白里リリと仙聚咲良
「白里さま!お待ちください!」
進学式が終了し参列者が退場しながら歩いていくのを横目に、生徒会役員でありながらもはや自分の役目は終えたと言わんばかりにスタスタと歩いていく白里リリ。そして彼を呼び止める声が一つ。
「・・・なんだ?星降監査院長。」
「・・・っ。」
その鋭い眼光に射抜かれて、彼を呼び止めた星降歌那は思わず立ちすくむ。
「言いたいことがあるならはっきりと言え。俺は暇じゃないんだ。」
副生徒会長という役割から来るのか、その高圧的な物言いを受けて歌那は覚悟を決めたように話しだす。
「・・・っ先ほどの祝辞は一体どういうことですか!?進学生を脅すようなことを言って!あれは祝辞でもなんでもありませんよ!加えて生徒一人を晒し上げるようなことまで・・・っ!どういうつもりなのかきちんと説明してください!!」
堰を切ったように止まらない言葉に、白里リリはしばらく眉を顰めてからこう言った。
「・・・・・・何を騒いでいるのかは知らんが、祝辞は俺に任されたんだ。何を言おうが俺の勝手だろう?」
だがそんな言葉に対しても、歌那は納得がいかないという風に食い下がる。
「ですが、あれは勝手すぎます!もっと祝辞らしいことを言わないと・・・「そもそも」・・・っ!?」
歌那の言葉に被せるように静かな、それでいて威圧感のある低い声でリリは続ける。
「あの馬鹿が休んで無ければこうはなっていない。文句を言うならば奴にだろう。あいつはいつも飄々としていて何を考えているかまったく分からない。土壇場になって来れなくなった、など無責任にも程がある。そうは思わないのか?」
「それは・・・!」
図星である。実際のところ、数刻前まで自身もその人物についての文句を垂れていたが故に、歌那は言葉に詰まってしまった。
「おいおい、あまり私の友人をいじめないでくれ。」
だがそんな歌那の肩にポン、と手を置きながら何者かが話に割り込んでくる。
「咲良・・・。」
他でもない、先ほどの式典にて歌那の文句を横で聞かされていた会計委員長の仙聚咲良である。根が気弱で、自身よりも立場の上の人間に対してはどうしても下手に出てしまう歌那とは対照的に、確固たる自分をもち何時如何なる時も不敵に笑っているこの女は、堂々とリリの前に立った。
「・・・俺に意見する気か?仙聚会計委員長。」
「フフ・・・そうと言ってはいまい?ただ、私の友人は強い口調で責められたりするのが苦手なタイプだと言っているんだ。」
「・・・どうした、お前は実力至上主義だったはずだが?」
「だから俺には逆らうな、と?ククク・・・舐められたものだ。私が真に実力が上だと認めているのは、あいつのみ。それ以外は友人か有象無象か、だ。」
見る人によっては両者の間に強烈な火花が飛び散っているだろう。一方は圧倒的な威圧感、一方は飄々とした態度。二人の態度に違いはあれど、両者はお互いに強く牽制し合っているのは間違いない。その横で、歌那はハラハラと様子を見守っている。
「・・・くだらん。いつか必ず俺が頂点になる時が来る。」
「ほう・・・そうかそうか。ではその時とやらを楽しみに待っていることとしよう。・・・そこまで長くは待てないがな。」
最後に付け足された嫌味たっぷりの一言に舌打ちしながら、リリは二人に背を向け歩いて行った。
「面白みのない男だ。」
「っっっこの、どアホ!!!!」
リリの背に向けポツリと呟いた咲良に対し、途端に歌那の雷が落ちた。
「庇ってくれたのは嬉しいですけど、逆に挑発してどうするんですかっ!!向こうも向こうだけど、あなたもあなたです!!もうちょっとお互いに生徒会役員であるという自覚を持ってくださいっ!!」
「ああ、すまない。ついつい興が乗ってしまった。・・・・・・しかしそろそろ潮時だな。」
「?何がです?」
急に出た潮時という言葉が何を指すのかが分からず、歌那は尋ねる。
「副会長はじめ他の連中の我慢の限界が、だ。」
「・・・我慢の限界、ですか?」
「よく考えてもみろ。天力も、等級も、素性に関してもあまり明かされていないやつが生徒会長なんて役職に就いているんだ。おまけに何を考えているかも分からず、居所でさえ把握するのが難しい。勝手な行動に我慢できなくなってくるものも出てくるとという話だ。」
「ですが、実力があるのは副会長二人との訓練で十分に示されているはず・・・。」
「それで落ち着かないのが人の心というもの。今ではあいつのことを真面目に生徒会長として敬っているのは、お前と『書記長』くらいだ。・・・いや、後者に関してはどちらかと言うと心酔、か。」
「そんな・・・咲良さんは?」
「ククク・・・私が誰かを敬うということがあるとでも思うのか?フフ・・・やはりお前は面白いやつだ。私はあいつの実力を認めているだけだ。敬う気などさらさら無い。・・・・・・生徒会長関連で揉めたく無いのなら、今のうちに少しでも味方を多く作っておくことだな。」
そう言うと、仙聚咲良は歩き去っていった。
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「おい、聞いてんのか?」
「・・・・・・はぁ、聞いてますけど。」
「だったらさっさとテメェの実力を見せてみろや。中等部すっ飛ばして高等部に特例進学。しかもAクラスに進学したってことはそれなりの実力はあるんだろう?」
進学式が終わり、新しい教室に入った途端に周りを囲まれた。囲いの外にも、きつい目線をした人たちが何人も何人もこちらを見ている。
「・・・・・・・・・・・・・・めんどくさ。」
咲良さん・・・・・・・・・ツンデレ属性あり・・・?




