進学式
旅行にいてた。
最近、ある漫画にハマった。
主人公が男と女一人ずつで・・・。
そいつらが恋をしてて・・・。
女の主人公の方は、生まれつきの万能型天才で・・・。
男の主人公の方は、完全なる努力型天才で・・・。
そいつらが恋愛で頭脳戦してるって話。
もう分かるか。
「4月8日今日この日に、対蝕食特殊能力学園・日本校・高等部は、Aランク生45名、Bランク生118名、Cランク生122名、Dランク生110名、Eランク生257名、計652名の『10期生』としての我が校への進学を認めるものとする。」
・・・暇だ。入学式?だか進学式?だか知らないが・・・・・・とても暇だ。
パチパチパチ・・・と壇上で喋ってたおっさんがそう宣言したのに合わせて、拍手が巻き起こるのを聞きながら、早く終わってくれないかなー、と考える。そもそも俺はこういう式典みたいな場は苦手だ。どうにも落ち着かないというか・・・。こんな退屈な時間を過ごすよりも、楓さんや棗さんと実践稽古してた方がよっぽど有意義だ。
「続いて、本校生徒会長より進学への祝辞を頂く予定でありましたが、急遽その生徒会長が本日参列できなくなってしまったため、代わりに副生徒会長より祝辞を頂きます。10期生、起立!」
確か・・・朝霧先生、だっけ?楓さんが教頭と紹介していた男の人の司会に合わせて、周りの生徒が一斉に起立する。俺もそれにつられて起立した。
しかし生徒会長が欠席・・・ね。大丈夫なのか?この学園。・・・いや、生徒会長っていうぐらいだから色々と忙しいのかもしれない。
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一方その頃・・・
「よろしかったのですか?進学式にご出席なされなくて・・・。」
「んー?・・・・・・まあ、良いでしょ。ああいうのめんどくさいし・・・。それに、今年は顔馴染みが入学するからあんま行きたくなかったんだよね。」
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「まったく・・・進学式にはご出席なされるものと思っていたのに・・・。」
「どうかしたのか、歌那?」
「いえなんでもありません・・・。そういえば『書記長』は・・・?」
「ああ、奴なら帰ったよ。フフ・・・何しろあいつがいないからな。」
そう言ってケラケラと笑いながら自身の隣に座る『会計委員長』に、ため息をつきながら『監査委員長』は文句を垂れる。
「あの人は勝手すぎます。先日の天力無許可行使の件はお聞きになられましたでしょう?今回だって、進学者の中に中等部を経ていない者を特例で混ぜたのも彼ですよ。・・・いい加減、誰かがビシッと言わないと。」
「ほう・・・?ビシッと、か。面白いことを言うものだ。この学園では実力が全てなのは言うまでもあるまい。私は愚か、副会長二人が束になってですら叶わなかった者相手に、お前が意見できると言うのか、歌那?」
「・・・」
まったく、可愛げのない友人である。
「しかし・・・中等部を飛び越して高等部への編入者か。なんとも面白そうな者じゃないか。ぜひ懇意になりたいものだな・・・フフ。」
「馬鹿なこと言わないでください。あなたはそうやってすぐに人で遊ぼうとする・・・。気をつけてくださいね。何しろ彼は『会長の一番弟子』ですから。手を出したら、あの人に何をされるか分かりませんよ。」
「残念なものだな。おや、次は副会長挨拶か。」
「副会長は二人いらっしゃいますけど・・・やはり今回も白里さまですか。」
「当然だろう?お前は奴が喋ったことを聞いたことがあるのか?」
「ありませんね・・・。」
「そういうことだ。」
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「副生徒会長・白里リリ様、お願いします。」
朝霧先生の司会と共に、参列席からスッと立ち上がった人が壇上へと歩いてくる。
リリ・・・?どう見ても男だが、女性っぽい名前だな。体格はがっしりしている。でも年齢は楓さんよりも全然年下に見える。俺よりちょっと年上くらいか・・・?
壇上に上がった白里さんが礼をするのに合わせて、俺たちも礼をする。目はすっごいキリッとしていて、どこか近づきがたい威圧感を放っている。
「ご紹介に預かりました、本校副生徒会長の白里リリです。まずは、ご進学おめでとうございます。さて、本校に進学してきた皆様はここから先、蝕食との戦いの中での主力となっていくことでしょう。この学園での1年間をぜひとも有意義に過ごしてほしいと考えます。」
そうそう、楓さんから聞いたんだけどどうやら高等部は1年間しか通わないみたいなんだよな。中等部は3年間あるんだけど、それは基礎力をしっかりと身につけさせて社会に出た時に天力が暴発して民間人を巻き込ませないようにするためらしい。一方で、より実践的な蝕食との戦闘を学ぶ高等部は1年間の短い期間で集中的に「慣れさせる」ことが目的らしい。その後、蝕食との戦闘の道を専門として進むのか、社会生活に戻るのかは本人の自由らしいけど、大抵が前者に進む。
「ここを卒業したとしても、『自分の力』で『自分と周りの人間』を助けられるほどの力を、ぜひとも会得していただきたいと思います。」
うんうん、その通り。
「本年度は中等部を経ていない、例外者もいるようですが・・・」
うんうん、そうらしいね。・・・・・・・・・え?
「一人も、死ぬことがなく1年間を終えられると良いですね・・・?」
俺のことだね。めっちゃ俺のこと言われてんね。白里さん、壇上からめっちゃ刺すような視線で見てきてるし・・・周りからの視線もすごい・・・。そうか、こいつら中等部で3年間一緒だったから、誰が部外者なのか一瞬で分かるのか。さっきの白里さんの言葉とか、めっちゃ皮肉めいてたけど。俺なんかしたか?嫌われるようなことしたのか?やっぱ編入とかダメだったんじゃ・・・?
パラパラパラ・・・とまばらに起こる拍手と、俺に突き刺さるいくつもの視線。
・・・・・・・・帰りてぇ〜。




