生徒会 弐
はぁい
「・・・ふん。特例入学の件については納得のいく、と言うより納得せざるを得ないような結果を出しているようだから良しとしよう。問題は残り二つだ。これが貴様に一番聞きたかったことだ、楓。俺に歓迎挨拶を任せて、本来その役目を担っていた貴様は一体全体どこで何をしていたんだ?そして進学式を欠席したにも関わらず、なぜ今ここにいる?」
ギラギラとそれはもう射殺さんばかりの眼光で楓を睨みつけるリリ。
「後者に関しては、これからやる会議が理由だね。毎年年度初めの生徒会会議には必ず出席すると決めているんだ。前者に関しては・・・まあ理由はあるにはあるんだけど・・・。リリ、君に納得してもらえる答えかどうか・・・。何をしていたと思う?」
だがそんな眼光にも全く怯むことなく、少々の笑みを浮かべながら飄々と答える楓。
「知らん。それが分からないから聞いている。あまりふざけるなよ、楓。」
「和ませようとしてるだけなのに・・・。」
「きさっ・・・!」
「はいはい、ストップね。」
あまり真剣には感じ取れない楓の態度に、額に青筋を立てて今にも叫び出しそうなリリの言葉を遮って、問答に待ったをかける者がいた。
「このままいくと普通に乱闘に発展しそうだから白里くんは落ち着いてね。あと神楽くんはもうちょっと真面目に聞かれたことに答えてね。」
「岬。」
「君があんまりにも揶揄いすぎると、白里くんほんとに暴れ出しちゃうからね。・・・・・・ま、そんなことは風紀委員長の僕がいる限り絶対に起こさせないけどね。」
これまで黙って話を聞いていた、『風紀委員長』樋口岬である。
「おい、樋口風紀委員長。ここ生徒会室は我々Sランク以上の者たちが政府に許可を得ずとも天力を解放できる唯一の治外法権の場だ。俺がこの場で戦う分には何も問題ないはずだが?」
「あれ、そうだっけね?まあ、それは置いといてね。今回ばかりは白里くんの言ってることが正しいと思うけどね、神楽くん。流石に何にも言わずに進学式を欠席するのは、風紀を乱してるよね?」
岬とリリ、両方からの問いただすような視線を受けた楓は観念したように話し始めた。
「分かったよ・・・。今回ばかりは僕が悪かった。とは言えさっきも言ったように何の理由もなく進学式を欠席したわけじゃない。・・・校内でAランク蝕食と思わしき規模のゲートの反応があったんだ。それも複数。」
「何!?」
「やっぱり気づいてなかったでしょ。僕が行ったときにはすでにゲートは消失。痕跡も残ってなかった。周囲の状況から蝕食が出てきたとも思えない。」
「その話を真実だとする証拠は?」
「何人かの先生方にでも聞いてみなよ。一緒に向かったから。」
楓がそう言うと、聞いていた一同は信じられないといったように顔を見合わせる。
「・・・ゲート。それもAランク蝕食レベルの?・・・ここで?」
歌那がそう言うと、楓も同調したように頷く。
「僕も最初はそう思ったよ。ご存知の通り、ここには幾重にも編み重ねた結界を張ってある。ゲートなんざ作れる訳がないんだ。」
「・・・ふむ。真鈴、お前は?」
何かを考え込むように言った咲良。呼びかけられた那月は首を横に振る。
「いいえ、私も何も観ていませんが・・・」
それを聞いたリリは再び楓へと顔を向ける。
「ふん、やはり信じられん。貴様の考えた即席の理由という方がまだ辻褄が合う。」
「別に信じても信じなくても良いさ。ただ、僕が今までに蝕食の件で嘘をついたことがあったかい?信じるなら、早急に対応策を考えなければならない。だってSランク以上ですら気づきにくい、または気付けないようなゲートを開ける者が向こうにはいるってことだから。しかも結界下にあるこの学園で、だ。どうやってやったのかは知らないけど、最大限の警戒はするべきだ。」
「・・・そうだな。確かに貴様のいう通りだ。それが本当にあったことなら、だが。」
まだ顔に疑いの色は残しつつも、ひとまず楓への追求は終わりだ、といった風のリリ。だがそれを逆撫でするような者がいた。
「クックック。勇んで責めたは良いものの、正当な理由があって負け惜しみで疑い続ける・・・。実に滑稽じゃないか、副会長?」
「・・・何だと?」
「ちょっと、咲良!?」
再び増す威圧感と、慌てたように隣の友人を宥めようとする歌那。
「・・・仙聚会計委員長、貴様少々口の効き方がなっていないな。先ほどの進学式の一件でもそうだが、今一度どちらが上か分からせる必要があるか?」
「フフ、本当に面白い男だな。『先ほどの進学式の一件』でも言ったが、私が上と認めているのは神楽楓ただ一人。貴様のことを上と認めたことなど一度もない。それに口の利き方がなってないと怒られていたのは一体全体どこの誰なのであろうな?」
「ふ、二人とも、落ち着いて。」
「会計委員長の言う通り。白里リリ、お前は他者に口の利き方を説く前にまずお前自身の会長へ対する口の利き方を直すべきだ。」
「真鈴さんは黙ってて・・・!」
「喧嘩はダメだと言ってるのにね?」
「もっと言ってください樋口さん!」
「とは言われてもね・・・。・・・・・・っ!?」
途端にギャイのギャイのと騒ぎ出す一同。だが何が合図だったのか、一気にその場の空気が凍りつき、静まり返った。その理由は、白里リリと仙聚咲良によって同時に発せられた言葉にあった。
「「天力、解放」」
どちらも、とてつもない殺気と威圧感を放ち、咲良に至っては顔は笑っているのに全く笑っていないという何とも恐ろしい表情をしている。
「久々だな、天力を使うのは。俺はどこぞの馬鹿のように政府に無許可で使用したりはしないからな。」
「ククク、その馬鹿とやらと治外法権の場とは言え、同じ行為をしている訳だが良いのか?」
「関係ない。貴様は一度死んでもらおう。」
「二人ともっ駄目です!!落ち着いてください!」
慌てて止めに入る歌那を見据えて、リリは一言。
「黙っていろ。」
「っ・・・!?」
「あまり友人をいじめるなと言ったはずだ。」
「ならば全力でこい。俺に勝てたのなら言うことを聞いてやろう。」
両目を輝かせた二人は、互いを凄まじい眼光で睨み・・・同時に口を開いた。
「『五聖界』」
「『神獣の加護』」
「生徒会室を壊さない程度で頼むよ。」
楓のそんな呼びかけに対し、リリは答える。
「安心しろ、俺の結界は現世とは別物だ。」
「なら、こっちも好き勝手暴れられるな。」
咲良も笑みを深くして言う。
「第一殲襖戔境墓・・・・・・『戦』」
「なるほど、そうくるか。ならばこちらも相応のモノでいこうじゃないか。」
「現隷・・・・・・肆番『玄武』」
「「さァ、死合おうか。」」
明かされる「S」の実力。




