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バランス 〜自然は時として牙を剥く〜  作者: 水神朱
内なる力は高きを仰ぎ、外なる力は高きに顕れる
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百鬼夜行

またまた久しぶりになってしまいました。


最近、アメリカ旅行に行ってまして。

帰る時に向こうの空港で色々とお土産を買ってたんですね。それで機内に持ち込むのも面倒だからキャリーケースに入れてしまおうと、広げたわけですよ。そしたら手が滑って落としちゃって中に入ってたものが散乱しちゃったんです。

幸い、服が入ってた方じゃないやつだったんであまり見られて恥ずかしいものじゃなかったんですけど、まあ急いで集めてたんですね。

そしたら、周りにいた人たちが手伝ってくれて。日本人はよく親切だ、とか言われるけど日本人だけじゃないよって思いました。

「フゥ・・・フゥ・・・」


家屋が倒壊し幾重もの瓦礫が積み重なった只中で、男は苦しげに息を吐いていた。


「ガフッ・・・ヒュー・・・ヒュー・・・」


男の前に立つ()()もまた、同じように苦しげだ。


「ヒュー・・・クッ・・・クハハ・・・」


燃え盛る豪華に囲まれながら、その()()は突然笑い出した。人の風貌をしているものの、爪が異常に長かったり、見え隠れする牙が異常に鋭かったりと、ところどころ物怪のような雰囲気を醸し出している。


「フゥ・・・な、何が・・・おかしい・・・?」


純白の着物を自身の血で真っ赤に染め上げながら、男は問う。


「何がおかしいだと?・・・クハハ、随分と・・・勝ち気でいるようだな・・・()()


「なん・・・だと・・・?」


「我らを・・・退けたつもりかもしれぬが・・・これで終わりな訳がなかろうが。」


互いに最後の力とでも言うかの如く、言葉を紡いでいく。


「千年の後、我らはまた来るだろう。その時こそが・・・この星の終わる刻。『安倍(アベ)』・・・と言ったか?この星の・・・唯一の頼みであった貴様ら5人でこの程度では、後に来る我らの後軍は防ぐこと叶わぬ。『神楽(カグラ)』も『天音(アマネ)』も死んだ。『夜夢(ヨリユメ)』と『桜狼(オウロウ)』も・・・放っておけば間も無く死ぬ・・・。『安倍』よ、貴様もだ。この戦いで・・・貴様も死ぬのだ。未来に希望など・・・あるまい。」


男をひたと見据える、人ならざるその瞳はゆらゆらと揺れていた。


「・・・関係ない。」


「何?」


「・・・ここで私が死のうが・・・私の友が死のうが・・・そのようなことは全くもって関係ないのだ。この星を貴様らに渡す理由などにはならぬ。千年の後、貴様らがまた来ると言うのであれば、その時もまた誰かが必ず防ぐだろう。ここで我らが貴様らを退けたこと・・・それだけが大切なのだ。残念ながら私は子々孫々に紡ぐこと叶わなかったが・・・他の四人は違う。彼らの血脈が・・・いずれ必ず貴様らを仕留め切るとも。1度目の『百鬼夜行』は・・・我々の勝利だ。」


強い意志が込められたその眼差しは、相対すモノの眼差しと交差して・・・


「・・・『百鬼夜行』・・・クハハ、良い響き・・・だ・・・」


その言葉を最期に、両者は同時に地面へと崩れ落ちた。













———————————————————————————————————————————————————


コンコン。


「・・・。」


コンコンコン。


「・・・?」


コンコンコンコン。


「・・・」



おかしい。


《KAEDE》の文字が彫られた重厚な扉を前に、俺ー天音海斗は腕組みをして考え込んでいた。


なぜここに来たのか。楓さんに呼ばれたからだ。


なぜ扉を叩き続けているのか。扉が開かないからだ。


なぜ扉が開かないのか。それは知らん。



考えられる可能性は2つ。楓さんは中にいるけど訳あって扉を開けない、もしくは開けられない。普通に昼寝中とか何かに没頭しててノックの音が聞こえていないとか・・・。分からん。

二つ目は楓さんがそもそも中にいない。どこかに出かけてしまっている・・・。いや、人を呼び出しといてそれはそれでどうなんだって話だけど。


さて、どうする?


「入って・・・みるか?」


勝手に入ったことで怒られはしないだろうが・・・。そもそも呼んでるの楓さんだし。

・・・うん、このまま廊下で待つよりも中で待ってよう。


そう勝手に結論づけて俺は扉を開けて部屋に入った。



「でっ・・・かくはないな。」


最初に部屋に入った感想はこれだ。なんというか・・・この邸宅の主人だから部屋もめちゃくちゃ広いのかと思ったがそうでもない。俺の部屋と同じくらいだ。

まあ俺の部屋も一人で使うにしては十分過ぎるほど広いから、普通の基準で考えたら俺の部屋もこの部屋も、めちゃくちゃ広いに分類されるんだろうけど。


「仕事部屋・・・か?」


次に抱いた感想はこれ。目の前に書類やら何やらが色々と置いてあるお洒落な机があって、その手前には客人用だと思われるソファと平らな机。大きな窓からは日差しが差し込んでいるが、窓際に置かれた植物たちが良い日除けになっているようだ。


そして部屋の周りには本棚がずらりと並んでいる。どの棚もぎっしりと本が詰まっている。不思議と、俺はその棚の一角に吸い寄せられるように近づいていた。


「なんだろう、これ?」


目に留まったのはとても古めかしい本だった。背表紙は擦れて所々穴が空いており、題名は読めなかった。手にとってパラパラとめくってみたが、古文で書かれていてほとんど読めない。かろうじて読めた最初の文章は、


「えーっと・・・『五雄・・・ここに・・・記すなり』?」


五雄?




「それは『百鬼夜行』。過去の英雄たちの物語さ。」


急に声が聞こえてきて俺は飛び上がった。慌てて振り向くと、開きっぱなしだったドアに片手をついて楓さんが微笑んでいる。


「ダメじゃないか、僕の許可なく勝手に部屋に入っちゃ。」


「あ、すいません。ノックしても楓さん、返事なかったので・・・。」


「良いよ。僕こそ遅れてごめん、もうちょっと早く終わらせるつもりだったんだけどさ。」


そう言いながら楓さんはドアを閉めて、こちらに近寄ってきた。


「それで・・・これは?」


俺は隣にきた楓さんに、手に持っている本を指しながら問いかけた。


「その本の題名は『百鬼夜行』。そうだなぁ・・・ざっと千年以上前書かれた書物さ。ああ、もちろんこれは改訂されたやつだよ。とは言っても、これも八百年近くは経ってるかもしれない。原本はとっくの昔に失われているだろうね。」


「千年前・・・平安時代の話ですか?」


「そうそう。よく知ってるね。当時は文学作品自体が少なかっただろうし、こうして残ってるのは奇跡に近いよ。」


「なんの話なんですか?」


そう問いかけると、楓さんは俺をじっと見つめてきた。言うか言うまいか迷っているような瞳を、こちらもじっと見つめ返していると楓さんはフッと笑って口を開いた。


「過去にいた五人の英雄の話さ。遥か昔、日本に現れた蟲たち・・・それらが引き起こした『百鬼夜行』に立ち向かった、ね。」


「英雄・・・。蟲、って一体?」


「そうだなあ・・・今の時代では『蝕食(クルス)』って言った方が伝わりやすいかも。」



「えええ!?」


え、ちょっと待ってどういうこと!?


「蝕食って・・・十年くらい前に日本に現れたんじゃ・・・?」


「そうだよ。十年くらい前に現れた。でもそれが初めてだった訳じゃない。この書物に書いてあるのはそういうことさ。蝕食は2度、地球に現れている。2度目は今まさにだけど、1度目は千年前・・・この書物が書かれた時代に現れているんだ。」


「その・・・千年間の間はいなかったんですか?地球に?」


「まさにそれこそがこの書物に書かれている答えだよ、海斗。ここに書かれていることを纏めるとね、千年前、蝕食たちは大量に地球に押し寄せて『百鬼夜行』と呼ばれる事件を引き起こしたんだ。それに立ち向かったのが五人の英雄。」


「五人?」


「そう、彼らは不可思議な力を持っていたと書かれている。恐らく僕たちと同じように天力(エーテルギフト)を覚醒させていたんだろうね。彼らの名前は、安倍晴明(あべのせいめい)


聞いたことある名前だ。確か・・・陰陽師、だっけ?


桜狼永光(おうろう ながみつ)夜夢莫与(よりゆめ なよ)


知らない名前だな。莫与さん・・・?は女性か?


神楽篠(かぐら しの)


ん?神楽?


「そして・・・天音綾越(あまね りょうえつ)


え・・・。




「まあ・・・お察しの通り、神楽篠は僕の祖先だよ。すごい聡明な女性だったと書かれている。そして・・・天音綾越、彼は君と()()()()()。そうだな、なんと言えば良いのか・・・君の父君が彼の子孫だった、かな?」


「父さんが・・・。え、でもそれって・・・。」


ってことは俺は・・・。




「そう。そしてそのことで海斗、君に言わなければならないことがある。これは君の師匠としてではなく、第二の保護者としての僕の義務だ。」


いつから保護者になったんですか、という問いは飲み込んで、真剣な表情の楓さんを見つめる。


「海斗。君の父君、母君は君の実の両親では無いんだ。君は・・・彼らの養子なんだ。」

サラッと出てますけど、一番最初に出てきた蝕食。

・喋れる

・人型

・卓越した知能

ってことはつまりそういうこと。まさかの第一号が本編じゃなく回想(?)になるとは。

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