永劫の再会 1
雪が、降っている。今は、12月25日……つまり、ホワイト・クリスマスだということだ。
街を行き交う人々は、カップルが大多数を占めており、愛を交わすのに夢中で雪が溶けてることにすら、気づいていない。僕の肩には、白い斑点が出来上がっている、中々可愛いのでは?と思うも、あまり濡らしたくないのでサッサッと払う。
今、僕は商店街の手伝いの帰りのさなかだ。まだ、高校生じゃないからアルバイトは、出来ない。だから、お世話になっている商店街の人たちに恩返ししたくて、自主的にやっている。
帰るときに、貰ったコロッケを頬張りながら歩く。サクサクで、美味しい。時たま、ゴロッとした肉が入ってることがある。それが、めちゃ嬉しい。
携帯が、震える。
「うん?……天使が、でたのか。……場所は、ここの近くじゃないな」
携帯を直し、スキップをしながら帰る。周りの幸せな空気に、当てられてしまったせいだ。
家の目の前までたどり着いたが、重大な事に気がついた。
「……鍵が!! ない!!」
どこかで、落としたのだろうか。一人暮らしだから、スペアは要らないだろうと、高をくくっていた。今日は、もう遅いし……。しょうがない、天原の家に泊まろう。今からだと、走っていけば電車に間に合う。
そうと決まれば、予め爺ちゃんに連絡と、一応父さんにも。ふぅ……学校が、冬休みで助かった。
☆
電車で移動して1時間。時刻は、夜の10時を指し示している。爺ちゃんからは、了解の返事が届いている。父さんからは、珍しい……。きちんと返事が返ってきている「気を付けろよ」そうとだけ。あの人らしい。
駅から家までは、大体30分位で着く。久々に帰るな彩奏は、元気だろうか。従兄弟達には、会いたくないなぁ。変に対抗心燃やしてくるから、面倒くさいし。
心では、そう思いながらもその足は軽やかに弾む。でも、天原の当主には、会いたくない絶対に。アイツ僕の事は、すごい酷い扱いしてくるから……本当に、面倒くさい。変に、嫉妬してきやがって。
「うわっ!! ――――ご、ごめんなさい!」
考えごとに、夢中で前をよく見ておらず人にぶつかってしまう。女性だった。それに、身長も高い。何より玲瓏美人と称すべき位、綺麗だ。
「いえ、お気になさらず。…………あの子のこと、宜しくお願いしますね。―――祝福があらんことを……」
「…………あ、あの」後ろから、呼び止める。
「? どうされました……?」
「ええっと、その……僕達、昔何処かで会ったことあります?」
何故、僕はこんな素っ頓狂な事を聞いているのだろう。記憶を辿っても、思いあたらない。こんな綺麗な人一度見たら忘れられる筈がない。でも、初めて会った気がしない。
まるで悠久に等しい時を、共に過ごしたような
「いえ……初めて、ですよ。……それよりも、早く行かれたほうがいいのでは。子供には、危ない時間ですし。それに……運命とはいつも、気まぐれ……ですから」
女性は、踵を返し歩き去っていく。そうだな、早いとこ行かないと……。
早足で、駆けていく。悪魔の力を使い、身体能力を強化する。疲れるから、あまりやりたくないのだが。
だが、もうそろそろ家に着く。……明日、鍵作ってもらおう。僕が、住んでいるマンションは爺ちゃんがくれた部屋だ。頼めば、やってくれるだろう……。
でも、何時までも頼ってちゃ駄目だ。必ず、家賃も返さないと。今は、まだ無理だけど。
「きゃっ、!!」「うわっ……と〜」
曲がり角から、誰かが飛び出してくる。今度は、しっかりと避ける。飛び出してきたのは、女の子。それよりも、身に纏っているのは外套のみ。髪もボサボサで、靴も履いてないし、まるで何かに怯えてるかのよう。
「だ、大丈夫?」
そう声を、かけるも彼女は走り去っていった。彼女が来た方向を、のぞいてみるも特にこれといったものはなかった。一体、何だったのだろうか。
天原の家にやっと着いた。門を開けてもらう為に、爺ちゃんに連絡……しようとしたら門が開いていく。
「おかえりなさいませ。星歌様」
開けた先にいるのは僕の専属執事の白井 一だ。この家では、それぞれに専属の執事とメイドが一人ずつ、担当している。
「……ごめんね、急に押しかけて」
「何を、おっしゃるのですか。ここは、貴方様の家であるのに。さ、早くお入りください。玄生様も、お待ちです」
そう言われ、僕はさっさと入る。いいかげん、眠気が凄いから、早く寝たい。
屋敷の中は、相変わらず広い。他の子たちは、もうねているようだ。明日の朝に会うのか……。
「あれ、そういえば……菜乃華は……?」
「あぁ、彼女でしたら、今星歌様の部屋の掃除を、改めて」
「ありがとね。先に、荷物置いてくるよ」
「いえ、私がしておきますので、御入浴を」
「良いよ、これくらい一人でやらないと。何時までたっても、独り立ちできないし」
「左様で。では、私は食事の準備をしてまいりますので」
白井は、そのままキッチンへと向かっていった。白井は、ここの料理長も兼任している。本人が、料理をするのが好きらしい。大変ではないのだろうか。
部屋の扉に手をかける。部屋は暗闇で覆われておりわずかな光は窓から差し込む月明かりだけ。
あれ……菜乃華が掃除してるってさっき……。電気をつける。
「…………寝てる」
ベッドの上で、メイド服を着たまますやすや眠っているのが、専属メイドの紫彩 菜乃華。菜乃華は、僕と歳が近い。確か、高校2年生だから2つ歳上かな。
「……菜乃華、ごめんね。急にこんなことさせて」
眠っている彼女に、話しかける。毛布をかけると、にこやかな顔を浮かべる。正直ずっとみていたいが、これ以上いたら起こしてしまう。そう思い、さっさと浴室へと向かう事にした。
風呂に入り、食事を済ませた僕は、とある部屋に、向かっている。その部屋の前まで来たところで、嫌な奴と遭遇してしまった。
「おや、…………帰ってきてたのか。星歌」
「えぇ、夜分までお疲れ様です。……多々良、当主」
目の前にいる男こいつこそが、今の天原の当主。
天原多々良、僕はこの人の事がとても苦手だ。
「はぁ……、貴様のような奴が、何時まで天原を名乗っている。責任感もなく、愚民共と楽しくやっている貴様が。まぁ、良い。親父も、何時までも元気なわけじゃない、精々謳歌しとけ」
一方的に、言いたいことだけ言われ去っていった。
すーぐに、あぁいった嫌味を言ってくるから面倒くさくて嫌いだ。あと、あの思想も僕とは合わない。
思わぬ事が、あったが構わない。
扉に手をかけ、前当主、天原玄生の部屋へ入る。




