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名無しの天使  作者: 逢咲楓
2章 出会い
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目覚め


 ゆっくりと意識が、覚醒していく。目に映るは、白い天井。辺りを、見ると察しがついた。ここは、恐らく市内の総合病院だろう。何度か、来たことがあるので覚えていた。

「お、目が覚めた、良かったー。ギリギリ間に合ったんだよ。あの後」

月城が、隣でりんごの皮を剥いている。

「俺は、どのくらい寝てた?」

「えーっと、1週間位だね。ごめんね、あの時、来るのが遅れて。もう少し、早く着いていれば」

「良いよ、最後は助けにきてくれたし」

あの屋上での、戦いから1週間が経過しているらしい。

俺の、怪我は深刻で体のあちこちに、色々巻かれている。腕にはギプスを、胸にバンドを付けている。痛みは、感じない。

「上原は、どういった感じで処理されたんだ?」

ありのままの、出来事を語るわけにもいかない。それをすれば、周りを疑い傷つけ合う者もでてくるかもしれない。堕天は、人に溶け込めると。

「……あの日屋上に現れた、天使による不慮の事故で、同時にいたあなたをかばい亡くなった。って言う、カバーストーリーを学校に万魔殿から説明するよう、圧かけておいたから」

「…………そうか。それなら」

あの戦いの時、間違いなく月城はすぐに来ていた。なのに、何故俺をすぐには助けなかったのか。考えてもしょうがないか。いずれ、分かるだろう。

「よし、出来た! は~い、あ~ん!」

りんごを、こちらに差し出してくる。ウサギの形……じゃない。なんだこれ、何の生き物だ。

「生憎だけど、俺りんご嫌いなんだ。ごめん、せっかく切ってもらったのに」

「あ、そうなの。……じゃあ、私が食べるか……」

月城は、シュンとした顔を覗かせ、りんごを食べ始めた。

「ねぇ、それって何の動物?」

「ぅん……? これ? 蛇」りんごを、ニョロニョロっと動かし蛇を表している。

「蛇にしては図太くない? どっちかって言うと、ツチノコのよう見える」 

「なっ……!! ……蛇だよ、へーび!」

そう言って月城は、残ったりんごを全て頬張って、ここから去っていった。 



「出てきていいぞ」

呼びかけると、ベッドの脇からひょこっと顔をだす。

「馬鹿、星歌の大馬鹿……」

ルナが、ペチペチ叩いてくる。迷惑を、掛けてしまったからな。俺が、死ねば彼女も消える。一蓮托生なのだから。 

「ごめん。次から、危なくなったらきちんと使うから、ね」

「…………次は、ないから」 

ルナは、そう言うと俺の上に跨ってきた。

「…………肋、折れてるからやめて欲しいのだけど」

「? 何故、直してあげたから大丈夫だよ?」

まさか……、全身を動かしてみる。手は、問題なく動き、胸に合った痛みも消えてゆく。

「……ねぇ、これ。……どう説明すればいいと思う?」

ルナは、首を傾げて不思議そうにこちらを朱と白の瞳で見つめている。

「重傷の患者が、いきなり完治したらどう思う?」

「良いこと……じゃないの?」

「いやね、確かに良いことだけど……。普通はね、何らかの能力を疑うと思うよね。でもさ、今の俺は、悪魔の力が、契約が出来ない。相手から、見たらただの一般人。そんな奴が、いきなり完治したら、怪しむよね」

まくし立てて、説明する。説明を、聞いたルナが口を、あんぐりとしている。

「……私、やっちゃった?」

「うん……だいぶ」

「スゥーーーー…………ごめん」

さてと、どう説明したものか。割と、絶望的な状況を噛み締めながら窓からの景色を眺める。現実逃避に、勤しむとしよう。




万魔殿本部――本殿。


「……この会議も、なくならないかな……」

私は、今万魔殿本部にいる。とある議題について話があると総統より直接招集が、あった。

部屋の前に着き、特殊なカードを扉にかざす。すると、扉に私は吸い込まれた。 

吸い込まれた先にあるのは、――――コロッセオ。その模造品。世界中の万魔殿から人がやってくるため、多種多様な人が集まってくる。既に、結構な人数が集まっていた。各々が、談笑している姿が目に映る。

「よぉ、マドカ。久しぶりだな!!」

陽気なデカい声で、話しかけられる。耳が、痛いしびっくりするのでやめて欲しい。

「はぁ……、それびっくりするからやめろって、まえにも言ったよね? マイク……」

ふくよかな体型、ひげを生やし、もみあげとつながっている顔をしている。アメリカの、万魔殿所属マイクが、声をかけてきた。

「そうだったか? 前の事だから忘れたぜ。それにしても、マドカがくるなんて珍しいな。今日の議題が、気になるのか?」

「いや、総統から来いって言われちゃって」

「そうか……。お前も、とうとう目をつけられたんだな。アッはははははは!! まぁ、頑張れよ!」

彼は、立ち去ってまた違う仲間達と話をしている。

ここには、言語の壁がない。会議を円滑に進めるため言語統一の『魔法』がかけられている。

だから、何処の国であろうと関係ない、対等に話せることが出来る。

適当な席に座り、会議が始まるのを待とう。


 

「……おきなマドカ。始まるよ」

身体を揺さぶられ目を覚ます。どうやら、ねてしまったらしい。辺りを見ると、席がびっしりと埋まっていた。

見下ろす中央に、一人の男が座っている。男が、立ち上がると、周りの人たちも一斉に立ち上がる。

「それでは、これより悪魔の会議(メタファー)を始める」

そう告げた男は、万魔殿の総統。

名は、―――――天原龍也。


万魔殿の幹部七十二の心臓(オーバーハート)と総統による会議が幕を開けた。


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