永劫の再会 5
「はぁ……、やりすぎたかなぁ……」
正直あそこまで、やらなくても良かったかもしれないと思い始めている。冷静に、考えればもっと上手く事を運べたかもしれない。
でも、あれが最善なのかもしれない。あの家にとっては。
冷たい風が、寂しさを運び流れている。クリスマスが終わり、駅前やコンビニなんかではすっかり正月モードになっている。結局、あの後すぐに家を出ていった。余計な追求をされるのが面倒くさいから早めに逃げておきたかった。彩奏のことは、これで大丈夫なはず。
「さて、と……ん?」
歩道橋の前で、荷物を抱えた女性がいる。その人のおなかをみるに、妊婦なのだろう。荷物を、見てもとても重そうだった。あの荷物と、腹を抱え階段を登るのは絶対にキツイ。
「……あ、あのー。て、手伝いま……しょう、か?」
流石に、声をかけずにはいられない。俺は、目に付く人全てを、助けたいとは思わない。だけど、自分の力でできる範囲なら助ける。
「あ、ありがとうございます。すいませんが、お願いしてもいいですか?」
「えぇ、任せてください」
そのまま、反対側の道まで荷物を持っていった。お礼にと、お菓子を貰った。嬉しいね。
「すいません……」
突然、お婆さんに声をかけられる。
「どう、しました?」
「いやね、ここへの行き方が分からなくてね……」
指指した場所は、ここから少し離れたところにあるデパートだった。道案内が、口頭で言っても複雑になるな……。
「あーー。……じゃあ、一緒に行きますか?俺もちょうど行く用事があったので」
そんなものない。駅に行きたいのに、何故反対方向のデパートに行かなくちゃならないんだ。
「あら、本当?……なら、お願いしてもいいかしら」
「ハイッ」
にこやかな笑顔、できてると良いな。
お婆さんを、デパートまで案内し終えた。さてと、さっさと駅に行こう。
遠くから女性とフルフェイスのヘルメットを被った男が、走ってこちらの方にきている。
「イテッ!!」
それに、気付いた時にはもう遅かった。吹き飛ばされ、尻もちをついてしまう。
「だ、大丈夫?」追いかけていた女性が、手を差し伸べてくれる。
「え、えぇ大丈夫です」
その手を、無碍にするわけにもいかず手を掴み立ち上がる。
「あの男、ひったくりだったのよ。……私の大事なバック……」
「そう、だったんですね……」
あの男の、姿はもう見えなくなっている。こうなっては、俺に出来ることは…………あれ。
「財布……ッ!! 取られた!!」
あの時、財布は後ろポケットに入れていた。今は、その感触がない。
「君も、取られたのね……。警察に、通報して。……あぁあと、カード会社とかにも電話しないと」
「お姉さん。バックというのは……どんな柄ですか?」
「え、ASGのブランド物よ。シンプルな黒色のデザイン。それが、どうかしたの?」
「ちょっと、追いかけてきます。お姉さんは、警察に連絡を」
実はあの時、自分の魔力をアイツに投げておいた。自分の魔力の痕跡なら辿れる。男は、ここの路地裏に入っていったらしい魔力の痕跡もここで留まっている。
奥に進んで行くと、フルフェイスのヘルメットを被った男がいた。バイクにまたがり、逃げるとこだったのだろう。
「財布とお姉さんから取ったバック、返してもらえません?」
アイツの手元には、それらしいバックが見えた。その他にも、いくつかの盗難品がバイクの背に積まれていた。
有無を言わせず、エンジンをかけてこっちに突っ込んでくる。
魔力で壁を造り、コケた拍子に取り押さえよう。そう思ったら、奴のバイクは上へと上昇していった。
「なっ……!!」
アイツの能力は、飛行系の能力なのか。……流石に、空までは跳べない。諦めるしかないか。
踵を返し、戻ろうとするとそこに一人の男が立っていた。
この人も、ひったくりの被害者だろうか?
「ひったくりなら、今逃げて行きましたよ……」
その男が、光輝き姿を変える。……違う!! 人じゃないこいつは……。確か、今朝スマホでニュースを読んだ時に見たシルエット。無差別に人を襲い天使を、従えている堕天が、この近辺に居ると。
「お前が、その……ッ……ヴィ……」
だが、気づいたときにはもう遅かった。いつの間にか、俺は後ろの建物に吹き飛ばされていた。視線を下に落とすと、赤い水鏡が出来上がっており、それを覗くと生気が宿らない目をした俺の姿が映っていた。
手も足も動かない。動かせない、腹が空き血が垂れ流れている。あぁ……こんなとこで……死ぬのか……。
プツンッと、意識が途絶えた。テレビの電源を、切るのではなくコンセントから抜くようにして。




