相見える拳能、吹き荒れる新風 壱
やることをやらずに、これを書く。
これを書いていたら日が暮れる。
やらねばならぬことを思い出して・・・・・・寝る。
最高の1日じゃないか。
「おはよう。」
「・・・おはよう。」
良かった、挨拶してくれた。
楓さんと話をした翌日、教室に登校した俺は春に声をかけた。春は無口な方だしどちらかと言うと無愛想でもあるから返事を返してくれるか分からなかったけど、一応友達として挨拶はしてくれたみたいだ。相変わらず色々な目が俺を追ってくる中で、こうして普通に接してくれるだけでも嬉しいものだ。
「何を読んでんの?」
春は席に座って何やら読書をしている。読書するようなタイプには見えないから興味を惹かれて聞いてみた。
「・・・『エーテル論』。・・・この学園の・・・卒業生が・・・記した・・・ものだ。」
「ほう?」
聞けば、天力の効率的な運用方法などについて詳細に纏めてある本らしい。
「面白そうだね。」
「・・・戦い方を・・・学ぶことは・・・大切だ。」
確かにね。こういう発言を聞くと、やっぱり春がAランクの中でも最上位層にいるのは間違いないようだ。楓さんも言ってたけど、強い人ほど自分の力を過信しないからな。
そんなことを考えているとチャイムがなって担任が入ってきた。
「お前ら席付けー。出欠とるぞー。初日から遅刻なんて馬鹿野郎はいないだろうな?」
こんな荒々しい口調だが、ウチの担任は女性だ。しかも相当な美人の。口調荒くて美人って言うと、『ストロロロ・ベリーグッド』の店長の春華さんが思い浮かぶけど、まあ蝕食と戦う世界に関わっている人は大体こんな感じなんだろう。
「さて、と。今日はこの後、全校集会があるからこれ終わったら廊下に並んで私の後について来るように。初日だが早速、学級長決定戦と階級長決定戦についての説明があるから真剣に聞くんだぞー。」
と、この言葉を聞いて周りが興奮したようにざわめいた。好戦的な人が多いのかな?
その後、春と一緒に喋りながら体育館に向かって歩くことにしたのだが、かれこれ5分は喋っている。何しろ広すぎる。教室を出る前にチラッと地図を見たんだが、教室数なんて数百は下らないんじゃ無いだろうか。
「・・・海斗は・・・学級長に・・・なるつもりは・・・あるのか?」
「まあ、ならないと皆に舐められ続けるだろうし・・・。特例入学させてもらった以上、その分の実力は見せないとじゃないかな。」
「・・・それで・・・良い。・・・海斗が・・・学級長に・・・なれば・・・誰も・・・特例入学の・・・文句は・・・言わない。」
「だと良いけど。」
「・・・だけど・・・そうしたら・・・俺と・・・戦う・・・ことに・・・なるかも・・・な。」
「あー、それは嫌だな。せっかくできた友達だってのに。」
「・・・気にする・・・ことは・・・ない。・・・互いに・・・全力で。・・・それが・・・友達と・・・いうもの・・・だろう?」
「さあ・・・。俺は昔っから親の都合で転校ばっかしてたもんで、友達っていう友達ができたことは無いんだよな。だから春が初めての友達なんだ。だけど・・・そうか友達には全力でぶつかって良いんだね。」
「・・・約束・・・する。・・・恨みっこ・・・なしだ。」
良いやつだな。やっぱり友達っていうのは良いものだ。
「ん?春は学級長になるつもりはあるのか?」
なんか楓さんの話だと、そういうのが面倒くさいんじゃなかったっけか。
「・・・いや・・・無い。・・・ただ・・・海斗とは・・・戦って・・・みたい。」
「遠慮します。」
やっぱり好戦的な奴らが多いようだ。そしてそれは春と言えども例外では無いらしい。春の恨みったらしい目線を避けながら、俺はぼんやりとそんなことを思った。
「ではこれより、全校集会を始めます。校長先生、お願いします。」
体育館に集まったその数、700名以上。生徒652人に加え教職員50名以上が入っても、尚余りあるスペースを有する体育館の広さに、俺はもう一々驚かないことにする。
「昨日、編入式を皆さんは終えたばかりですが、すでに今日より1週間後に学級長決定戦が迫って来ています。」
壇上で話す校長、西本さん。そう言えば西本さんは昨日の進学式にいなかったな。校長なのに出席しなくて良かったんだろうか?それを言ったら、生徒会長も一緒だろうけど。
「ここ高等部では、中等部の三年間で習ってきたことのアウトプットの場として蝕食との実践授業が数多く存在します。そしてその多くは学級単位で行われるものです。つまり学級長とは、対蝕食においての輝かしい栄光と共に同級生の全ての命を背負う存在です。それだけの責任感、そして実力、器。これら全てを兼ね備える者こそが学級長に相応しい。」
確かにね。そう考えると、ただクラスメイトに認められたいと考えていた俺の動機は甘かったかもな。これから先、俺以外の14人の命全てを預かることになるんだったら、しっかりと覚悟を決めないとダメだ。
「そしてさらに、全ての学級長が決まった1週間後には階級長決定戦が始まります。Aランク、Bランク、Cランク、Dランク、Eランク。5階級それぞれに特徴があり役割がある以上、それらを纏める階級長は5人とも必要不可欠な人材です。Aランクだから重要なのではなく、Eランクだから適当に選んで良い訳でもありません。その意識をしっかりと持ち、決して驕ることの無きように臨んでください。」
Aランク生をこっそりと周りを見渡すと、何人かは納得したかのように頷いていたが、大多数はあまり聞いていない様子だ。やはりどうしても自分の方が優れているというプライドは捨て切れないのだろう。
「学級長決定戦はトーナメント形式で行われます。内容は様々ですが、各担任が皆さんの知恵、度胸、責任感、実力を判断できるようなものにしています。勝敗の判定は各担任が行いますが、賄賂などの不正は絶対に通用しないこととお思いください。仮にそれがなされたとしても、必ず分かるようになっておりますので。」
おお、怖い。誰かの天力だろうか?それにしても、トーナメントだからてっきり単純に戦い合うのかと思ったがそうじゃ無いらしい。内容が様々というのも気にはなるが。
「階級長決定戦は、学級対決になります。各学級長が学級の中から4人を選び、計5人が代表として臨みます。これも当然、単なる実力だけを図る形式にはなっておりませんので、出場する方は心してお臨みください。」
4人・・・4人かあ。学級長になったとして、俺の申し出を受けてくれる人が4人もいるだろうか?頑張って仲良くなるしかないか。
「尚、学級長決定戦に関しては出場は自由です。希望する方は明日までに担任に申し出るよう、お願いします。」
Aランクの生徒らを見ると、みんな出場しないなんてあり得ないという顔をしている。春もさっきは出るみたいなことを言っていたが、学級長になる気が無いのなら出なくても良いんじゃ?俺と戦ってみたいとか冗談でもやめて欲しいが。
「それでは皆さん、幸運を祈ります。」
西本さんがそう言って、全校集会は終わった。
まあ、あんまり積極的に戦いたくはないが・・・ここで出場しないと楓さんの言っていた通り後々が面倒くさそうだから、頑張るしか無いだろうな。
とりあえず試合に向けて、楓さんとか棗さんとの戦闘訓練をもうちょっと増やしてもらおう。
Qぶっちゃけ楓さんはどれくらい強いの?
A生徒会の残りメンツ8人が束になっても勝率2割(尚、勝利条件は2分以内に8人全員の意識が無くならないこと。当然、天力ありの勝負。)
多分、楓さんの本気を見るのはだいぶ先になりそうなので、ちょこっと公開。
なんせ楓さんは世界でたった一人の・・・おっと。




