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バランス 〜自然は時として牙を剥く〜  作者: 水神朱
内なる力は高きを仰ぎ、外なる力は高きに顕れる
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相見える拳能、吹き荒れる新風 弐

クリスマス

家族といたから

一人じゃない



・季語;クリスマス

・字余り(第三句)

・別にクリぼっちとかじゃないし

「・・・うん。良いんじゃない?」


「ハァハァ。ほ、本当ですか?」


「ええ、十分よ。これなら心配ないわ。」



全校集会で学級長決定戦と階級長決定戦の説明がされてから六日。俺は、楓さんと棗さんの二人に六日間連続で稽古をつけてもらっていた。何故か、俺もちょっとよく分からない理由だ。




———————————————————————————————————————————————————


「さてと、それじゃ志願者全員が出揃ったから作ってきたトーナメント表を発表する。」


全校集会の翌日、俺たちの担任の大川京子(おおかわ きょうこ)が宣言した。学級長決定戦への出願は今日が終わるまでだったはずだから、昨日の時点で俺含めてクラス15人全員が出願していたということだろう。1日で色々と設定しなければならなかった大川先生も大変だっただろうに。


「誰がどこに入るかは()()くじ引きで決めてるぞ。だから対戦相手とか順番についての文句は一切受け付けないからな。ただ一点だけ、15人だから1人だけシード枠が必要だった。シード枠には千堂に入ってもらう。まあ異論はあるだろうが受け入れてくれ。」


千堂を見るとニコリともせず、むしろ少し怒っているかのような顔をしていた。まあ千堂は今年の首席らしいし、実力的に考えたらシードは別に妥当だろうな。春とは・・・どちらも順調に勝ち上がれれば3回戦、つまり準決勝であたるのか。


そして俺の一回戦の相手は・・・「宮奏」。

きゅうそう・・・?



「おっ。私の相手は噂の君か〜。良いね、楽しくなりそう!」


と、何と読むのか悩んでいた俺の後ろで呑気な声が上がり、振り向くといかにも陽キャという感じの女子生徒が近づいてきていた。


「私、(みや)(かなで)。ヨロシクね〜。」


「みや、かなでって読むのか。よろしく、宮。」


端的だけどお洒落な名前だな。そう思って差し出された手を握り返すと、


「おわっ」


「君ぃ、天力(エーテルギフト)持ってるの?もし持ってるなら、教えて欲しいんだけど?」


突然引っ張られて、耳元で意味不明なことを囁いてきた。


「いや、持ってたとしても教えるわけないだろう。なんでこれから戦う相手にわざわざ手の内を見せなきゃいけないんだ?」


逆に教えると思ってるのだろうか。そう思いつつ囁き返すと、宮は俺をしばらく観察してからふっと笑って掴んでいた腕を放した。


「冗談冗談!楽しもうね、天音海斗くん?」


———————————————————————————————————————————————————


で、そのことを帰って楓さんに話した結果が今に至る。


「宮奏さん、ね。注意した方がいいと思うよ。何しろ彼女、素性がまるではっきりしてない。」


最初の対戦相手が誰なのかを伝えた時、楓さんは少し顔を顰めてこう言った。


「中等部三年間を見てみると、誰に対してもフレンドリーで友達は非常に多い。高等部よりかは競争色が弱めだとは言え、基本的にみんなライバルな中等部でこれは中々珍しい。周りからの評価も、無関心というものはあれど大概が好意的で悪く思われてる相手はほとんど見受けられない。だがその一方で、彼女の親が誰でとこに住んでるのか、天力(エーテルギフト)が何なのか、何を目的に学園にいるのかが全くもって不明だ。」


「目的って?」


「ああ、彼女は他の生徒に見られるような野心を見せたことが一度もないんだ。模擬戦、訓練などにおいて、大抵は序盤のうちに負けているんだけどどうにも本気じゃないような感じがあるらしいんだ。自分の実力を誇示するのを嫌うような傾向があると言うか。海斗が友達になった三坂くん、彼のように上に立つのが面倒くさいというタイプでもなさそうなんだよね。」


「でも模擬戦とかには毎回出場しているんですか?」


「そう、そこだよ。彼女は自分の力を誇示したいって言うより、他の人の力を見たいように思われる動きをしている。だから目的が何なのかがイマイチ分かっていないんだ。単に他人の格好いい試合を見たい、とかの手合いなら良いんだけど・・・。とにかく油断はしないほうが良い。だから、特訓しよう。」


「・・・え?」



という流れで六日間特訓が決まったのである。


いや、マジで地獄。

まず楓さんとの防御力強化稽古。俺よりも遥かに疾く正確で強い楓さんと肉弾戦しながら、楓さんの攻撃を上手く捌いて自分を守れとかいう無理難題。


次に棗さんとの攻撃力強化稽古。防御全振りお化けの棗さん相手にひたすら攻撃を打ち込んで、肉弾戦での攻撃力・質を向上させるとかいう、こちらも無理難題。


最後に再び楓さんとの天力操作稽古。今んとこ一番修得率が悪い天力を仕上げていくために楓さんから言い渡されたメニューをこなしていく。ぶっちゃけこれが一番辛いかもしれない。例えば「火」と「水」をそれぞれの手から出し続けながら、「木」に意識を集中させて生やしてみろとか。二種類のエーテルに意識を割くのでさえ難しいのに三種類とかどうやれと。


だがそれも六日間続けてきてやっと良い感じになってきた。現在、右手に火、左手に水を出しながら、土を上手く盛り上がらせて土台を作り、その上に木を生やして金とかキラキラした鉱石類で飾り付けをしている。


・・・だいぶ進化した。これで明日以降の戦いに少しは自信が持てた気がする。うん。

海斗「六日もやれば楓さんが10年間鍛えあげてきた攻撃、見えるようになったしそこそこ防げるようになりました。でも六日もかかってしまいました。やっぱり才能ないのかもしれません。」

楓「お前以上に才能ある奴がそうホイホイいてたまるか。これ僕の10年間なんだけど。」


海斗「棗さんの防御はやっぱりすごいです。自分なんて六日もやってるのに10回打ち掛かって行ったら6回ぐらいしかマトモに攻撃食らわせられません。」

棗「楓を守るために10年間練り上げた防護なのよ?そもそも突破されることなんてあるはずないのよ?」


海斗「天力(エーテルギフト)に関してはそこそこの成果出たかもしれません。流石に六日もやれば三種類と言わず、五種類のエーテル全て操れます」

楓・棗「「それ多分お前だけだよ(よ)」」

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