきなり完治したら、怪しむよね」
まくし立てて、説明する。説明を、聞いたルナが口を、あんぐりとしている。
「……私、やっちゃった?」
「うん……だいぶ」
「スゥーーーー…………ごめん」
さてと、どう説明したものか。割と、絶望的な状況を噛み締めながら窓からの景色を眺める。現実逃避に、勤しむとしよう。
万魔殿本部――本殿。
「……この会議も、なくならないかな……」
私は、今万魔殿本部にいる。とある議題について話があると総統より直接招集が、あった。
部屋の前に着き、特殊なカードを扉にかざす。すると、扉に私は吸い込まれた。
吸い込まれた先にあるのは、――――コロッセオ。その模造品。世界中の万魔殿から人がやってくるため、多種多様な人が集まってくる。既に、結構な人数が集まっていた。各々が、談笑している姿が目に映る。
「よぉ、マドカ。久しぶりだな!!」
陽気なデカい声で、話しかけられる。耳が、痛いしびっくりするのでやめて欲しい。
「はぁ……、それびっくりするからやめろって、まえにも言ったよね? マイク……」
ふくよかな体型、ひげを生やし、もみあげとつながっている顔をしている。アメリカの、万魔殿所属マイクが、声をかけてきた。
「そうだったか? 前の事だから忘れたぜ。それにしても、マドカがくるなんて珍しいな。今日の議題が、気になるのか?」
「いや、総統から来いって言われちゃって」
「そうか……。お前も、とうとう目をつけられたんだな。アッはははははは!! まぁ、頑張れよ!」
彼は、立ち去ってまた違う仲間達と話をしている。
ここには、言語の壁がない。会議を円滑に進めるため言語統一の『魔法』がかけられている。
だから、何処の国であろうと関係ない、対等に話せることが出来る。
適当な席に座り、会議が始まるのを待とう。
「……おきなマドカ。始まるよ」
身体を揺さぶられ目を覚ます。どうやら、ねてしまったらしい。辺りを見ると、席がびっしりと埋まっていた。
見下ろす中央に、一人の男が座っている。男が、立ち上がると、周りの人たちも一斉に立ち上がる。
「それでは、これより悪魔の会議を始める」
そう告げた男は、万魔殿の総統。
名は、―――――天原龍也。
万魔殿の幹部七十二の心臓と総統による会議が幕を開けた。




